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第69話:モフモフの御主人様

モモンとエカたちは、アズとチャデから仔犬を拾った経緯を聞いた。


仔犬は北部の雪山での合宿中に発見したらしい。

真っ白い雪の中、黒い毛色は目立ち、敵に襲われやすい。

母犬は他の子供たちを危険から遠ざけようとして、目立つ黒仔犬を置き去りにした。

山の中に猫人が複数入って来たのを見て、サーッと逃げ去る白い群れと、取り残された黒い仔犬。

その現場に居合わせたのがチャデとアズたち。

ひとりぼっちで雪山を彷徨う仔犬を放っておけず、連れて帰ってきたという。


「キュゥ~ン」


仔犬は自分の事を話してるのが分るらしく、悲しそうな顔をして鳴く。

親や兄弟に置き去りにされたら、不安で哀しいよね。


「かわいそう……つらかったね」


ソナが撫でてあげると、仔犬はゆっくりした動作でシッポを振った。

一昨日は狂暴だったのが嘘みたいに大人しい。


「ここに来てから何も食べてくれなかったけど、今ならお肉食べるかな?」

「ワンッ」


モモンが話しかけたら、やはり言葉が分るみたいで、仔犬は鳴いてシッポをパタパタ振った。

お腹空いた、お肉食べる~! って言ってる気がする。


「ちょっと待っててね」


モモンが貰い物のフェザント肉を調理場に運び、食べやすくカットしたのをお椀に入れて戻って来た。


「ごはんだよ」


と言って置かれたお椀の傍に仔犬を降ろしたら、何故かすぐには食べずアズの顔を見上げる。

それはまるで、御主人様の許可を待ってるみたいだった。


「食べていいよ」


アズが言ったら、仔犬は凄い勢いで食べ始めた。

やはり許可待ちしてたみたい。

あんなにお腹空くまで食べなかったなんて、今まで余程不安だったのかな?


「お~、いい食べっぷり」


みんなニコニコしながら眺めてる。

完食した仔犬は嬉しそうに、フサフサシッポを振りながら皆を見回した。

フェザントの肉、美味しかったみたいだね。


「クォン」


……ごちそうさまって言った気がする。


新鮮なお肉をペロリと平らげて、仔犬はピョーンと飛んでまたアズの腕の中にスッポリ収まった。

腕の中で丸まって安心したように目を細めてるよ。

なんかもうそこが自分の定位置と思ってるみたいだ。


「アズ、その子を飼ってあげて。狩りに出る時はここへ預けに来ていいから」


モモンに言われて、アズは腕の中の仔犬に視線を向ける。


「クーン」


仔犬はアズを見上げて、甘えた声を出した。

連れてって~って言ってる気がする。


「しょうがないなぁ。俺の子にしよう」


観念したっぽいアズ、仔犬に頬を寄せて言った。

お嫁さんも貰ってないのにいきなりお父さんになる?

っていうか、アズもまだ子供だからね?


「とりあえず、部屋へ連れて行く前に風呂だな」

「キュ?」


そして、何も知らない仔犬はアズに抱っこされたまま、寮の風呂場へ向かった。

アズに忠誠を誓ったっぽいから抵抗はしなさそうだけど、多分初めての風呂、大丈夫かな?

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