休戦
登場人物
河島真司 この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマってる
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん/オカザキ 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌。ヌーザッカとは旧敵
ヴァイス ヒゲ面の男。強面に限らず気が弱い。
ヌーザッカ 魔族の元帥
「あ、アツっ!」
ものすごい衝撃を右肩に感じた。
ヌーザッカの銀色の肩パット、燃え移った炎が燻っている。慌てて左手でかき消した。
「し、シールドが機能しただと・・?バカな・・」
信じられん──小僧を見る。
「く、クソめ・・」
小僧はボンヤリした顔で突っ立っていた。
しきりに前髪を弄っている。
「こ、こいつめ・・」
いったいどういう魔法トリックを使ったのか?
シールドの強度が図抜けている?
いや、ただそれだけでマグマエネルギーを増幅させた火炎攻撃を防御できやしない。
それに──強いシールドであればあるほど反射作用がキツくなる。まわりもその煽りを喰ってただでは済まないはずだった。
「うぐぅくゅ・・」
呻き声が聞こえてきた。
オカザキが仰向けに倒れていた。
「ほほう・・そういうことか」
ヌーザッカは安堵した。
かつてのライバルが苦しそうにしてるから安堵したのではない。自分の攻撃がなぜ項を奏しなかったのか原因を悟ったからだ。
「お師さんっ!」
赤い髪をした若い女がオカザキに駆け寄る。
ヒゲ面の男も彼女に倣った。
小僧だけはその場を動かない。ボンヤリした顔つきはもうしていない、悲壮な面もちでヌーザッカを見ている。
「ふふ、老人よ。お前の言葉は嘘ではなかったな」
オカザキから応答はない。
「救世主のために命をはる、と」
彼は弟子どもに介抱されながら、わずかに首をもたげこっちを見た。オカザキの表情は苦渋に満ちていた。
「この坊やはまだ魔力のコントロールが効かない・・オカザキ、貴様はそれを見切っていた」
ヌーザッカは言う。
「反射作用を和らげる、火炎を自分の体内に取り込む魔法を使ったのだろう。バカ者と嘲るべきか・・。いや、みあげたガッツと賞賛すべきだろう・・」
そんな言葉を吐いている自分自身にヌーザッカは驚いていた。この機会になんとしても人間どもを叩くべし、そう心にきめて出撃したはずなのに・・相手の健闘を讃えているのだ。
「が、ガラにもないことを・・」と虫の息のオカザキ。
彼は女とヒゲ面に抱えられ、立ちあがった。が、よっぽどダメージが酷いようですぐ地面に膝をついた。
「お、お師さんっ!」
弟子ども三人は揃って声をあげた。
女にいたってはもう涙を浮かべている。
「お前ら・・今日はもう退け」
ヌーザッカが声をかけた。
「え?」
若い女は驚いていた。彼女の赤い髪が揺れている。
「このままやりあえば、この坊やがとんでもない魔法を繰りだすに決まってる。本人にその気がなくてもな」
ヌーザッカは続ける、「オカザキみたいに坊やの爆弾を抱えて死ねるか?その覚悟はあるか?」
みんな黙ってしまった。
女が歩み寄ってくる。
「休戦ってこと?」
彼女は猜疑心に凝り固まっているようだ。魔族というものよっぽど信用されてないらしい、ヌーザッカは苦笑した。
女に答える代わりに、マントを翻した。
「魔族と人間のあいだに休戦など、ない。だが──」
そう宣言してヌーザッカは宙に浮いた。
「──いまは退く。追う、追わないはお前らが決めることだ」
飛翔魔法を使っているため、人間どもを見おろしながら話す。
「また、戦場で」
ヌーザッカはそのまま飛び立っていった。
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