第34話:カモカモを狩ったらネギを採れ
「で…デカイ…」
通路の最奥にいたモノを見て、エカは小声で呟いた。
「エカってばまた自分の容姿を台無しにして…」
鼻の穴広げて真顔になるエカを見て、クロエとマリンが苦笑してる。
全くボクも同意だよ。
でもこれエカの生まれつきのクセだから、直りそうにないな。
豊穣の洞窟、カモカモルートの終点ボスは、さっき倒した中ボスよりもはるかに巨大だ。
ボスは洞窟の中に出来た池に浮かんで悠々と昼寝をしていた。
その池の周囲には、棒状で上は緑、下半分は白い植物がたくさんはえている。
「あの植物はネギといってな、カモカモの肉と一緒に煮込むと美味い。ボスを倒したらネギも採集するのがお約束だ」
ダイキチさんが教えてくれたので、棒状の植物はなるべく損傷させないように戦う予定となった。
「………」
「「ちょっと待った」」
巨大カモカモの方へ向かおうとするチャデを、クロエとマリンがガシッと左右の腕をつかんで引き留める。
「わざと蹴られるのナシだからねっ?」
「ハハハ、そんな事はしない…ぞ?」
「目、そらしてるじゃない」
女性陣の予想通り、チャデは試しに蹴られるつもりだったな。
横で見てるエカとダイキチさんは苦笑してたよ。
女性陣に念を押されて、渋々といった感じでチャデは剣と小盾を構えて巨大カモカモに近付いてゆく。
「クワッ?」
巨大カモカモが、チャデに気付いて首を傾げた。
池から出て、ヨチヨチ歩きで近付いて来る。
ボスがデカ過ぎるから、近くのチャデが小さく見えた。
「よお、デカ鳥、これは挨拶代わりだ」
そう言って、チャデは巨大カモカモの足に剣で斬り付ける。
「グワッ!」
皮膚を斬られ、理性がブチ切れた巨大カモカモは、チャデに蹴りを放ってくる。
でも斬られた傷が痛むからか、最速の攻撃ではないみたい。
正面からくる蹴りを、チャデはヒョイッと横に飛びのいて避けた。
「氷の槍!」
「氷の乙女!」
2つの氷魔法が、巨大カモカモを襲う。
クロエが放った氷の槍は巨大カモカモの胸を貫き、エカが放った氷の乙女は巨大カモカモの両足を凍結させた。
「グワワ~ッ!」
巨大カモカモは激しく抵抗してもがき、胸に刺さった氷の槍を平たいクチバシで噛み砕き、足を封じている氷にヒビを入れ始める。
「おりゃっ!」
そこへ、チャデが剣と盾から持ち替えた両手持ちの大剣で一閃!
「もういっちょいくぜ!」
更にダイキチさんも大剣で一閃!
「雷の帝!」
チャデとダイキチさんが左右にバッと飛びのいた直後、エカが上位雷魔法を仕掛ける。
バチバチと青白く放電する人型の雷が、巨大カモカモを捕らえて電撃を食らわせた。
巨大カモカモは雷で出来た大男に羽交い絞めされた状態で、強烈な電撃を浴びせられている。
数秒間電撃を浴びせた後、雷の大男はスッと消えてゆく。
「………」
巨大カモカモは白目をむいたまま、地響きを立ててその場に倒れた。
「よっしゃ! 終点ボスもクリアだな!」
倒れた巨大カモカモが絶命しているのを確認して、ダイキチさんが宣言する。
「こいつはさすがにこのまま運べないから、転送アイテムを使ってやるよ」
ダイキチさんがベルトポーチから丸い玉を取り出して、巨大カモカモの上に置いて起動させる。
転送陣が展開されて、巨大カモカモはその場から消えた。
「校庭の解体場に送っといたから、後でみんなで解体だ。ネギ採って帰るぞ~」
「「「「はーい!」」」」
その後エカたちは、野次馬に遠巻きにされつつ巨大カモカモを解体する事になったよ。