表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】不死鳥の御主人様~世界樹の子らと猫人たちの物語~  作者: BIRD
第12章:魔王が遺したもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/123

第116話:裏切りの蛇

「何故そんな処におられるのですか? 皆、陛下の復活を待っていますよ」


アサギリ島の中心に在る木に、1匹の白蛇が話しかける。

蛇が「陛下」と呼ぶのは、長い黒髪の女性の霊。


「今は考えているの。どうすれば6つの心臓を出現させずに転生出来るのか……」


困ったような表情で言う美女の霊はルル。

我が子の転生の為に使い果たした魂の力は回復し、彼女も転生が可能になっていた。

生まれ変わって記憶が消えるのが嫌で、魂から心を引きはがしてこの木に宿らせている。


「何故ですか? 6つの心臓が無ければ、猫人どもを滅ぼせなくなりますよ」

「猫人たちを滅ぼそうなんて、今はもう思ってないから」


困惑する蛇に、ルルは静かな声で答える。

彼女はもう世界を滅ぼす魔王ではなく、愛する者と平和に暮らしたいと願う普通の女性となっていた。

その感情は、蛇には理解出来なかった。


「では俺は何をすればよいのですか? この身は陛下に捧げ、猫人どもを屠る為に在るのですよ?」

「あなたには、自由を与えるわ。殺戮の為の駒ではなく、1匹の蛇として生きてゆきなさい」


抗議する蛇に、ルルは最後の言葉を告げる。

蛇は自然に還り、普通の生き物として生活すればよい。

その言葉は、蛇には納得できなかった。


「……それが陛下の望みとあらば。もうお会いする事は無いでしょう」


少々吐き捨てるような気配を纏う言葉を残して、蛇はアサギリ島から去っていった。



蛇の話をエカたちが聞いたのは、神様に呼ばれて世界樹の根元へ行った時だった。

平和を望む魔王から離反した蛇はどこへ行ったのか?

神様はそれを教えてくれた。


『再び、お前たちの力を借りねばならぬ事態となった』


そう告げる神様は、少し憂えている感じがした。

生まれた時に与えた役目を終えた者たちに、新たな役目を与えるつもりは無かったのに……神様はそう思っていたのかもしれない。


世界樹の根元に集うのは、ソロの冒険者として世界を旅するアズ、アサケ王国内での活動メインの冒険者パーティ所属エカ、アスカ王国の聖女となったローズ、世界に支店を広げる薬局の主となったエア、アカツキ王国の宮廷魔導師ロコの5名。


『地球の創造神(かみ)から報告があった。こちらの世界から白き蛇が抜け出して、あちらの人間に憑依しているようだ』

「以前、魔王がソナの学校の生徒に憑依していたようなものですね」


創造神(かみさま)は、他の世界の神様と連絡を取り合った情報を告げた。

状況を理解して言うエカは、ソナを苦しめた魔王はルルとは別物として扱うように「魔王」と呼ぶ。


『そうだ。憑依は転生とは似て非なるもの、元の記憶を維持している』

「蛇は何をしようとしているのですか?」


問いかけるアズは、ルルから蛇との会話を全て聞いていた。

その流れで彼が予測したのは、蛇が何か悪事を企んでいるのでは? という事。


『憑依は魔族独自の力ゆえ、蛇が何者に憑依しているのかは分からぬ。故に其方等に蛇と戦う役目を与え、異世界へ転生させるより他に術は無い。……行ってくれるか?』


神様の問いかけに、エカ、ローズ、エアはしばし考え込んだ。

彼等はまだ若く、まだこれから長い時を生きてゆける筈だったから。

異世界への転生は、こちらでの死を意味する。


「私は行くわ。アカツキ王国は優秀な弟子がいるから大丈夫だし、こちらの世界にもう家族はいないから平気よ」


最初に答えたのはロコだった。

彼女はもう何百年も生きているから、今の生にそれほど未練は無いらしい。


創造神(かみさま)、俺の心をアサギリ島に遺してもらえますか?」

『よかろう。その亡骸も妻の傍で眠らせておこう』

「では、俺も行きます。地球には息子がいるから、他人事ではないです」


次に答えたのはアズだった。

彼ならそう答えそうな予感がしてたから、エカたちは驚かなかった。


『では、決断した者は遺す者たちに伝えてまたここへ来なさい。まだ決断出来ぬ者はしばし考えてから答えてくれればよい』


そう言われて、5人はそれぞれの家へと帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