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ボクが赤ちゃん産んであげる

ボク達が限界集落の中にある山中の空き家に住む様になって1か月が経とうとしていました。

ボクは今日、16歳になります。


ボク達の住む空き家から10キロ離れたコンビニは、人がほとんど住んでいない田舎なのに高速道路の降り口があるからそこそこ忙しいのに人手不足のブラック状態。一人で働きづめだった店長さんは疲労困憊だったので、身元不明のボクと沙也加ちゃんを大歓迎で迎えてくれた。

あのね、ボク達は、バイトの面接に必要な履歴書には「久礼」って誠一の苗字を書いた。誠一の苗字になることは、奥さんになったってことだよね。って、二人で笑いあった。だから、もう呼び方は京口さんじゃなくて、沙也加ちゃんなの。

そして、店長さんに明らかに双子の姉妹に見えないのに、ボク達は双子だって言い張ったんだ。けど、現状、人手不足で困り果てていた店長さんは「いいの、いいの。理由わけありなんだろう?」と言って、即採用してくれた。

ボク達はすぐに自転車を買うとローテーションを組んで交互にバイトに出た。それが店長さんには、とっても助かるようで、すぐに時給も上げてくれたし、気を使って食品廃棄寸前の安売りの商品をさらに値引きして売ってくれた。服や下着なんかもコンビニ着で注文していれば、ボク達は買い物に出かけずとも、生活用品を全て手に入れることが出来た。

誠一は誠一でずっと空き家に隠れていないといけないから、外に働きに出なかったけれども、持参した鉈や金づちを使って山の木を伐りボロボロの空き家をリフォームしてくれた。最初に床板を剥がした土間に岩を積み上げて暖炉を作ってくれたの。それがとっても温かくてボク達は家の中では冬の寒さを感じずにいれたし、暖炉のその明かりはとても幻想的でボク達の心を癒してくれた。それから空き家の近くを流れる小川の水を引き込んだ給水排水の水道を作って生活用水にできるようにしてくれたから、炊事、洗濯、トイレ、お風呂にも困らなかった。山の清流は、十分に沸騰させておけば、生活用水に十分に使えたんだ。さらに誠一は水路を増やして庭に畑と池も作った。

「暖かくなったら、ここに鯉を放せば、魚には困らない。野菜の種を買ってくれば、野菜にも困らない。」

誠一はサバイバルの本を読んで知った知識を総動員して、空き家を改造していく。男の子ってやっぱりすごいね。

沙也加ちゃんもボクも誠一の男らしいたくましさにもう、メロメロになった。

ボク達は、そうやってこの1か月近く、お互いを支えあって生きてきた。

生活費はバイトでどうにかなったし、何よりもボク達はずっと誠一との時間を共有した。

ボクと沙也加ちゃんは交互にバイトに出るので、誠一と二人きっりになった時間には「キス以上はしちゃだめ」って取り決めをした。

流石にもう「俺の赤ちゃん、産んでくれ!!」って、頼まれても病院にも行けないからキス以上はしちゃ無理だしね。

でも、ボクも沙也加ちゃんも誠一とのプラトニックな恋愛をこんなに長い時間味わえるなんて思ってもみなかったので、むしろ願ったり叶ったりだった。

夜になれば星空を見上げながら誠一に甘え、昼になれば、誠一に抱っこされて日向ぼっこをした。

誠一に甘えて、言葉を用いずに視線だけで誠一にキスをせがんだり、

誠一に膝枕をしてあげながら、愛を語り合うだけでボク達は幸せだったんだ。


こんな日がずっと続くと思ってた。ずっとずっと、ボク達は一緒にいられると思っていたんだ。

・・・・・・それは、ボクの16歳の誕生日の夜に訪れた。

沙也加ちゃんは、ボク達に気を使ってくれて誕生日だけは、二人っきりにさせてあげるって言ってくれたの。

その夜。沙也加ちゃんは、バイトに出かけて行った。

ボクと誠一はコンビニで買ったショートケーキに蠟燭をさして、明かりをともしてハッピーバースデーを歌った。とてもささやかな、ささやかすぎるぐらい小さなお誕生日ケーキだったけど、それでもボクは幸せだったんだ。だって、誠一と一緒にいるんだもの・・・・・。

誠一の温かい手がボクの頬に触れ、柔らかい唇がボクの唇を塞ごうとしたとき、沙也加ちゃんが息を切らせながら慌てて家に入ってきた!!

