第40話:念願のタワバ狩り
「タワバは肉が美味いし、甲羅の裏側の薄膜に欠損部位の再生効果があるから、食用としても医療用としても売れるぞ」
タワバがいるという氷雪の洞窟。
その入口でダイキチさんがタワバについて教えてくれた。
「タワバ1回だけイベルの街で食べた。あの美味しさを求めて、ここまで進んで来たんだ」
「エカ、張り切るのはいいけど前に出ちゃダメよ」
「また女の子の死体に躓いて転ぶぞ」
期待に満ちるエカを、クロエとチャデが抑えにかかる。
っていうかチャデ、そんなしょっちゅう死体が見つかったら、この森立ち入り禁止になるんじゃない?
「とりあえずみんな、タワバ狩りのコツを見とけ」
そう言って、ダイキチさんがお手本を見せてくれた狩り方は…
「こいつは防御力が異様に高いから、攻撃は殻の継ぎ目を狙え」
…硬い殻と殻の間を狙って攻撃するという攻略方法だった。
「火属性・雷属性の魔法は使うなよ、殻が焼けてしまうと価値が下がる」
「「はい」」
ダイキチさんのアドバイスに、エカとクロエが頷く。
「急所はここだ」
丸い甲羅の合わせ目、脳天に剣を突き刺すと、タワバは動かなくなった。
雑魚タワバは手分けしてそれぞれ急所への一撃で倒しつつ、一行は洞窟の中を進む。
やがて遭遇したのは、脚を伸ばせば天井にも左右の壁にも届く、大きなタワバ。
「こいつの特殊攻撃は2本のハサミだ。目が赤く光ったら高速で突き出してくるぞ」
ダイキチさんが、中ボス独自の特殊攻撃を教えてくれた。
「ハサミを切り落とせば特殊攻撃を使えなくなるが、再生能力が高いからすぐに新しいハサミがはえてくる」
中ボス攻略のコツは特殊攻撃を防ぐか、発動される前に急所に集中攻撃して倒すか。
初めて戦う相手なので、エカたちは特殊攻撃を防ぐ方法をとった。
「俺とチャデが左右のハサミを斬る。エカとクロエは脳天に魔法の矢を撃ち込め」
「「「はい!」」」
指示を受けて、中ボス狩りが始まった。
「「「幸運の一撃!」」」
命中率を上げる支援魔法は、マリンが前衛の2人に、エカとクロエはそれぞれ自分自身にかける。
「いくぜ!」
「おう!」
ダッシュで距離を詰める、ダイキチさんとチャデ。
タワバの脚の付け根に斬撃を入れ、大きなハサミを根元から切断した。
「「石の槍!」」
エカとマリンは刺突タイプの土属性魔法で脳天を狙う。
石の槍は中位魔法だけど、魔法攻撃力が高いエカは威力調整で最上位並みの火力が出せる。
甲羅の合わせ目に突き刺さる石の槍が、タワバの体内の核に到達して貫いた。
「ハサミ1本目で倒せる楽勝もいいけど、稼ぐなら何本か再生させるといいかもな」
剣を鞘に納めながら、ダイキチさんは言う。
核を砕かれた中ボスタワバは即死、ブクブクと泡を吹いて立ち往生してる。
通路を塞いでいるそれを、エカはハサミと一緒に異空間倉庫へ収納した。
「…さて、この先の終点ボスは、本来なら複数パーティで協力して狩るんだが…」
通路の先を見つめて、ダイキチさんは何かを期待してる様子。
最上級ダンジョンの終点ボスなんて、卒業間近で攻略するかどうかというモノ。
ここまで行けるくらい強くなった生徒全員で、力を合わせて攻略するのが例年の方法らしいよ。
「もしも1パーティで倒せれば、卒業後はSランク冒険者だ…」
慎重に、でも期待に満ちているのか、ダイキチさんはフッと笑みを浮かべる。
ダイキチさんは在学時、ここの終点ボスを同期の生徒たちと協力して倒した。
だから、1パーティでの攻略は今回が初めてという。
「………お前ら、行くか?」
「「「「行きます!」」」」
ダイキチさんの問いかけに、エカたちは力強く答えた。