拝命
登場人物
河島真司 この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマってる
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌
ヴァイス ヒゲ面の男。強面に限らず気が弱い。
──この世界に、赤ん坊に、生まれ変わってどれくらいの月日が経ったのだろう?
体感としては三か月くらいしか経ってない感じがする。
それなのにもうミラの背丈を追いこしてしまった。
そんな異常な成長をしたボクだが、まわりの皆は特に気にしていないようだった。
ミラ、お師さん、ヴァイスの三人でパーティーを組み、さまざまな特訓に励む日々──。
この日、いよいよ実戦的な訓練をするため山奥まできていた。
懐かしい気分がした。
それもそのはず、ボクが赤ん坊として〈誕生〉した場所のすぐ近くだそうだ。
「このあたりはちょうど魔族のテリトリーの境だからね」
前を歩くミラがそう説明する。彼女は大きな剣を背中に袈裟がけにしていた。
「乳離れできたかな?このベイビーちゃん」
ヴァイスはわざわざ振りかえり、皮肉たっぷりの言葉をボクに向かって吐く。ボクのコトが気にいらないのだ。
先頭をいくお師さんが不意に立ちどまった。
「まず、この世界は魔力第一」
お師さんの口癖だ。
「我々だれもが魔力をもって生まれてくる」
もったいぶった口調のお師さん。
ヴァイスは退屈そうだ、「努力次第で生まれつきの能力値を超えられる、でしょ?」
「その通りだ」
お師さんがあごを引いた。
「はてさて、どんなもんか」
憎まれ口を叩くヴァイス。
そんな彼をお師さんは横目で睨む。
「この界隈はちょうど魔族たちのテリトリーと境界になっている」
お師さんがしゃがんだ。
小石を拾い、額のあたりにもっていく。軽く念をこめた。
腕に覚えのある勇者や冒険者がモノに触れると、それだけで魔力を帯びることがある。
「フンっ!」
茂みの中に、お師さんは小石を投げた。
もの凄いスピードで小石は飛んでいく。
「なっ」
声が上ずった。
閃光が薄暗い森の中にほとばしる、まるで雷だ。
飛んでいった小石は、突如、叩き落とされて粉々になった。
「思ったより強いシールドを張りおったな、魔族ども」
ボソボソと呟くお師さん。
「ルヴァンガっ!」
お師さんがボクを大声で呼んだ。
そう、このずっと憧れていた名前、こっちの世界でのボクの新しい名前になった、なってしまった。
RPG【聖魔の紋章】で魔剣をふるうヒーローと同名だ。
この地方に伝わる伝説で、魔族に打ち勝ってきた冒険者の名前だそうだ。長らくその偉業を憚り、子供にルヴァンガと命名する村民はいなかった。お師さんはボクにこの名前を付けるのを強硬に主張したらしい。最後は反対意見をねじ伏せたのだ。
つまり、この名を拝命した瞬間から〈英雄〉としてみんなの期待を一身に背負うのだ。
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