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初心

登場人物


ヌーザッカ 魔族の元帥

 滝つぼに落ちていく水は岩にぶち当たり、ものすごい音を立てていた。

 そんな鼓膜を直撃するような轟音も、座禅をくみしばらく瞑想を続けているうちに気にならなくなってきた。

 小鳥のさえずりや鹿の鳴き声、森のささやかな生きものたちの営みとたいして変わらない、ヌーザッカはそう思った。


〈またしても敗北〉

〈は、敗北・・というよりも〉

〈冒険者どもは今この瞬間も普通に息をしておる〉

〈・・・〉

〈そういう状況は敗北と定義できんか?〉

〈た、確かに・・〉

〈貴様を元帥にした私の目は曇っておったか・・〉

〈け、決してそ、そのような・・〉

〈そう。まだまだ判断が狂うような年齢ではない〉

〈閣下!〉

〈・・・〉

〈も、申し上げたいことが・・〉

〈言え〉

〈レーゲン渓谷にて、いま一度のた、鍛錬を・・〉

〈ほほう。初心に帰ると〉

〈はい。あの神聖な場所でいま一度、心身ともに鍛え直す機会を!〉

〈殊勝な心がけではある〉

〈畏れ入ります〉

〈ただし・・〉

〈ただし?・・〉

〈貴様も存じておると思うが──歴代魔族の元帥、同じ敵に二度も背を向けることはなかった〉

〈・・・〉

〈それを心しておけよ、ヌーザッカ元帥〉

〈ハハッツ〉


 魔族の元帥に連敗はないだと?

 ずいぶんハードル上げてくれるじゃないか。スグゥーエン閣下よ──ヌーザッカの心中穏やかじゃない。

 しかし、とは思う。

 スグゥーエンの言葉に嘘偽りはなかった。

 ヌーザッカの部隊に限らず、魔族軍団はここのところ対人間との闘いで連戦連勝だった。

 それが、あの村のパーティーに突如あの小僧が現れてから調子が狂ってきた。

 

 あの小僧──冷静に考えてみる──素材はとんでもないものを持っていた。

オカザキが命がけになるのも理解できる。

ただ、まだ粗削りで実戦でどう動いていいかわからないようだった。じきに潜在能力が開花し手に負えなくなるのは目にみえていた。


 どうすればいい?──ヌーザッカは自問自答する。

あの小僧より強大な魔法トリックを編みだせばいい──シンプルな結論だ。


「・・それがいちばん大変じゃ。シンプルな問題こそ、いちばん解決が難しい」

 

 独り呟き、ヌーザッカは立ちあがった。

 そのまま目を閉じる。

 意識を集中する──滝が一瞬に凍りつくところを。水の音がやみ、小鳥の声だけがかすかに聞こえてきた。

 

 ゆっくり目を開けるヌーザッカ。

 滝は、完全に凍っていた。ところどころが尖った氷柱となりぶら下がっている。


「この程度の魔法、ヤツが打ち破るのは時間の問題・・」


 そう考えると居ても立ってもいられない。

 だが、今はできることの精度をコツコツ上げていくしかないではないか?


 もう一度、滝の様子をみる。

 鯉?のような魚が何匹も氷に閉じこめられていた。


「コイツは・・悪いことしたな」


 軽く指を弾いた。

 魔法は解かれ、再びもの凄い量の水が滝つぼに落ちていく。 


 この戦いの果て、あの魚たちみたいな身動きとれないような憂き目に自分も遭うのでは──?

 慌てて首を振った。


「我こそ史上最年少で元帥になった男。人間どもの進撃をとめるは我において他になし!」


 ヌーザッカは奥歯をキリキリと噛みしめた。

「面白い!」「続きが気になる!」「更新がんばって!」

と、思ってくださったら、


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