第4話:幼馴染の女の子たち
───世界樹の民に仕える鳥たちは、奇跡の力を持つ。
聖歌鳥は、精神を護る。
その歌声は、理性と知識を高める。
その羽根は、負の感情を浄化する。
愛歌鳥は、身体を護る。
その歌声は、身体能力に活力を与える。
その羽根は、毒を浄化する。
その主は、勇者たちの支えとなる…───
アサケ国立学園図書館禁書【世界樹の民の守護鳥たち】より
世界樹の民は千年という長い寿命を持つので、子供は少ない。
でも、エカとアズが生まれた年は、他にも生まれた子供がいた。
駆け回れるようになると、エカとアズは屋外で遊ぶ事が多くなった。
里には同じ年頃の男の子はいなかったけど、女の子が2人いる。
「アズ~、あの木の実とれる?」
里で一番身軽ですばしっこいアズに、おねだりしてるのは里長の娘のローズ。
フルネームはカジュ・ローズ・クオーツで、愛称がローズとかロゼとか呼ばれてる。
「とれるよ、任せて!」
「気を付けてね~」
大きな木にヒョイヒョイ登ってゆくアズを少し心配してるのは、巫女の娘のエア。
フルネームはリユ・エア・リューゼで、愛称がエアだ。
「俺もとる~!」
ってエカ、張り切って登り始めたところまでは良かったんだけど…
ツルッ、ドスン!
…手を滑らせて、落っこちたよ。
「「「エカ?!」」」
他の3人が驚いた声が重なった。
木の上から飛び降りて駆け寄るアズと、一緒に駆けて来る女の子たち。
その時にはボクはもう既に、エカの治療を始めていたけどね。
不死鳥には、復活と再生の力がある。
今のエカは生きてるから、使うのは再生の力。
地面に倒れて気絶してるエカ。
ボクは自分の羽毛を引っこ抜いて、その身体の上に置いた。
羽毛がエカの身体に吸い込まれると、治癒の力ば発動する。
すぐに回復して、エカはムクッと起き上がった。
動揺したのか鼻の穴開いて真顔になるから、駆け付けた女の子たちがちょっと引いてたよ。
モテなくなるからやめた方がいい癖だね。
「大丈夫? 痛いところはないかな?」
「うん、どこも痛くないよ。ありがとうフラム」
答えたエカがちょっと元気が無いのは、いいところ見せようとして大失敗したからかな。
「もっと木登り上手になりたいなぁ」
って呟くエカが見てるのは、再び木に登り始めるアズ。
双子だけど、この頃はもう運動能力が大差で、アズは枝から枝へヒョイヒョイ軽快に移動してる。
エカは普通の人の運動能力なんだけど、一緒にいるアズが身軽なので、比較してしまうと落ち込むらしい。
「エカにはエカのいいところがあるよ」
そう言って励ましてくれたのはエア。
その肩に乗ってる水色の小鳥は、聖歌鳥という神鳥。
聖歌鳥は精神を支えたり癒したりする力がある。
エアの声にもその効果が宿っているから、話しかけられるとみんな心が癒される。
「ありがとうエア」
励ましの言葉はすんなりとエカの心に沁み込み、劣等感という負の感情は薄れていった。
「アズ頑張って~」
一方、ローズは木登り再開したアズを応援中。
その肩に乗ってるピンクの小鳥は、愛歌鳥という神鳥。
愛歌鳥には身体能力を強化する力がある。
ローズの声にもその効果が宿っているから、今のアズには身体強化がかかってるのと同じだ。
もともと身体能力の高いアズにそんな効果がついたら、木の先端まで実を取りに行ってそこから飛び降りてもへっちゃらだ。
勇者になると予言される双子と、同時期に生まれた女の子たち。
もう少し成長すると、エアとローズは「聖女」って呼ばれるようになるんだよ。