再誕
登場人物
河島真司 この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマってる
母ちゃん氏 真司の母親。口うるさい
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌
ヒゲ面の男 強面だが気が弱そう
〈おい、起きろ!〉
誰だ?
声の主を探しあたりを見まわした。人の気配なんかない。
視界はグレィ一色だった。
夢のなかにいるみたいだ。
そうか!夢なんだコレは・・。
〈起きるんだ!〉
ハッキリ聞こえた。
人の声だ。聞いたこともない女の声・・でも、少なくとも母ちゃん氏の声じゃない。
誰なんだ?
今どこにいる?不安でたまらない。
〈大丈夫だ〉
声のトーンが少し落ちた。
そして・・視界が徐々に開けてきた、霧が晴れるみたいに・・。
「お、目が覚めたようだ!」
女?
真っ先に目に飛びこんできたのは女の顔だった。
異様に青白い顔の若い女。真紅のショートヘアー。日本人離れした目鼻だちだった。
そして彼女の隣りには白髪の仙人みたいな老人。
「おお、元気そうな男の子じゃ!」
老人は喜々としていた。
「やっぱり、伝説はまちがってなかった、お師さん!」
女が大声をあげた。
伝説?ナニ言っちゃってんだろか、このお姉さん。
「ああ、こんなにハッキリ紋章が刻まれた赤ん坊・・」
赤ん坊?ひょっとしてボクのことか?
え?チョッと待て。
確かに、さっきから手足をジタバタ動かしてるが、いっこう身体がいうこときいてくれない。この無力感、本当に赤ん坊になっちまったのか?
「さてとっ」
女がボクを軽々と抱き上げた。
「うわっ」
思わず悲鳴のような声がでてしまった。
女はかまわずボクを両腕にかかえ歩きだした。彼女からは甘い汗の匂いがした。柔らかい腕の感触が頬に心地よい。
「まさか・・ホントに予言どおり救世主が誕生するとは」
老人がボソボソ話す。
「【聖魔章典】の予言は、ずっと当たってきてるではないですか、お師さん」
「いや、紋章に関してだけは・・予言は常に外れてきた」
「まぁ・・そうですが・・」
「だから慄いている」
ドキドキしてきた。
二人の話の流れから、どう考えても救世主はボクのことだ。紋章とは痣のことだろう、多分。
【聖魔章典】。
いまハマってるゲームも【聖魔の紋章】だ。なにか関係あるのか?
老人と女は坂をグングン降りていく。
どうやらかなり山奥にいるようだった。周囲に鬱蒼と樹々が茂り、昼とは思えない暗さだ。
獣道としか思えない、そんな荒れた山道を老人は確かな足どりで飛ぶように下っていく。女も、ボクを抱えながら老人の背中を追っている。
「よし、着いた」
少し開けた場所にでた。
目と鼻の先に掘立て小屋のような粗末な家がある。レンガ作りの洋風な住居。
ココ日本じゃない?
そのことが気になった。
重そうな扉を女は開けた。ムッと強烈な匂いが中から漂ってくる。生き物の腐臭と香辛料がブレンドされたような、なんともヘンてこな匂い。
「遅かったな、ミラ」
額に湿布?を貼ったひげ面の男がこっちを見て言った。
「冒険者たちは?」
ミラと呼ばれた女が訊く。
「あのザマだ」
ひげ面は呟いた。
いたる所にランプが灯され、部屋はかなり明るい。
ケガ人が数名、呻いていた。手足を包帯でグルグル巻きにされた者、腹をおさえて呻く者、肩から流れる血を呆然と見ている者、まるで野戦病院だ。
「あの連中にいくら払ったの?」
ミラが訊く。
「8万・・グリーダ」
しかめっ面をしてひげ面が答えた。
「8万?!」
ミラは素っとん狂な声をだした。
「ぼったくりじゃないっ!」
「レベルAの冒険者だっていうもんだから・・」
おどおどした表情でひげ面が弁明した。
この男、強面のわりには気が弱そうだ。
「どうせC、いやひょっとしたらDかEなんじゃない?」
「いくらなんでもDってことは・・」
「強襲してきたのはアグライドよ。あんな量産型の低次元モンスターに歯が立たないなんて」
アグライド?
ボクは聞き逃さなかった、その耳慣れた名前を。
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