初陣
登場人物
河島真司/ルヴァンガ この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマる。人間VS魔族の世界に転生し救世主と見做され、魔族との戦いに挑む
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌
ヴァイス ヒゲ面の男。強面に限らず気が弱い。
「ああっ」
「い、いったいなにが起きた?」
「ま、眩しい・・」
みんな呆然としていた。
霧のような白いものが立ちこめていた。
「こ、この臭いはなに?」
ミラの声がか細い。
焦げた臭気とともになにか腐ってくような臭い。そう、負傷した冒険者たちが放っていた臭いとそっくりだ。
「念だけで魔族を撃退したか・・」
お師さんの落ちついた低い声が聞こえてきた。
「魔族が葉っぱに憑依したってことは」
ミラが呟く。
「憑依した魔族はそのまま死んだ・・それで動物の死骸みたいな臭いがするワケか」
ヴァイスはしきりに頷いている。
霧?が徐々に晴れてきた。
ほとんどの樹が焼かれ、煤けていた。葉をすべて落とし無残な姿を晒している。
「爆弾でも落ちたみたい・・」
ミラの声が上ずってる。
「やりすぎたな・・」
お師さんは渋い顔をしている。
「この程度の魔族にこんな大袈裟な魔法トリックをしかける必要はない」
よくやった─そんな言葉を期待していたボクはガッカリした。
「初心者だからしょうがないのでは・・」
ミラが助け船をだしてくれた。
「確かに。初めての実戦で魔法量をコントロールできるワケもない」
ヴァイスは感心していた。髭をしきりに弄っている。
そうだ、そうだ──ボクは心のなかでお師さんに抗議する。
「ルヴァンガを並みの冒険者、勇者と同じだと?」
お師さんの目が細くなった。
この老人、感情が荒れるとよくこういう目つきをした。
「そこらをうろついているレベルBやCの連中ならそれでよかろう。だが、この紋章を抱いて生れてきた我らが救世主には、初陣から相応の活躍をしてもらわなくては・・最終的には我らが苦労するのだ」
お師さんはまずミラを見た。
「そうだね、甘やかすのマズいよね」
自分に言い聞かせるように彼女が言う、「ヴァイスはどう思う?」
「御意」
ヴァイスは面倒くさそうに答えた。まだ髭をいじっていた。
ゆっくりとお師さんはボクの方に顔を向けた。
「ルヴァンガ」
師匠の低い声に思わず身がまえてしまう。
「よくやった。見事な初陣だった」
お師さんの顔が笑顔で皺しわになっていた。
「え?」
拍子抜けした。と同時に安堵した。
きついダメだしを喰らうと覚悟していたから。
「へへへ」
だらしない笑みがこぼれてしまう。
「救世主でしょ、らしくしなさい」
ミラの口調が厳しい。
「救世主だからって四六時中肩ひじ張ってることもなかろうて」
傍観者ふうのヴァイス。
皆それぞれの表現でボクの初陣を祝ってくれてるんだ、そう感じた。
「よし、村に凱旋じゃっ!」
お師さんがとびきりの大声で言った。
年齢、性別、性格・・すべてバラバラの対魔族のパーティーだった。
こんな感じでボクの冒険者、いや救世主としての旅が始まった。
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