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【完結】不死鳥の御主人様~世界樹の子らと猫人たちの物語~  作者: BIRD
第11章:その先にあるもの

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第110話:後日譚・異世界の少年

完全回復薬(エリクサー)で一命を取り留めた異世界人の少年は、アサケ王国の慣例に従い、お城で保護される事になった。


「助けてくれてありがとうございます。日本から来た詩川(ウタカワ)琉生(ルイ)です。ルイと呼んで下さい」


エカたちに発見されたと聞いてお礼を言う少年は、やはり異世界転移者だった。

日本人特有の童顔で、中等部くらいの年頃に見えたけど、実際は高等部の年齢らしい。


「落ち着いたら学園に通うといいニャン。学費や生活費は王家が負担するからお金は心配しなくていいニャ」


かつてのソナと同じく、ルイも王家の養子という立場で国籍をもらい、生活する事になった。


「僕、機械いじりが好きなので、魔工学部に入りたいです」


ルイは適応力が高いらしく、すぐに学部を決めて馴染んでいった。



魔工学部で学び始めて1ヶ月ほど経った頃。

その後の様子を聞きに訪れたエカを見たルイが、何故か赤面してうろたえ始める。


「あ! エ……エカさん……すいません……でした……」

「ん? 何かあった?」


顔を真っ赤にして目を合わせないようにしながら謝るルイを見て、エカは首を傾げた。

何をそんなにうろたえてるんだろう?


「……え、えっと……その……な、習ったんです……」

「何を習ったの?」


エカは分ってなかったけど、ボクはなんとな~く察してしまった。

多分、習ったというのはあの授業の事だな。


「……エ、完全回復薬(エリクサー)……です……」

「あ~、あれね」


そこでようやくエカも察した。

救命医療は全学部必修だから、習ったんだろう。

で、自分がそれを飲まされた事に気付いたんだね。


「……僕、目が覚めた時に口の中に甘くて少し苦い味が残ってたから、何だろうって思ってて……」


前髪で目を隠すように俯きながら、ルイは話す。


「……そしたら昨日、完全回復薬(エリクサー)の使い方の授業があって、味見したら、同じだったんです……」

「飲まされたな、って分かっちゃったんだね」


俯いて真っ赤になっているルイを見て、エカは苦笑した。

エカも同じ経験してるから、気持ちは分るよね。


「まあでも、あれって医療行為だから、気にしなくていいと思うよ」


エカは以前の自分に言い聞かせた言葉を、ルイに言って慰めてみたりする。


「そ、そうですか……エカさんは気にしないですか?」

「うん。助けるための行為だからね」


ルイが気にし過ぎないように、エカは笑みを浮かべて答えた。


「わかりました。じゃあ、エカさんに助けてもらった思い出にしておきます」

「……え?」


開き直ったように微笑むルイに、エカはまた首を傾げる。

何かズレているような……?


「宮廷薬師の方から聞きました。エカさんが僕に完全回復薬(エリクサー)を飲ませたんだろうって」

「えっ?!」

「エカさん綺麗だから……その……恥ずかしいけど、嬉しい……です……」


……どうしてそうなった?


『アズ~っ! すぐ来て!』


とりあえず、アズを呼んで話を聞く事にした。


「どうしたの?」


毎度の事ながら、エカが呼ぶとアズはすぐ来てくれる。

2人が並んだら、ルイが見惚れたようにポ~ッとし始めた。


「アズ、ルイを運んだ時、お城の人に何て説明したの?」

「エカから預かったって言っただけだよ」


アズに聞いてみたら、どうも説明が足りてなかったみたい。

それでお城の人たちもルイも、エカが発見して救命してアズに渡したと思っていたんだね。


「ルイ、君に完全回復薬(エリクサー)を飲ませたのは俺じゃなくて、双子の弟のアズだよ」


アズを指差しながら、エカはちょっと慌てつつ説明する。


「……アズさん……ありがとうございました……眼福です」

「ん?」


うっとりした表情でお礼を言うルイの、言葉の最後辺りが何かおかしかった。



後に、ルイは魔工学部で様々な魔道具を発明し、その技術を世界各国から高く評価される事になる。

彼は学園に就職して、講師から教師へと昇格した。


同時に、実は男性が好きなのだと明かしたルイは、美形揃いの世界樹の民たちから軽く引かれたりもした。

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