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第39話:凍死していた少女

アサケ学園の医務室は、医学部の校舎内にある。

入学時の学園見学でその場所を知っているエカは、空間移動(ワープ)魔法で迷わずそこに着いた。


「にゃっ?!」


医務室にいた白猫人の先生、いきなり現れたエカと少女に驚いてシッポがブワッと膨らんだ。


「すいません、この子を休ませてあげて下さい!」


まだ意識の戻らない女の子を抱きかかえて、エカが必死でお願いする。


ボクの完全蘇生の力で、身体にはもう何も異常は無いけどね。

さっきまで心臓も呼吸も止まっていたから、しばらく休ませた方がいい。


「ここへ寝かせてあげて」


困惑しつつもそこは医療関係の先生、すぐにベッドを指差して言った。


薄い布地のワンピースを着ている女の子は靴も靴下もはいてなくて、裸足だった。

クセの無い長い髪は闇夜の黒色、目は閉じているから色は分からない。


「異世界人…ニホンから転移して来た子かしら? 一体何があったの?」


医務室の先生が冷静さを取り戻して、エカに状況を聞いた。


「冬の森で、雪に埋もれて死んでたんです」

「え?!」


エカの答えに、先生のシッポがまた膨らむ。


「死んだのは今日だと思います。不死鳥(フラム)の完全蘇生の力で生き返ったから」

「…あぁ、そうか君は不死鳥(フェニックス)主人(マスター)だったわね」


続くエカの説明で、先生は少しホッとしつつ納得した。


「異世界からの迷い人かしら。たまに生存困難な環境に放り出されて死ぬ転移者がいるのよ」


魔道具を使って女の子の健康状態をチェックしながら、先生は教えてくれた。


最上級エリアである冬の森に放り出された女の子。

身体に傷は無かったから、死の直接の原因は身体が冷えすぎた事だろうね。


「この子は運が良かったわね。例年ならこの時期、冬の森に入る学生はいないから」


眠り続ける女の子の頬を優しく撫でて、先生は言う。


エカたちがダンジョン検定を次々に突破してなかったら、女の子を見つける事は出来なかったよね。

むしろ、もしも冬の森に入る日が明日だった場合でも、蘇生は出来なかったよ。

でも出来れば、凍死する前に見つけてあげたかったね。


「きっと、寒くて心細かったよね」


エカも先生の真似をして、女の子の頬をそっと撫でた。


「俺、実習の途中なんで、戻りますね。後で様子見に来ます」

「分ったわ」


パーティメンバーが待っているので、エカは女の子を気にしつつもベッドから離れる。

空間移動(ワープ)魔法を起動。

現れた転送陣の真ん中に立つと、先生にペコリと頭を下げてその場から移動した。

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