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第64話:犬を拾った猫人

校庭には体格の良い猫人たちが集まっていた。

集団の中から頭が出るくらい、特に大柄な茶トラがチャデとすぐ分る。


「おかえり、チャデ!」


クロエが駆け寄るとチャデは体を屈めて、頭と頭を軽くコツンと突き合わせる。

それは、猫人たちの特に親しい間柄での挨拶だ。

互いに微笑むように目を細めて愛情表現頭突きをし合った後、クロエはチャデの近くにいた小柄で青い毛並みの仔猫人に気付いた。


「アズもお帰り。その生き物はなぁに?」


黒いフサフサした生き物が、アズの腕の中にいる。

ウルフ系の獣の子供かな?


雪狼(スノウウルフ)の子供だよ」

「え? こんな真っ黒な仔が?」


クロエは自分の毛並みと同じ、漆黒の毛色を見て首を傾げた。

雪狼はその名の通り、雪のように真っ白い狼だ。


「珍しいから、動植物学部の人にあげようと思って拾ってきたんだ」

「ほんと珍しいよな。黒い雪狼なんて初めて見たぞ」


チャデも会話に加わる。


「もふもふで可愛い……けど、目付き悪いな」


エカも仔犬を覗き込んだ。

仔犬が目を開けると、緑の吊り目でジロッと睨む。


「ガルルル!」

「っと、意外と凶暴?!」


仔犬、目付き悪いと言われて怒ったかも?

唸り声を上げて口を開け、小さい牙を見せた。


「こら、いい子にしてろよ」


エカが噛まれそうになるのを、アズが首の後ろをつかんで阻止する。

仔犬は、渋々という感じで大人しくなった。


「アズは、噛まれないの?」

「うん。俺はこういうの全部回避しちゃうからね」


凶暴と聞いてエカの後ろに下がりながら、ソナが聞いた。

大人しくなった仔犬を抱き直して、アズは平然としている。

多分、学園に帰るまでに、何度か噛もうとしてはスカッたんだろうね。

仔犬は観念したような顔してるよ。


「【完全回避】だったか? ドラゴンの爪もブレスも当たらないとか、ワケが分からなかったぜ」


チャデが豪快に笑いながら言った。


【完全回避】は神の贈り物(ギフト)の一種で、同じ時代には他に持つ者がいないユニークスキルだ。

たとえ至近距離で爪を振るわれても、ドラゴンブレスを浴びせられても、アズには一切当たらない。


「ってチャデたち、何を狩ってきたの?」


クロエが問う。

もう何を狩ったか分った気がするけどね。


「大物だぜ。あれだ」

「にゃっ?!」


クロエのシッポが、ブワッと膨らむ。

エカが、鼻の穴広げて真顔になる。

いつもならエカの頬をつついて我に返らせるソナも、ビックリして固まった。


「ね? 凄いでしょ?」


マリンが苦笑して同意を求める。


得意気にチャデが指差す方には、トカゲを巨大化して背中にコウモリの羽を付けたような生き物、ドラゴンが転がされていた。

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