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ボクと誠一が付き合うの?

ボク達の学校から1㎞ほど離れた山にある公園には9月らしい暑苦しいほどの蝉しぐれが鳴り響いている。蝉が鳴くのはオスの求愛行動らしい。子孫を残すためにメスに自分の存在をアピールしているらしい。


だとしたら、今この公園にいる人間同士のボク達の関係もまさに蝉しぐれと同じだ。

なにしろ女の子になったばかりのボクは幼馴染の久礼 誠一くれせいいちから「俺の赤ちゃん、産んでくれ!!」とストレートに求愛されたのだから‥…。


誠一は、来年になったら女神像の影響で発生したモンスターの侵攻を食い止める防衛隊に入隊させられるらしい。

モンスターと戦える武器は、古代より伝わる退魔武器を作るために考えられた製法で作られた武器、神聖な力を秘めた神聖武器でなくては無効らしい。古代より伝わる製法で作られた武器というのだから、当然、刀や弓や槍と言った古代~中世、近世にかけての武器ばかりで、防衛隊員は、モンスターと近接戦闘をしなくてはならない。

だから防衛隊の生存率はおよそ6割。4割が死んでしまうときいたことがある。

しかも、神聖武器の退魔力を十分に発揮させることが出来るか出来ないかには適性があって、誠一は、その神聖武器を使いこなせる適性があることが健康診断で確認されたので、防衛隊に選抜されたらしい。

酷いよ。

誠一は、まだ16歳なのに。いくら適性があるからって、そんな危険な戦場に送り出されるなんて・・・・・・。

でもね同級生とはいえ、誠一よりも5か月後に生まれたボクもまだ15歳なんだよ?

そのボクに「俺の赤ちゃん、産んでくれないか」は酷くない?


「あのさぁ。・・・・・・・。ボクが女の子になったから、赤ちゃん産んでくれ!ってひどくない?

 だって、ボクは、まだ15歳だから結婚もできなし、子供も産んじゃいけないんだよ?」

ボクは、盛大な告白を受けたショックを怒りに変えて、口を尖らせながら誠一に抗議する。誠一も可哀想かわいそうだけど、これはハッキリさせておかないといけない問題だから・・・・・。 

「そもそも、そういうのって好きな人とじゃないと、しちゃいけないんだよ?

 誠一は、女の子だったら、誰でもいいの?

 ボクの事をたまたま、目の前に降ってわいてきた都合のいい妊娠する機械だと思ってない?」

ボクがそう言って誠一を責めるようにジッと見据えると、誠一は顔を真っ赤にして反論してきた。

「そ、そんなことはないぞ!!俺はお前のことが前から好きだぞ!?だから頼んでいるんだ!」

「はぁ?女の子になったボクと会うのは、今日が初めてでしょ!?それまでは、ずっと男同士の友達だったじゃないか!なんで、そんなすぐにバレる嘘をつくの?」

ボクが誠一の見え透いた嘘を看破すると、誠一は、しばしの沈黙の後、観念したかのように深い溜息を吐いてボクを見つめながら言った。


「・・・・・本心を言うと、だ。・・・お前を男と思ってみたことなんか一度もないぞ?」

・・・・・・はい?

「大体、女になる前から、お前は男要素ゼロじゃねーか!」

な、なんだとー!!ボ、ボクは前はちゃんとした男の子だったぞ!!

「チビで華奢で、15歳を過ぎても未だに声変わりもしてないお前のどこに男要素があると思ってんだ?」

がーん!!衝撃の指摘!!以前のボクって改めて考えると確かに元々、男要素少なすぎない?

「すね毛やヒゲどころか、陰毛も生えてないお前のどこが男だっ!」

・・・・・・ちょっと、待って。・・・・・なんで、知ってるっ!!!?

「中学ん時の修学旅行の風呂の時間なんか、男子連中にとってお前は、歩くAV女優だったんだよっ!!」

いやー-----っ!!

エッチ!!スケベっ!!変態っ!!

皆で、ボクのことをそんな目で見てたのかっ!!

