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第74話:ルルの心

「ごめん! また……え?!」


飼育棟に着くと、慌てて駆け寄って来たモモンが、アズの懐にいる仔犬を見てビックリしていた。


「いつの間にか仔犬に戻ってて、森の中で知らない異世界人に虐められてたよ」

「オヤツをあげに行ったらいなくなってて、今探してたところだったの」


アズとモモンが、それぞれの状況を伝え合う。

でもルルが仔犬に戻ったところやケージから出るところは、誰も見てなかった。


「そうだ、観察用のカメラに映ってるかも。来て」


ふと思いついたらしいモモンが、隣の部屋に案内してくれた。


机の上に、金属の板みたいな魔導具が置いてある。

異世界人が開発した魔導具で、動植物学部が飼育動物の見守りに使っているらしい。

モモンがその板に触れて操作すると、板に過去の映像が映し出された。


映像のルルは最初は黒髪の子供姿で、大きなクッションの上で眠っていた。

しばらくするとモゾモゾ身動きして、目を開けて起き上がった。

それから辺りを見回して悲しそうな顔になり、震えながら涙を零していたら変化が起きた。

身体が縮んでゆき、顔や身体が人型から犬型になり、全身が黒いフサフサの毛に覆われて、仔犬に変わった。

小さくなったルルは人型の時は出られなかった鉄格子の間を抜け出して、走り去ってしまった。


「……」


エカが、鼻の穴広げて真顔になる。


「エカ、顔」


ソナが、指先でエカの頬をつつく。


「こりゃ驚いたな……」


ダイキチさんたちも呆然としていた。


「ルル? なんで脱走したの?」

「キュウン」


猫耳を真横にしたアズにジト目で見詰められ、仔犬ルルはペタンと耳を伏せて項垂れる。


「アズ、怒らないであげて。ルルはアズと一緒にいたくて、追いかけたんだと思うの」


きっと今のメンバーで一番ルルの気持ちが理解出来るソナが、庇いに入った。


「わたしも、もしエカに置いていかれたら、きっと追いかけちゃうから」


ついでに無意識にノロケてる事を、本人は気付いていない。


「ほおほお」

「そうよね~」

「そうね、私も多分チャデを追いかけるわ」


モモンとマリンが口元に笑みを浮かべる中、さりげなくノロケを追加するクロエ。

エカは鼻の穴広げて真顔になり、チャデは指先で頬を搔いて照れていた。


「ダンジョンも、アズが一緒なら大丈夫だよ」


ソナが微笑む。


「クゥン」


ルルが、その通りだって言った気がするよ。


アズはジト目のまま、真横にした猫耳をピコピコ動かして、しばし考えてる。


「……しょうがないな。明日からは連れて行くからもう脱走するなよ」

「ワンッ」


観念したらしいアズが、溜息をついて言う。

ルルはピンと耳を立てて即答した。

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