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第113話:異世界の発明家

異世界転移でこちら側に来たルイこと詩川琉生。

工学分野に優れた才を持って生まれてきた彼は、元の世界にある便利な道具を、こちらの世界に魔道具として再現させた。

その他に、この世界にあるものをアレンジする事もある。

彼が神から授かったギフト【想像再現(アンヴォンテ)】は、心に思い描く物を物質化する能力だ。


「僕、こちらの父さん母さんも大好きだけど、日本の家族も大切なんです」


彼はそう言って、元の世界へ帰るための魔道具開発を始めた。

その魔道具は、2つの世界を行き来できるという、神の領域といえるもの。

完成した試作品は、最初にルイ本人が試運転して日本へ行き、自分の部屋への移動に成功した。


「魔導具の神がきた!」

「魔工学部に伝説誕生だ!」


起動と共に転移してゆくルイを見て、研究を手伝う魔工学部の学生たちが声を上げた。


その後、日本からアサケ学園の実験棟へ戻って来たルイを、実験を見学していた魔工学部の先生と生徒一同、ナジャ学園長、ナムロ国王、エカとソナ、アズたちが歓声で迎える。


続いて誰かを連れて移動する実験になり、最初の同行者は希望者多数の中、ルイの前世の父親アズが選ばれた。


「向こうの御両親に挨拶してくる」


なんて言って日本に転移するアズとルイを笑って見送った一同。


数分後、異変に騒然となる。


「助けて!」


狼狽した様子で叫ぶルイ。

床に座り込んだ状態で戻ってきた彼の腕には、血の気の引いた顔で目を閉じてグッタリしているアズが抱かれていた。


アズがそんな状態になるなんて見た事が無い。

ありえない状況にみんな動けない中、真っ先に動いたのはソナの召喚獣ルビイ。


『パパ!』


ソナが命じなくても飛び出し、不死鳥(フェニックス)の姿に実体化してアズとルイを両翼で包んだ。


ルビイはアズが孵化させた不死鳥、その絆がアズの危機を報せて行動に出たらしい。

つまり今、アズは蘇生が必要な状態って事だ。


「ごめんなさい! まさかこんな事になるなんて……」


ルビイの力で蘇生して目を開けたアズを、号泣しながらルイが抱き締める。


「向こうに着いたと思ったら、急に息が出来なくなって……あとは覚えてない」


意識が戻ったアズは、自身に起きた異変をそう説明した。


「完全回避どうしたんだよ……」


動揺しすぎていつもの変顔すら出ないエカが、青ざめた顔で言う。


アズの事は、双子のエカが誰よりも知ってる。

完全回避はアズの身体と精神の両方に及ぶ。

アズには物理攻撃も魔法攻撃も当たらないし、毒や呪いその他様々な状態異常も受ける事は無い。

それなのに、日本へ行っただけで死亡するってどういう事?



この異常事態を、エカたちは創造神(かみさま)へ報告に行った。


『あちらの世界は別の神が管理する場所、私が授けた完全回避の効果は及ばない』


創造神(かみさま)最初に教えてくれたのは、異世界では完全回避が無効化されるという事。


『そして、あちらの世界では、こちらの生き物は生存出来ないようだ』


次に教えてくれたのは、地球という世界の環境にこちらの生き物は適応出来ずに死亡するという事。


世界樹の中でアズの身体を調べてもらった結果、彼は完全回避が無効化された状態で地球の大気を吸ってしまったため、そこに含まれる猛毒に耐えられなくて呼吸と心臓が止まった事が分った。


「ごめんなさい……僕が不用意に転移させちゃったから……」


ルイはまだショックから立ち直れないらしく、アズに抱きついて涙を零し続ける。


「向こうの御両親に挨拶出来なかったのは残念だけど、こちらへ来てもらえたら何か御馳走するよ」


アズはそう言って、ルイの頭を撫で続けた。

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