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第118話:心はいつも傍に

「……エカ……逝かないで……」

「家族を置いて逝きたくないよ。でも、アズたちが必死で戦ってるのに俺だけ幸せなんて、卑怯だと思うから」


リヤンを抱いて号泣するソナを、エカは優しく抱き締めた。


「ごめんね……愛してるよ……」


大切な妻と子にの額に、彼は家族のキスをする。

生涯愛し続けると誓った妻を残して逝く事は、どれほど悲しかったろうか。

我が子の成長を見られない無念は、どれほどのものだったろうか。


エカは爆裂魔法の使い手だから、死ぬ際に苦しみや恐怖などは感じない。

彼は家族と会えなくなる事が苦しくて怖いだけ。

名残惜しむエカを、創造神(かみさま)は急かす事はしなかった。



「俺の心も魂から引きはがして、この世界に遺してもらえますか?」


転生する覚悟を決めたエカは、ソナとリヤンの為に心を残す事を望む。


『よかろう。其方はどこに心を残すのだ?』

「この指輪に……」


創造神(かみさま)に問われて、エカは自分の手から結婚指輪を抜き取ってソナに手渡す。

金色で翼をイメージするデザインの指輪は、ソナが制作魔法で作ったものだ。

ソナが着けている指輪も同じ。

それぞれの指輪には「ずっと傍にいる」という言葉が刻印されていた。


「これをソナに持っていてもらいます」

「……エカ……」

「ルルやアズのように、俺も大切な人の為に心は残して逝くよ」


指輪を乗せたソナの手に自身の手を重ねて、エカは微笑んで言う。

ソナは声を震わせて泣いていたけど、エカの決意が変わらない事を感じていた。



『では、転生の準備を始めてもよいか?』

「はい」


創造神(かみさま)の問いに、エカが頷く。


「リヤンは僕が抱っこするから、ソナさんはエカさんを抱いててあげて下さい。魂の抜き取りで倒れるから」


そう言って、ルイがリヤンを受け取り、抱っこして優しく背中を撫で始める。

泣いていたリヤンが、少しずつ落ち着いてゆく。


「ソナ、地球人の寿命は短いから、君が生きているうちにこちらの世界へ還ってくるよ」

「うん。待ってるからね……」


エカとソナは世界樹の根と根の間に座り込んで抱き合い、優しく囁き合って唇を重ねた。

しばらくして神様が魂を抜き取ると、エカの身体から力が抜けてゆく。

ソナを抱き締めていたエカの両腕が、力を失いほどけてしまう。

苦しむ様子もなく、静かに目を閉じて喉を反らすエカを抱き締めて、ソナが嗚咽し続けた。


主人(マスター)の死によって召喚獣は契約を解除され、実体化出来なくなる。

意識も保てなくなり、その魂は主人の魂に溶け込んで転生を共にする。

不死鳥の場合は主が死亡したら完全復活の力が発動するんだけど、創造神(かみさま)がもたらす死の場合は発動しない。

ホクの魂はエカの魂の中に溶け込み、そこで意識が途切れた。


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