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第44話:王家の養女

「君の名前を教えて。俺はエカルラート、エカって呼んでいいよ」

「エカ、ね。わたしは………あれ? わかんない…」


転移者の女の子は、元の世界での名前を忘れてしまっていた。

ショックでまた泣いちゃうかな?と思ったら………


「忘れちゃった。まっいっか」


………ケロッとしてる。


「………」

「エカってば、変な顔~」


鼻の穴広げて真顔になるエカを見て、女の子がクスクス笑う。

面白そうに指先でエカの頬をつついたり、猫ヒゲを撫でたりして遊び始めた。


かなり打ち解けてきたのかな?


「名前を忘れるのは、異世界人には時々ある事ニャ」


そろそろいいかなと思ったらしく、王様が室内に入って来た。

途端に、女の子はまた怯えた顔になる。


「ご、ごめんなさい!」

「君は何も悪い事はしてないニャ」


咄嗟に謝るのはクセなのかな?


女の子の行動には少し変化があった。

最初は独りで部屋の隅に縮こまってたけど、今はエカに抱きついてピッタリ寄り添ってる。

今の彼女にとって、エカが唯一心を許した相手になってるみたいだ。


「大丈夫。王様は優しい方だよ」

「王様…?」

「うん、国王陛下だよ。怪しい猫人(ひと)じゃないから安心して」


抱きつかれたまま、エカがシッポで女の子の頭を撫でて教えてあげた。


「我が国は君を歓迎するニャン。君はまだ子供だから、私が親代わりになるニャ」

「親代わり…王様が、パパの代わり?」

「パパと呼んでくれていいニャン」


女の子はまだ少し困惑してるけど、もうそれほど怯えてはいなかった。


「元の世界で辛い経験をして死んだ子は、こちらで過ごす時間と共に、元の世界の名前や記憶を忘れてゆくニャン」


話しながら王様は、エカがしたようにゆっくり近付くと床に座る。


「嫌な記憶が消えてくれるの?」


エカに抱きついたまま、女の子は聞いた。


「忘れたい事、無くしたい記憶は全て消えてゆくニャン」

「良かった。死ぬ前の事は全部忘れたいから…」

「消えた嫌な記憶の代わりに、こちらで楽しい思い出を増やしたらいいニャ」


王様の説明で女の子はホッとしていた。


「じゃあエカ、私に名前を付けて」

「俺が付けていいの?」

「うん。エカに付けてほしいの」


エカ、責任重大だ。

人生初の名付けに、頭を悩ましてるよ。


ちなみに、ボクの名前を付けたのはエカじゃなく、不死鳥の里にいるボクの母さんだ。

だからエカは、今まで誰かに名前を付けた事は無かった。


「君の名前はソナ。遠い国の言葉で【幸福】という意味だよ」


エカはしばらく考えて、女の子の未来に望む事を名前として贈った。

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