第46話:異世界人の入城
「すご~い、本物のお城だぁ」
お城の正門前で、ソナは立派な建物を見上げて感動していた。
「ここが今日からソナのお家ニャ」
王様は門番や家臣たちにソナを紹介する為に、敢えてお城の外側、正門前に転送したみたいだよ。
「私の娘になった子と、その家庭教師ニャ」
門番や侍女や侍従たちに、王様はそう言って紹介して回る。
アサケ王家は昔から異世界人の保護や支援をしているそうで、お城の人々はソナの姿を見ても驚かず、にこやかに迎えてくれる。
ソナはまだ知らない人を少し怖がるけど、エカが手を繋いで寄り添っていると泣いたり怯えたりしなかった。
エカが付き添って来て正解だったね。
「部屋の準備が出来るまで、庭園でお茶するニャ」
そう言って王様が案内してくれた庭園には綺麗な花がいっぱい咲いていて、ソナは大喜びだった。
「ソナ様は何色がお好きですか?」
庭園でお茶とお菓子を頂いていたら、侍女さんたちが色とりどりの布を持って来て聞いた。
ソナは身に着けている白い袖なしワンピースしか持ってないから、服を作ってくれるみたいだよ。
「この色が、一番好きです」
布の中から、ソナが選んだ色は、鮮やかな赤色。
ボクの羽と同じ…というか、エカの毛並みと同じだね。
「では、このお色でお仕立てしますね」
その後、他にも色を選んでもらうと、侍女さんたちは庭園で製作魔法を披露してくれた。
「裁断」
侍女さんの1人は、布を衣服のパーツにカットして、次の人へ送る。
「縫製」
送られた布を、別の1人が糸で縫い合わせて、衣服が仕上がってゆく。
「面白そう! 私も覚えたいなぁ」
ソナは興味津々、人見知りはどっかいったみたいな感じで、服を仕上げた侍女さんたちに話しかけたりしていたよ。
そうやって、お城の人々と打ち解けてゆけるといいね。
エカは卒業検定に合格した事、その途中で異世界人の少女を助けた事、その子に魔法を教える為にしばらく王宮に住む事を、家族に話した。
ボクたち召喚獣は聞いた音を主や仲間たちと共有出来るから、離れていても連絡が取り合えるんだ。
但し、ベノワの場合はアズの夜間稽古中は音信不通になっちゃうけどね。
『お城でお泊りするって言うから、宮廷魔導師に弟子入りするのかと思ったよ』
最初に連絡したのはアズ、夕飯の時間に念話を送った。
驚いてるかと思ったら、割と冷静だったよ。
エカが卒検合格した事は学園に知れ渡っていて、既にアズの耳にも入っていた。
ソナの事は知らなかったから、王宮行きのワケは就職の準備と思ったみたい。
『すごいなエカ、もう卒検合格か』
ジャスさんは息子の合格を特に喜んでくれた。
タワバ狩りは、ジャスさんの学生時代では卒業1ヶ月前くらいに行ったんだって。
終点ボスは最上級エリアに行けるパーティが少なかったから、卒業生の冒険者たちを呼んで行ったらしいよ。
『可哀想に…。今度うちへ連れてらっしゃい。異世界人なら里へ入れるから』
フィラさんはソナに同情していた。
どんなに忙しくても、子供の話はちゃんと聞くべきだって言ってたよ。
せめて母親だけでもソナの味方になってあげてたら、自殺なんかしなかったろうにって。
『家に帰る時はソナを連れて行くよ』
エカは家族みんなにそう伝えた。