「逃げてっ!!自衛隊が私たちを探してこの近くまで来ているのっ!!さっき、休憩時間にテレビを付けたらニュースでやってたわ!!私たちを自衛隊が捜索してるのよっ!!

 顔写真が公開されていたわっ!!

 ・・・・・どうしよう?どうしよう?

 きっとコンビニのお客さんの口から私たちの存在がバレたんだわ。

 ・・・・・ああっ!」

沙也加ちゃんは、そういって泣き出してしまった。

ボクもどうしていいのかわからなくなって、誠一の顔を不安そうにのぞき込むと、誠一は落ち着いた表情をしていた。

「・・・・で?ニュースで俺たちのことを何て言ってたんだ?」

「詳しくはわからないわ。家出した3人の顔写真を公開しますってだけで。」

「いつぐらいから、公開していたんだ?」

「それもわからないわ。私・・・・わたし・・・・自衛隊が私たちを探してるって聞いて、怖くなってコンビニから逃げ出してきたの・・・・・。」

「・・・・そうか。」

誠一は、沙也加ちゃんに全てを聞くと、怯えて震える沙也加ちゃんを抱きしめながら「ここまでだな」と言った。ボクは、怒って思わず大きな声を上げてしまう。

「なんでよっ!もっと遠くに逃げればいいでしょっ!!?」

「逃げると言っても顔写真が公開されているんだ。すぐに警察に見つかって、俺たちは捕まる・・・。どのみち、逃げ切れるわけなかったんだ‥。」

全てをあきらめたかのように誠一が言ったときにボクは、思わず誠一の頬を引っ叩いたわ。

「いくじなしっ!!行けるところまで逃げようよ!・・・・お願い・・・・一緒にいてっ!!」

言っていて、それが不可能なことはボクもよくわかっていた。わかっていたけど認めたくなくて、最後の最後まであがきたくて、誠一に八つ当たりのようにビンタをしてしまった。

誠一は、瞬きもせずにボクのビンタを受け止めた後、

「お前、普段は暴力反対って言うくせに、俺には容赦ないんだから・・・そういうところも可愛いぜ」って微笑んでくれた。

全てが終わった・・・・。誠一の真剣な眼差しを見てボク達は、もう諦めるしかないと悟って、誠一に縋り付いて、その晩はずっと泣き続けた。誠一はそんなボク達を慰めるように頭を撫でててくれていた・・・・・・。


そして、夜中の3時に自衛隊は、とうとう、ボク達の空き家を見つけた。ボク達の家はヘリコプターや自衛隊員の照らすサーチライトの的にされた。目がくらむような明かりは、ボク達の恐怖心を呼び起こす。

