表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/123

第38話:冬の森へ

「…遂に、タワバがやってきた…」


冬の森に入ってすぐ、エカは感動して呟いた。


入学前から楽しみにしていたタワバ狩り。

上級検定をクリアしたエカたちは、最上級ダンジョンに挑む事が可能になった。


「タワバ、タワバ、まちかねタワバ♪」

「エカ、嬉しいのは分ったからどんどん先に行かないで」


粉雪を蹴散らしながら、はしゃいで進むエカに、クロエが苦笑しながら注意した。


「は~やく食べたい、美味しいタワ…ぶぁっ?!」


こんもり雪が積もった森の中、ゴキゲンで歩いていたエカがいきなりスッ転んだ。

衝撃でサラサラの粉雪が舞い上がる。


「ほらぁ、だから言ったじゃない」

「ハハハ、エカは頭良いクセにドジだな」


後方でマリンがボヤき、チャデが爆笑した。


「つ、冷たい…って、えぇっ?!」


転んだエカが笑いながら立ち上がりかけて、盛大に驚いた。

直後、慌てて雪をかき分け始める。


「おいおいどうした?」

「何か見つけたの?」


後方から追い付いて来たパーティメンバーが問いかける。


「えっ…?!」

「な…何…?!」


一同、エカが雪の中から掘り出したモノを見てギョッとした。


木の根か何かあったのかと思ったんだけど。

エカがコケた原因は、そんな物じゃなかった。


雪の中に埋もれていたのは、目を閉じてピクリとも動かない女の子。

猫人ではなく、世界樹の民や異世界人のような姿をした少女だ。

着ているのは薄い布地のワンピースで、水が凍結するような冬の森には向かない。


「…転移した異世界人か?」


ダイキチさんが近付いて来て言う。


「…凍えて心臓が止まったみたいね…」


マリンが手をかざして回復魔法を使ってみた後、溜息をついて首を横に振った。

エカの腕から伝わってくる女の子の体温は、雪と変わらないくらい冷たい。

動かない身体はガチガチに硬くなってる。

この子は、一体いつからこの子はここにいたんだろう?


「フラム、出てきて」


エカに呼ばれて、ボクはその右手から外に出た。


「完全蘇生の力、今日死んだものなら効果あるよね。 試してもらえるかな?」

「OK」


主の願いにより、ボクは不死鳥(フェニックス)の姿と力を解放した。


ボクは復活の力を持つ召喚獣。

主が老衰以外の死を迎えた時は、例え肉体が消滅していても再構成して健康な状態で復活させる。

それとは別に、異世界人が稀に持つ完全蘇生と同様の力も持ってるんだよ。


女の子を抱いているエカごと、翼で包む。

不死鳥の炎は復活の力、それが及ぶ条件を満たしていれば、死者は蘇る。

他のメンバーは、どうなる事かと静かに様子を見ていた。


「…間に合ったみたいだ」


ホッとしたようにエカが言う。


その腕の中、女の子の身体は氷のように冷たく硬直していた状態から、眠ってる時のように温かく脱力した状態に変わった。


「ちょっと医務室まで行ってくるよ」

「おう、ここで待ってるから行ってこい」


エカは異空間倉庫(ストレージ)と連動して覚えた空間移動(ワープ)魔法を起動して、医務室へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