捨て令息を拾いました
今日も今日とて森の散策をしていた私、ほんの気まぐれで森の入口らしき所にやってきた。
「道が整備されている、という事は通り道ではあるのね」
道の向こう側を見ると小さな集落がある。
その反対側には小さく見えるが塔みたいな物が見えるからあっちの方が栄えているかもしれない。
まぁ、滅多に行く事は無いし、多分買い物をしなければならないのであれば集落の方に行く。
もう王都みたいな所はまっぴらゴメンだ。
そんな事を考えていたら馬車が通る音が聞こえたので慌てて隠れた。
(こんな森の中に人がいたら怪しまれちゃう)
馬車は豪華な装飾をしているので多分貴族だろう。
(え、こんな所で止まるの?)
馬車は森の入口で止まった。
すると馬車から10歳ぐらいの男の子が荷物と共に降ろされた。
「坊ちゃま、申し訳ございません……、旦那様の命令ですので……」
「仕方が無いよ、父上の言う事は絶対なのだから」
男の子は貴族の令息なのだろう、馬車の中にいるのは多分執事だろうか初老の男性が辛そうな表情をしていた。
(もしかして、捨てられたのかしら? 昔期待通りの結果が出なくて子供を追放する家がある、と聞いた事あるけど……)
だとしたらとんでもない場面に私は出くわしてしまったかもしれない。
「坊ちゃま、お元気で……」
「爺も達者でな、後父上には『早くくたばれ』とでも伝えておいてくれ」
馬車は男の子を置いてUターンして行ってしまった。
「はぁ……、行っちゃったか」
「あの、すいません」
「うわぁっ!? えっ、女の子……、なんでこんな森に……」
「怪しい者じゃありません、私は訳あってこの森に住んでいるんです」
「住むって……、こんな魔獣がいる森に?」
「いませんよ、魔獣なんて」
「えっ……」
「私フローラと言います。とある国で公爵令嬢をやっていました」
「公爵令嬢、だって……」
うん、信じられないという目をしている。
「ここで立ち話もなんですから私の家へご案内しましょう」
私は男の子を家に連れて行く事にした。