舌戦
登場人物
河島真司 この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマってる
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん/オカザキ 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌。ヌーザッカとは旧敵
ヴァイス ヒゲ面の男。強面に限らず気が弱い。
ヌーザッカ 魔族の元帥
「口だけは相変わらず達者だな、老いぼれっ」
目の前の巨漢はそう叫ぶ。
「大口野郎はキサマのことじゃ、ヌーザッカ。昔から、身体も口もムダにデカい」
二人の罵倒合戦をジッと見ていた。
不安で仕方ない。
さっきヘビのモンスターを退治したとき、身体が勝手に動いてくれた。ミラやヴァイスとともに積んだトレーニングの成果ではない。
得体の知れないボクの潜在能力──その力が窮地を救ってくれた?そのことを単純に喜ぶべきか?
馬は騎手(乗り手)を選ぶというけど、制御できない名馬にまたがってるような──どうも足が地につかない感覚が拭えない。
ヌーザッカと呼ばれた大男は地面に手をついていた。
「じ、地面のエネルギーを吸収してるのね」
いつの間にかミラが隣りにいた。
「ミラっ!」
ボクの声が必要以上に大きい。
「アグライドはもう片付けたの?」
声が弾む。若い女のコだから、そういう理由もある。だけど、なんだかんだ彼女は頼りになる。
「ヤツのことだ、地下のマグマを使うつもりじゃないか?」
ヴァイスがすぐ傍で言った。
我らが冒険者パーティの揃い踏みだ。
≪グゥオングゥオン≫
低いが厚みのある音がこだまする、工場見学に行ったときこんな音を聞いた記憶がある。
「水、火、空気、大地・・それぞれ〈気〉オーラがある。その気をとらえ自在に操るのが優れた冒険者たる証し」
お師さんことオカザキが滔々と語り始めた。
「ヌーザッカは四つのエレメントを高い次元で扱える魔族だ」
「ほっといていいんっすか?」
ヴァイスが心配そうな顔で尋ねた。
「そ、そうよね」
ミラがヴァイスに同調した。
「マグマエネルギーを身体に蓄えてる最中でしょ。充填し終える前に攻撃しちゃうってのは?」
「ミラ」
たしなめるようなお師さんの口調。
「そんな卑怯な手を使ってはいかん」
お師さんは前方を見つめたままだ。
「我々は人類のために闘ってる。ただ勝てばいい、そんなことでは獣と変わらん。後世のためにならん」そう答えた。
「で、でも・・」
ミラは目が吊りあがってる。不満そうだ。
「だけど、お師匠──」
ヴァイスはヒゲを弄りながら質問する、「──ここで皆がやられちまったら人類救済どころではないんじゃ・・」
「たわけっ!」
お師さんは声を荒げた。
が、すぐに神妙な顏をしてヴァイスに説く。
「あのヌーザッカを倒せたとして、魔族全軍からすれば蚊に刺されたようなモンじゃ」
「まあ・・確かに。あの大男レベルの魔族ならワンサカいる・・」
「我々と魔族、それくらい力の差が開いてしまった」
ある晩、夕食後にお師さんが寂しそうに話してたのを思いだした──賞金稼ぎの冒険者に、外部の人間に魔族との闘いを任せきりだった、自前の戦士を育てるのを怠った、それが現在の劣勢につながってる、と──。
「あやつレベルの魔族、正々堂々、討ち伏せられなくてなんの救世主ぞ。もし──」
お師さんが言葉につまる。
「もし?」
なにごともせっかちなミラが慌てて訊きかえしてきた。「──ここで正面きって敗れるようなら救世主伝説なんぞただの与太話じゃ」
お師さんの口調、静かだが決然としていた。
「四人そろって降伏の相談か?」
ヌーザッカの口ぶり、明らかに小馬鹿にしていた。
「あいにく、敵の降伏を認めるほど慈悲深くないもんで」
ヌーザッカはマントを翻した。
「特にオカザキ、キサマーはなっ!」
そう叫んで腕を水平に振る、空手チョップみたいなアクション。
「ワッ!」
炎の壁が一気に押しよせてきた。
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