第63話:ソナの編入
アサケ学園高等部。
サラサラした長い赤毛の女の子が、攻撃魔法科に編入した。
女の子は、魔法理解のギフトを持つソナ。
黒髪の異世界人だったけど、今は召喚獣の影響で鮮やかな赤色の髪に変わってる。
その赤は、火属性の召喚獣の色。
召喚獣は7体いて、望めば違う色にも変えられるんだけど、ソナは赤を好んでいた。
「的を粉砕して高等部入りなんて、エカみたいだニャ」
「的は壊す為にあるんですよ」
「って教わったから、壊しちゃいました~」
面白そうに話す三毛猫学園長と、ニコニコしながら言う赤猫エカに案内されて、ソナは高等部の廊下を歩く。
現在、学園に在学中の異世界転移者はソナだけで、他の生徒も先生もみんな猫人だ。
「よろしくね」
「仲良くしてね」
「分からないことがあれば、気軽に聞いていいからね」
笑顔で言いながら、先生も生徒も柔らかい猫毛に覆われたシッポを差し伸べる。
それは学園長から、ソナへの挨拶はシッポが良いと教わったから。
「待ってたわソナ。ダンジョン検定はうちのパーティがサポートするから安心してね」
教室では、カギシッポの黒猫美少女クロエが笑顔で出迎えてくれた。
クロエが挨拶代わりに差し出すのも、艶やかな黒い猫毛に覆われたシッポ。
ソナが手を差し出すと、クロエは直角に折れ曲がったシッポの先をソナの手にひっかけて、握手をするような仕草を見せた。
「ありがとう。よろしくね」
クロエのカギシッポを握って、ソナは笑った。
ソナを受け入れてくれる証の、シッポの挨拶。
優しさがシッポから伝わってくるのが、嬉しかったみたいだよ。
「クロエいる? チャデ帰って来たよ~」
雑談していると、廊下と教室を隔てる窓が開いて、小柄な黒白猫人のマリンが顔を出した。
聖魔法科所属のマリンは、強化合宿帰りの生徒を出迎えていたらしい。
「チャデ怪我してなかった?」
「今年の合宿メンバーは全員無傷で帰って来たよ。チャデの事だから明日にもダンジョン行こうって言い出しそう」
クロエと話していたマリンは、教室の中にいたソナに気付いて微笑みを向ける。
「ソナちゃんも一緒に連れて行くからね~」
「嬉しい! ありがとう!」
ソナも元気な笑顔で応えた。
「良かったねソナ。明日は俺たちとダンジョンに行けるよ」
ソナの隣にいるエカも、明日はダンジョン行きだと確信したみたい。
「今年の合宿の成果、凄いから見てみて」
「えっ? 何狩ってきたの?」
「見てのお楽しみ!」
強化合宿は学園の外で実施されてたから、何処で何を狩ったか他の生徒は知らない。
マリンの話しぶりから、何か凄いものを狩って来たみたいな予感。
合宿帰りの生徒たちが集まっている場所へ、マリンに案内されてクロエ、エカ、ソナが続いた。