旧敵
登場人物
河島真司/ルヴァンガ この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマる。人間VS魔族の世界に転生し救世主と見做され、魔族との戦いに挑む
ヌーザッカ 魔族の元帥
お師さん/ジェリコ・フォン・オカザキ かつて高名な冒険者だった?ヌーザッカとは因縁がある。仙人のような風貌。
「ほほう・・」
ヌーザッカは思わず微笑んだ。
正面にはヒョロヒョロ痩せ、ボサボサ髪の見るからに頼りげない若造、一心不乱に突っこんでくる。
「この私と一騎打ちとはノウ・・」
だが、これまでの若造の戦歴、侮ってはならない。
気を引きしめた。
「むむ?」
彼の背後、小柄な老爺の姿が見え隠れしていた。
見知った顔だった。
「魔族キラーことジェリコ・フォン・オカザキでは?」
オカザキは白髪を振り乱し、必死の形相だ。
「老いぼれめが。ムダに長生きしよるわ!」
ヌーザッカの声が弾む。
あの男とは若い頃からバトルをくり返してきた。互いにスキルを競うような戦いの果て、結局、ふたりの勝敗はつかなかった。
「オカザキよ。小僧のお守りで余生を送るつもりか?」
ヌーザッカは拳を握った。
「トゥああツ!」
握った拳をパッと開くとヘビの化身ゴングールが無数に現れた。絡まりながら宙を飛ぶゴングールの大群が若造の頭上に殺到していく。
「ふぁっ!」
悲鳴?をあげる若造。
彼は手をクロスさせ、念を集中させていた。
「そうだ、そうやって魔法シールドを張れ、青二才め」
ヌーザッカはほくそ笑んだ。
上位者どうしの魔法バトルではとりあえず相手の魔法を受けてみるのが定石だ。
シールドは張らない。
下手にシールドを張ると魔力の限界値を敵に見極められてしまう。
≪ビシッツビシッ!≫
紅い閃光、そして凄まじい音。
ヌーザッカは思わずのけぞる。
「な、なんと?!」
すべてのゴングールがあっという間に砕け散った。
「こ、こいつめ・・」
ヌーザッカはそれだけ言うのが精いっぱいだった。手っ取り早く敵の力量を図るには獣の化身を使うのがいちばんだ。
それにしても・・こんなに容易くゴングールを撃退した冒険者はかつてない。あの青二才の張ったシールドの威力──防御シールドなのにこっちの領域まで浸食してくる勢いだった。
「ふははは。肝を冷やしてるのではないか木偶の坊」
聞き覚えのあるしわがれ声だ。
「ふ、オカザキめ」
かつての好敵手の声色になぜか安堵してしまうヌーザッカ。
「その小僧に人生を賭けるつもりか?」
そう言ってヌーザッカはだらしない髪型をした正面の若造をみた。
戦場に風が吹き始めた。
小僧の前髪がゆらゆら揺れていた。とうの小僧はキョトンとした顔をしてこっちを見ている。
「ワシの人生?」
オカザキが自嘲的な笑みを浮かべた。
「そんなちっぽけなモンではないわ」
「ほう・・ではなんだ。村の存亡か?」
「小さい小さい」
オカザキはなおも笑う。
「そんな考えだから、それだけ力量があっても貴様は元帥どまりなのだ」
ヌーザッカはカチンときた。
常々、彼自身がそう思い不満を抱えていた。オカザキの言葉は図星だった。
オカザキは続ける、「人間界のすべて、いや、この世のすべてを賭けたのだ。このルヴァンガにっ」
オカザキが咆哮した。
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