発端
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「ヘンだなぁ」
レベルDの魔剣でモンスター・アグライドをブッ刺していた。ふだんならもう倒して経験値60ポイントを得てるはずだった。なのにアグライドは死なない。醜悪な巨体を揺すってまだ立ち向かってくる。
RPG【聖魔の紋章】はもうかれこれ二年近くやっている。が、まだSTAGE6までしか進めていない。6までなら誰もが容易く攻略できるソフトだが、STAGE7から極端に難しくなる。そのせいかあまり売れ行きが良くない。
そんなゲームをずっとやってる主な理由は二つ。
雑魚モンスター・アグライドがいじめっ子横田にソックリで倒し甲斐があるということ。
それともう一つ、このゲーム終盤に登場するルヴァンガという剣士キャラをなんとしても見てみたい、そんな欲求だった。
剣士ルヴァンガはチート能力を存分に発揮し、プレイヤーを助けてくれるらしい。
らしい、というのはルヴァンガが出てくるSTAGEまでクリアした経験がない。ネットの画像検索でしかその雄姿を見れてないのだ。
そしてこのルヴァンガ、ゲームキャラにしては不思議なのだが、首筋にべっとり青い痣がある。北海道のカタチそっくりのかなり目立つ痣が。
〈まさにそれこそ聖魔の紋章〉とか〈製作者のただのミス〉とかネット上でいろんな噂があるが、真相は不明だった。ゲーム会社からも痣について特に説明がない。
そうなのだ、偶然にもボクの首筋にもまったく同じような痣がある。そのせいかこのゲームに没頭してると、自分が救世主ルヴァンガにでもなったように高揚してくる。
なんとしても【聖魔の紋章】を全STAGEクリアする!
最終ステージまで到達は無理かもしれない、でも、せめてルヴァンガにお目にかかれるまでは──。
「真司!ゴハンっ!」
母ちゃん氏の怒鳴り声が聞こえてきた。
「はいはい」
コントローラーを放りだし階段をドカドカ降りる。
「早く食べちゃいなさい」
ゲームばかりしてる息子に不満タラタラだ。いつものことだけど。
「目玉焼きと納豆だけか・・」
「しょうがないでしょ。アンタの父ちゃん、稼ぎが悪いポンコツリーマンなんだから」
口悪い主婦だなぁ・・。ま、コレもいつものことか。
テレビを点けた。
≪成田空港では引き続き原因究明のための調査を続けるとのことです≫
女性アナが深刻な顔をして原稿を読む。
「また電波障害?」
スマホやPCがネットにつながらない、最近そんなニュースが頻発していた。
「管制塔が機能不全なんだって。午前中のニュースでもやってた」
「ウチは問題ないどなぁ」
「電磁波の影響?そんなことでと大丈夫かねぇ。なんでもネットの世の中なのに」
「画面も鮮明だし、キャラの動きもスムーズだし」
そんな騒ぎなさんな、この時はまだ他人事だった。
母ちゃん氏がこっちを見ている。視線が怖い。
「学校から帰って即ゲーム?」
母ちゃん氏の目つきがより鋭くなった。
余計なコト言っちまったか?藪ヘビだこりゃ。
「ゲームばかり・・ゲ、ゲぇ・・ム、ム、うぅぅ・・」
ん?母ちゃん氏の様子が明らかにヘンだ。
「おい、どうした?」
「ぶぁ・・ぶぁか・・り・・しぃてシテして・・」
「大丈夫かっ!?」
彼女の丸い顏が歪みはじめた。
「か、母ちゃん・・」
目鼻がグニョグニョ、不気味に動きだす。まるで福笑いだ。
「る、るぅ・・る・とととと。るとるとるとるとると」
イカれたCDみたいに何度も同じことを話す。いや、話すというよりたまった空気を吐きだしてる感じだ。
「・・や、ヤバい」
スマホを手にとる。
とりあえず119番、救急車だ。
「ン?」
スマホの画面には圏外の文字が・・。
「あ、慌てるな」
そう、ウチにはまだ固定電話がある。
ムダだから停めちゃえ、ずっと文句言っていたが、まさかこんな時に役に立つとは。
必死の思いでコードレスの子機をつかんだ。
「うっ・・」
視界に靄がかかりだした。
「な、なんだよ・・い、一体?」
力が抜けていく。
この感覚はなんだ?このまま気絶するのか?
いつの間にか片膝をついていた。
必死の思いで顔をあげる。自分の身体とは思えないくらい重い頭部。
母ちゃん氏の姿が見えない、というより世界が全面的にグレィ一色になっていた。
いや、違う。
明かりが、わずかに白く見える部分があった。点けたままのテレビだ。
≪成田空港の発着便、すでに通常運行を回復したようです≫
女性アナウンサーがにこやかにほほ笑んでいた。
「わ、笑ってる場合じゃ・・ねぇぞ・・」
そのままボクは失神した。
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