第9話:夏の街エテル
翌週、三毛猫国王ナゴは、エカたちをエテルという街へ案内してくれた。
エテルは「夏の街」とも呼ばれていて、年中薄着でいられる気温の高い地域にある。
隣接する森も気温が高く、いつも深緑の葉が茂っている「夏の森」だ。
「今日は祭りの日だから、屋台も賑やかニャン」
二足歩行でポテポテ歩く王様の後を、同じく二足歩行の仔猫人たちがトコトコついてゆく。
ボクたち召喚獣は今回も邪魔にならないように、主の右手に隠れてる。
「この街は魚料理が美味しいニャン」
王様はエカたちに屋台の焼き魚を買ってくれた。
「フラム、出ておいで。一緒に食べよう」
エカが呼んでくれたから、ボクは右手からシュルンと外へ出た。
大きな焼き魚に交互にかぶりついて、分け合って食べ始めた。
もちろん他の3人も召喚獣を呼び出して、魚を分け合って食べてる。
「美味しい~!」
「塩加減がいいね!」
焼き立ての白身魚は、皮がパリパリ香ばしくて、身もふっくら柔らかくて美味しかった。
「お土産には煮魚がいいニャ、冷めても美味しく食べられるニャン」
王様がお土産用に煮魚を買ってくれた。
異世界から伝わったという、ショウユとミリンという調味料が使われていて、甘辛い香りがする。
この煮魚も美味しくて、後にエカたちの大好物になったよ。
王様は、煮魚と一緒に食べるならパンよりもオススメという、シロメシも買ってくれた。
「里に帰るまで熱々で保管しておくニャ」
そう言って、王様は魔法で作り出す異空間倉庫に、煮魚とシロメシを保管してくれた。
異空間倉庫に入れると時間が経過しなくなるから、熱い物は熱いまま、冷たい物は冷たいまま持ち運べるんだよ。
「そうそう、アズは福音鳥の主人だから、ぜひ試してほしいものがあるニャ」
そう言って、王様が案内してくれたのは、六角形の箱に取っ手が付いた魔道具を置いている屋台。
人気の屋台らしく、猫人たちがズラーッと並んでる。
年齢問わず楽しめるみたいで、行列にはお年寄りも幼い子もいた。
列の邪魔にならないように召喚獣全員が主の右手の中で待機。
アズの召喚獣のベノワも右手の中に納まってる。
「いらっしゃいませ」
「この子たちにもガラガラを試させてほしいニャン」
列が進んでエカたちの番になると、王様が受付のお姉さんにコインを渡して言った。
「かしこまりました。どなたから挑戦しますか?」
「では最初は私が、やり方を見せるニャン」
そう言って、王様は六角形の箱に付いている取っ手を掴んで、ゆっくり回した。
コロンと丸い玉が出てきて、お姉さんがそれを見て、テーブルに置いているハンドベルをカランと鳴らした。
それから、隣に置いている物の中から紙包みを取って手渡す。
「おめでとうございます、やわらか干し魚の詰め合わせです。今日は運が良さそうですね陛下」
「うむ、満足ニャン」
王様は目を細めて、嬉しそうに紙包みを受け取った。
「最初は女の子たちから引くといいニャン」
「「はーい」」
王様に言われて、最初にガラガラを回したのはローズ。
上手に回せて、コロンと出た玉をお姉さんが見て、カランとハンドベルを鳴らすと紙包みを手渡した。
「おめでとうございます、コンブとカツオブシの詰め合わせです。お料理のお出汁に使って下さいね」
「お母さんが喜びそう~」
ローズも嬉しそうに紙包みを受け取った。
次に挑戦したのはエア。
コロンと出た玉から、貰えたのは箱に入った物。
お姉さんのハンドベルがカランカランと2回鳴ったから、先の2人よりも良い物を当てたみたいだ。
「おめでとうございます、セイヒョウキです。氷魔法が無くても氷が作れちゃいますよ」
「素敵! これがあれば飲み物も冷たく出来るね」
エアも大満足だ。
3番目はエカ、何が出るかな?
ボクは右手に隠れたまま、ドキドキしながら結果を見守る。
カランカランカランと、ハンドベルは3回鳴った。
「おめでとうございます! カンタン釣り竿セットです!」
「やったぁ! …で、どんな道具?」
先の3人よりテンションの高いお姉さんに釣られて喜んだ後、エカは聞いた。
お姉さん一瞬ガクッとズッコケて、苦笑しながら説明する。
「これは、釣りをすれば必ずお魚が釣れるレア魔道具ですよ~!」
「え! じゃあ俺、今日から釣り名人?!」
説明を受けて、エカのテンションが一気に上がった。