「気が付かないお前もどうかしてるけどよ・・・・・・・」

・・・・うっ。

「だから、お前が女になったのは、俺にとって幸運ラッキーだったんだよ。」

・・・・・そ、そうだったのか。


ボクは今までの自分が男子からどういう風に見られていたのか、そして誠一がボクをどんな風に思っていたのかを知って、恥ずかしくて頭を抱えて座り込んでしまった。すかさず誠一が言う。

「お前、女になってスカート履いてるんだから座り方に気を付けろ。青いパンツが見えてるぜ。」

ボクは、自分がもう男じゃなくなっていることを忘れてしまって、股を開いてしゃがみ込んでたことに気が付いた。そして、自分のパンツが正面に立つ誠一から丸見えになっていたことに気が付いた。

「きゃーっ!!見るなっ!!変態っ!!」

ボクは慌ててカルピスの空き缶を投げつけながら、立ち上がる。誠一は、ずっとボクの下半身から目を背けられなかったので、神がかった反射神経してるくせに空き缶を鼻っ柱にまともに食らって悶絶する。

「あ、ご、ごめん。避けると思ったんだ!!」

ボクが駆け寄るような勢いで誠一に近づくと、誠一は嬉しそうに笑った。

「パンツを見た責任取って結婚してくれって言うんだろ?わかったよ。すぐに結婚しよう。」

「・・・・・・いや、言わないけど?」

・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・誠一はしばらく考え込んだ後、大げさに首をかしげながら、質問を返してきた。

「じゃぁ、お前はどういう風に男と結婚まで行きゴールインたいんだよ?」

はぁ、こいつバカなの?

「そんなの決まってるじゃないか!

 女の子はね。普通に恋して、愛を告白しあう幸せな結婚を夢見るの。

 子づくりの道具として利用する男なんかと結婚したいとは思わないのっ!!」

ボクはそう言って腕組をして誠一を睨む。ボクの確固たる乙女の信念を示すのだ。

誠一はというと、しばらくアゴに手を当てて、考え込んでいたが、唐突に閃いたように元気な声で


「じゃぁ、土日に俺とデートしよう!!」


と、提案してきた。

誠一が強引な性格なのは知っていたけど、さすがにこれはね。ボクはため息をつきながら、反論する。

「いや、誠一。デートって。なんで既に交際している前提なんだよ。ボクにだって彼氏を選ぶ権利はあるぞ!」

その言葉を聞いた誠一は、こともなげに「え?俺は優良物件だと思うぞ?スポーツ万能で背は高いし、顔も割とイケメンだ。」と言い返してきた。・・・・・一理あるかも。

・・・・確かに。

今まで考えたことがなかったけど、確かに誠一は優良物件かもしれない。

確かに・・・・・。彼氏としてアリなのかもしれない。

ちょっとヤンチャな感じはするけど、男らしく彫りの深い顔立ちもカッコいいかもしれない。いや、そういや、中学の時、そこそこ女子から人気もあったような・・・・・・・。

うん。そう思うと彼氏の候補の一つとして、あくまでストックとしてなら、考えられなくもない。

いや、でもなぁ・・・・・・。誠一とボクが付き合うの?


「な~んか、ボクと誠一が付きあうなんて・・・・想像できないんだよなぁ・・・・・。」

ボクがポツリとそう呟くと、誠一は、右手を出して「じゃぁ、まず友達から」と言って、頭を下げてきたので笑っちゃった。

「もう!!ボクたち元々、友達じゃん!!」

そう言って、ボクは誠一の手を握り返して握手するのだった。

「よし!じゃあ、今度の土曜日、デートな!最初だから、映画館からにしようか!?」

「う、うん。」

いきなり、デートの約束をしてしまった。ずっと、友達として遊んできた誠一とデートって変な感じもするけど

・・・・・・あれ?よく考えたら人生初デートかもしれない。

初デートが幼馴染ってちょっとロマンチックかも・・・・・

そう思ってから見るからか、女の子の視点で見るからか、わからないけど。

わからないけどさ・・・・・嬉しそうな笑みを浮かべてボクを見つめる誠一のことを、いつもより何割か増しでカッコいいと思ってしまうボクだった。




15歳の夏。ボクは、幼馴染の同級生とデートすることになりました。

・・・・あれ?なんでこんなことになってるんだ?

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