繰り返される死の空間
閉鎖空間である。
まるで脳をくりぬいて、ひっくり返したような部屋の形だった。
全体は丸みを帯びて、いくつかの「神経」の壁で仕切られ。脳幹に当たる部分だけは突き上がっている。
私は、彼女が死にたいと願うまさにそのことによって。
その願いに呼応する形で、きっと閉じ込められてしまった。
これは何なのか。罪か。罰か。
並行世界の彼女が一つ死にたいと願い、実行するたび。
一人の彼女が死ねば、私も一緒に殺されてしまう。
だが次の瞬間には蘇っている。
並行世界も無数にあり、私もまた無数にいるからだろう。
私の記憶は連続している。痛みは残り、吐き気がし、胃は煮えくり返るが。
しかし、狂うことは許されない。
もう幾度になるかの死を与えられた後、私はついに復活直後に吐血した。
胃液をすべて血に変えたような、嘘みたいな凄まじい量だ。
でもそれだけが私を再び殺すことはなかった。
胃が沸き立っている。喉がからからだ。思考の整理など付かない。
とにかく苦しい。苦しい!
殺人鬼がナイフを持って、部屋を歩き回っている。私を見つけると、のっぺらぼうが歪んだ。
ふらふらとする足取りで、私は必死に逃げた。
追い付こうともせず、しかし決して逃がさない速度で。殺人鬼は私を追い詰めていく。
脳幹に追い立てられていく。その先端、最上部へと。
いつしか殺人鬼はいなくなっていた。
代わりに、沸騰した血の激流が脳室の底からいっぱいに吹き上がってくる。
既に端まで追い詰められた私に、逃げ場などなかった。
ついに猛る血の濁流が下半身を呑み込んだ。
私はせめて脳幹の壁に捕まって、溺れないように耐えることしかできない。
熱い。熱い。熱い。
茹で上げられる肉体と焼かれる精神。
今度は容易には死ねなかった。
ああ、助けてくれ。
この苦しみはいつまで続くのか。この咎に果たして終わりは来るのか。
誰にもわからない。