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第42話:怯える少女

「こりゃ凄いな…」

「最上位の終点ボスを1パーティで倒したのか…」

「異世界人を覗けば最少人数討伐記録だな」


解体場に置かれた巨大タワバを、野次馬が囲んでる。

生徒も先生も、この時期に狩られる事はほぼ無い終点ボスを興味深そうに眺めていた。


「こいつの肉は高級食材だから、パーティメンバー内で均等に分けよう」


ダイキチさんの提案で、巨大タワバの肉は5人で分配する事にしたよ。

使い道はそれぞれ売る・食べる・誰かに贈るなど自由に決める。

異空間倉庫(ストレージ)を持つエカは、売らずに家族で分け合って食べる予定だ。

他メンバーは実家用を少し残して、あとは王家に買い取ってもらった。


「よく頑張ったニャ。これはご褒美ニャン」


巨大タワバ討伐成功の報せを受けて見に来た王様が、エカたちにご褒美をくれた。


「次からは、これに保管出来るニャ」


魔道具の異空間倉庫(ストレージ)

エカは魔法としても持ってるから倉庫2つ持ちだ。

そんなに収容する物あるかな??


「中ボスと雑魚の肉は学食が買い取ってくれるそうよ」

「今夜は御馳走だな」


校内ではさすがにお姫様抱っこは恥ずかしいので降りたクロエと、彼女にさりげなく寄り添うチャデが言う。


解体して出た大量の殻は、いいダシがとれるそうだよ。

メンバーの家族用を幾つか取って、残りは学園と王家に買い取ってもらった。


殻の裏側から採れる薄膜は、欠損部分や大きな傷口に巻いたり貼ったりして再生させる医薬品になるらしい。

これは医学部と王宮薬師が買い取ってくれた。



解体と売却を済ませると、王様とエカたちは医務室へ向かった。

冬の森に倒れていた異世界人と思われる女の子は、王家が保護するそうだよ。

そろそろ意識が戻る頃かな~と思って行ってみたら………


「ごめんなさい、ちゃんと死ぬから近寄らないで!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて!」


………なんか、大変な事になってるような?


「どうしたの?!」


エカが勢いよくドアを開けた。


部屋の中にいた医務室の先生と、黒髪の女の子がハッとしてこちらを見る。


ベッドの1つの寝具が乱れていて、そこに寝ていた筈の女の子は部屋の隅で縮こまって震えていた。


「ごめんなさい、ごめんなさい………」


女の子は可哀想なくらい怯えて泣いてる。


「異世界転移したばかりでビックリしたのかニャ?」


穏やかな口調で王様が聞いた。


「ごめんなさい、わたし…ちゃんと川に飛び込んだのに…死ねなかったの…」


女の子は、自分が生きているのがいけない事みたいに思ってるらしい。


「自殺しようとして転移しちゃったのね…時々あるのよ」


医務室の先生もなるべく穏やかに話しかけた。


「ごめんなさい、転移しちゃって…ごめんなさい…」


女の子は、自分の意志ではしていない筈の転移の事まで謝り始める。

とりあえず何でも謝ろうとする子みたいだ。

医務室の先生は軽く溜息をついて、出入口で困惑している一同を見た。


「エカ、こっちに来て」


先生に呼ばれて、エカは部屋の中に入った。


今ここにいる者の中で、エカが一番年下で身体も小さい。

少女はそのエカと同じくらいの年頃に見えた。


身体の大きな成猫人よりも、歳が近そうな仔猫人の方が怯えられずに済むかもしれない。

先生はそう思ってエカを呼び寄せたらしい。


「ごめんなさい、死ねなくて…ごめんなさい…」

「ううん。君は死んでたよ」


ブルブル震えて謝り続ける女の子。

落ち着いた声で話しかけながら、エカはゆっくり近付いて床に座った。


「え…? …わたし…死んだの…?」

「うん、死んだよ。心臓も呼吸も、止まってた」


意外そうな顔をした女の子に聞かれて、エカは答える。


「…よかった…ちゃんと死ねたのね…」

「うん、完璧だったよ」


…なんか変な会話だけど、女の子は自分が死んだと聞いてホッとした様子だ。


エカは嘘は言っていない。

見つけた時、女の子は本当に死んでたからね。


それにしても、死ななきゃいけないと思うなんて、元の世界で何があったんだろう?

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