実践
登場人物
河島真司/ルヴァンガ この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマっ てる。人間VS魔族が戦う世界に転生して、救世主と見做される。
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌
ヴァイス ヒゲ面の男。強面に限らず気が弱い
「気を充実させ、前に進め」
小石が砕けた茂みのほうをお師さんは指さした。
「気を充実・・」
「魔族を断固としてこの町に入れぬ、そう決意して歩を進めるだけでいい」
「それだけ?」
拍子抜けした。
今までの訓練は、断崖から飛び降りたり、ヌーのような獣を乗りこなしたり、日暮れまで弓矢を300本射ったり(筋肉痛が酷かった)・・かなり過酷だった。
それに比べりゃラクなもんだ。
「ヨシっ!」
深呼吸し、一歩踏みだした。
「侮るなよ、魔物どものパワーを!」
お師さんが大声でボクに呼びかけた。
「大丈夫かな・・」
心配そうなミラ。
「深刻な顏するなってば。アイツ、救世主なんだろ。心配するの野暮っしょ」
ヴァイスはニヤニヤしていた。
風が樹の枝を揺らし始めた。
驚いた鳥たちが逃げだす。
まるで意思でももってるかのように、足元で吹き荒れる。つむじ風──ボクのまわりをグルグルと風がまわる。
風力が増していく。
落ち葉が次から次へと吸い寄せられてきた。森中の落ち葉が集まってきたのでは?そう思った。
やがて落ち葉は束になって舞い上げられ、頭上でゆらゆら揺れ始めた。黄色と赤のまだらなオーロラ、そんな感じだ。
「あの葉っぱの動き・・」
ヴァイスの顔が紅潮してる。
「単なるシールドを張っただけじゃない・・」
ミラの顔がゆがむ。
「お師さんっ!」
彼女は自分の師匠に向かって叫ぶ。
「あ、あっれは憑依魔法です。ヤツら、魔力を木の葉にも憑依させている・・」
「うろたえるなっ!」
お師さんが怒鳴りかえした。
「このワシがそんなこと知らんと思うか」
「でも・・ルヴァンガにとってこれが初めての・・」
「たわけっ!」
小柄な身体のいったいどこにそんなパワーを秘めてるのか、凄まじいお師さんの怒号。
「この程度の魔法にかかって斃れるなら所詮はその程度の器・・」
お師さんの声は平静に戻っていた。
「しっかりと我らが救世主の初陣を見とどけよう」
つむじ風とともに、落ち葉は絶えず回転している。その風がふいにやんだ。それでも落ち葉は空中に浮いたままだ。
自分でも驚くほど落ち着いていた。
ジッと落ち葉の動きを注視する。慌てず騒がず、それが肝要だ──。自分でも不思議だ、なんでこんな冷静でいられるのか。
「あぁっ!」
ミラが大声をあげた。
落ち葉がみな槍のようなモノに形を変えていたのだ。
尖った銀色の先端が不気味に光る。
「マズいぞっ!」
ヴァイスの甲高い声。
その銀色の物体がなだれをうってこっちに降りそそいできた。
ボクは動かない、ひたすら立ち尽くしていた。
お師さんの教え──魔族をこの町に断固として入れぬ、その決意があればいい──ただひたすら心のなかで念じた。それだけで身体全体が燃えるように熱くなってきた。
「串刺しになるっ!」
ミラの悲鳴。
次の瞬間、もの凄い光と爆音に包まれていた。
「面白い!」「続きが気になる!」「更新がんばって!」
と、思ってくださったら、
ブックマークと広告下↓の【☆☆☆☆☆】から
ポイントを入れ応援して下さい!