第28話:リベンジ
2日後、覚えた支援魔法の練習に1日費やして、エカたちのパーティは再び青空洞窟に挑んだ。
「あの膨大な数の中から、よく見つけられたな」
図書館で【基礎から学ぶ身体強化魔法】という魔導書を見つけた話を聞いて、付き添いのOBが感心した。
さすがに1億冊を見て回ったわけではないけど。
司書さんから「あそこらへん」なんて、大雑把に言われた中から見つけ出せたわけだから凄いよね。
みんな「しばらく図書館には行きたくない」なんてぼやいてたよ。
「さーて、それじゃあ~いくか!」
念の為、チャデは盾を出して構える。
「「「幸運の一撃!」」」
起動言語を発する3人の声が聞こえる。
火力役のエカとクロエは自分自身に、回復役のマリンは前衛のチャデに、命中率UPの身体強化魔法をかけた。
「ふんっ!」
チャデが、飛んで来るリロデルの群れに盾を突き出す。
前回は躱されたのに今回は見事にブチ当たり、チャデがそこから盾を頭上へ振ってリロデルたちを打ち上げた。
「「火球!」」
エカとクロエの同時攻撃。
盾に当たって目を回したまま空中へ放り出されたリロデルたちを、火の球が包み込んだ。
「こんなに変わるもんなんだな~」
丸焼き状態でボトボト落ちるリロデルたちを眺めて、チャデが目を丸くする。
前回あんなに躱されていた、物理攻撃や魔法。
下位無属性魔法にあたる幸運の一撃は、それらをたやすく命中させる効果があった。
「元の能力によって差はあるけどな」
と、OBが身体強化魔法の効果の違いを教えてくれた。
元の能力から命中率を2倍にするのが【幸運の一撃】。
術者が2人いれば、重ねがけによって2倍を4倍に引き上げられるという。
つまり今のエカたちなら、元の命中率→2倍→4倍→8倍、って事が出来るらしい。
「ここの中ボスはハウカっていう鳥型魔物なんだけど、そいつに攻撃を当てるのはリロデル以上の難易度だぜ」
OBは今後の為に情報をくれた。
ここの中ボスは、上級の魔物の強さで、移動速度はリロデルよりもずっと速いらしいよ。
「じゃあそれを狩る時は、重ねがけだね」
「3人がかりかな?」
「いっそチャデにも魔法覚えてもらおうか」
エカ、クロエ、マリンがそんな話をしていると…
「俺が魔導書なんか読んだら、習得する前に眠っちまうぜ」
…チャデ、苦笑。
「チャデは頭も筋肉で出来てるものね~」
「そういうこった」
笑って言うクロエを、チャデも苦笑しながら肯定した。
どうやら彼は、筋肉に恵まれ過ぎて魔法はからっきしみたいだね。
体育学部の生徒にはそういう子が多いらしいよ。