沙也加ちゃんもボクも・・・怖くって、ずっとガタガタ震えていた。

誠一は、そんなボク達に「俺が話を付けてくるから、お前たちはここにいるんだ。」といって、ボク達がすがって止めるのも聞かずに、空き家を飛び出していった・・・・・・・




そして、誠一は、もう空き家には戻ってこなかった・・・・・・・。





いや、だって。

全部、自衛隊内の伝達ミスで誠一は本当は子供だから防衛隊に行かなくてよかったんだって・・・・・・・。

ボク達を保護してくれた自衛官の隊長さんは「本っ当にすまなかった!!」って、泣きながら頭を下げてくれた。

よくわからないけど、ボク達の地域を監督してた2等陸佐ちゅうさって、勉強はできるけど頭悪い上に頑固者っていう困ったちゃんで、誠一の家族が誤って届けられた入隊通知を手に持って駐屯地に抗議しに行ったときに自分たちのミスなのに逆切れして、「どうあっても来年には入隊してもらうっ!歯向ったり、匿えば敵前逃亡の罪で射殺するっ!!我々にはその権限が与えられているっ!!」とかいって騒ぎだしてたんだけど・・・・・。結局、その人、そのあとすぐに精神状態を理由に除隊して、現在は療養しているらしい。

その後、家出したボク達を心配した親たちが困り果てて家出した理由を自衛隊に申し出てくれたおかげで、その時の問題行動が発覚して、自衛隊が慌てて総動員してボク達を保護してくれたって流れなの。



「・・・・・・って、なんじゃ、そりゃああああああっ!!」


誠一の雄たけびが冬山に響いた。

なるよねー・・・・。




「おい。久礼!また間違っているぞ!」

1か月失踪していたボク達は、それからしばらくの間、土日は学校で補習を受けることになった。

特別授業を受け持ってくれている担任の遊佐ゆざ先生は、呆れたような声を上げて誠一を注意する。

誠一は、あの事件の後、しばらくは魂が抜けたように集中力がなくなっていた。

その状況から復活するのに更に1か月以上かかったけど、無理ないよね・・・・・。

死がほんの少し手前まで迫っている緊張感の中でこの半年近く耐えてきたんだから。

ただ、自衛隊も最近になってモンスターに神聖兵器が通じるメカニズムを解明しただとかで、神聖兵器の増産と強化。また戦略の見直しをすることで、最近は連戦連勝を記録していて、もう一般人から適正者を探す必要もなくなっているらしい。つまり、本当に誠一は、防衛隊に入らないといけない脅威から解放されたってことになった。


「・・・・これから、どうしようかなぁ・・・・・。」

補習の帰り道に立ち寄ったいつもの公園でコーヒーを飲みながら、白い息を吐きつつ誠一がつぶやいた。

誠一がつぶやいたのは、将来の夢の話ではないよ?

誠一の左右の両腕に抱き着く、ボク達の話だ。

「あら、焦って決めることはないわよ?なんてったって私たちには時間があるんですもの。誠一は私たちと付き合って、どちらが本当に誠一の恋人に相応しいか、見極めてくれたらいいんだからっ!」

沙也加ちゃんは、そういって反対の腕に抱きつくボクを見て嬉しそうに笑った。

その笑顔につられてボクも笑う。

ボクと沙也加ちゃんは、1月近くのあの共同生活を経験したので、もう仲間意識が強い。

取り合うという意識はなくて誠一に選んでもらえばいいと思って。なんてったって高校生活と大学生活を考えれば、ボク達が結婚までにかける時間は、とっても長い。沙也加ちゃんの言う通り、じっくり選んでもらえればいいの。

「・・・・・どうすっかなぁ・・・・・。」

誠一は、途方に暮れている。そりゃそうだろうね。だって、あの決死の覚悟で自分をかばってくれた女の子たちのどちらか一人を断らないといけないんだから・・・。

・・・・いいの。誠一。

ゆっくり悩んでくれていいの。そんなの簡単に選べるなんて思ってないし、簡単に選んでほしいなんてボクも考えてないよ。しっかり悩んでくれていいの。


・・・・でもね?誠一。

ボクは信じているの。誠一が最後にボクを選んでくれることを・・・・・・

だからね・・・・誠一。

そのときは・・・・・・




ボクが君の赤ちゃん産んであげる‥‥。




「俺の赤ちゃん、産んでくれ!!」(完)






PV数5000&100pt.越えありがとうございます!

私にとっては初めての事であり、大変、励みになります。

今後も頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!!

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