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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第四章 人類守護奮闘編
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光と闇

遅くなりました! 楽しんでいただけると幸いです!

 ゼローグ、ヴェルノートとサルネリエの戦いが始まってからというもの、それはもうすさまじいの一言である。

 すでに天使が拠点としていた建物は見るも無残なただの残骸と化している。そして今は、


「はぁ、はぁ、はぁ、さすがに厳しいな。私の聖技と魔法がたまたま広範囲戦に向いていたから持ちこたえているだけのようだ」

「おう、分かってんじゃねえか。そうだな、俺もお前のそのヤバそうな技と魔法のせいで迂闊に踏み込めねえからな」

「我とも能力が被っているのもあるだろうな」


 そう、彼らの言葉は実際正しい。

 どれだけ強かろうと、彼らほどに実力が拮抗してくると、単純な力技では押し通せなくなってくる。


「けどまあ、そろそろあれだろ? キツイだろ?」

「ふん、まだまだ!」

「強がりは何も生まんぞ」

「はッ! 二対一でかかってきておいて随分と偉そうだな! 一対一で戦う度胸も無い者が偉そうに説教など垂れるでないわ!」

「はぁ、まあいい。では死ね」


 そういうと、ゼローグは気が付くとサルネリエの目の前にいた。何も反応できなかった。それもそうだ。何故ならゼローグは今までしていなかった戦い方をここにきて披露したのだから。

 人々はそれをこう呼ぶ、”手加減”と。そう、つまりゼローグは全くもって本気ではなかったのだ。

 ちなみにヴェルノートもそうだ。何せ彼らは七つの大罪の中でもヴォルドールに次いで最強クラスの強さなのだから。

 ただまあ、それもあくまで”最強クラス”どまりだ。つまり最強ではない。厳然たる差があるわけではない。同格だから。

 でもやはりヴォルドールは頭一つ抜けているのだ。だがそれを鑑みてもゼローグとヴェルノートは強い。残念ながら七大天使の中では中堅クラスのサルネリエでは太刀打ちできなかったのだ。


 しかしサルネリエは諦めなかった。必死に態勢をずらしてゼローグの渾身の拳の一撃を躱すことに成功した。


「ほう、今のをしのぐか。なかなか悪くないではないか」

「これでも七大天使に数えられているのだ。簡単に倒せると思われてはたまらんな」

「そうか、だが一つ忘れていることはないか?」

「何?……まさかッ!」


 気づいたときには遅かった。サルネリエは咄嗟に結界魔法を張ったので致命傷は避けたものの、イメージが完全に固まっていない状況で不意打ちを食らったので結界の効果が弱く、ヴェルノートの雷の魔力で強化した剣で右上半身をゴッソリ持っていかれてしまった。


「グホッ! き、貴様ぁッ!」

「おっと、戦闘中に気い抜いてる奴が悪いんだぜ? そもそもこの俺様がいるってのに気を抜くってどういう了見よ? お前なめてんのか? あぁ?」


 ヴェルノートが滅茶苦茶キレてしまっている。そりゃそうだ。もともとプライドの高い男だ、戦闘中に自分だけ注意の外に外されたとなれば、なめられたと判断してもおかしくはない。


「おのれッ!……ここまでか……」


 そしてキレたまま最後だとばかりにやり場のない怒りを込めるかのようにヴェルノートが剣を振りかざした。

 しかもなぜかさっきよりも込められている魔力の量がケタ違いだ。その証拠に剣の周囲数メートルに他の生物が近づけばたちまち消し炭になってしまうほどの熱量を持つ雷が自分を見ろとばかりに激しくギラついている。

 バシバシと音を立てながらその剣がサルネリエの首に向かって降りていく。


 その時、


 ズシャッ! ボト、コロコロ。


「は?」


 ヴェルノートは意味が分からなかった。なぜか自分の右ひじから先がなくなっていたのだから。

 だがその理由はすぐにわかった。


「ほう、やるではないか」


 ゼローグも関心気味である。


「サルネリエ様! お気をしっかり! すぐに魔力を全力で使って再生してください!」

「お、お前たちは……」


 現れたのは今拠点内に残っていて他の悪魔たちを相手にしていた天使長たちだ。サルネリエの危機を感じ取って他の上天たちに指揮を代わってもらってここまで飛んできたのだ。


「俺の腕を切り飛ばすたぁなぁ。面白れぇ奴じゃねえか。そこの聖天将様でもできなかったってのに」

「ふん、嫌味か? そんな誉め言葉、全くもって嬉しくないわ! サルネリエ様が貴様に有効打を入れられなかったのは貴様らが油断していなかったというだけ! 我らは貴様の油断しているところを狙ったにすぎん!」

「まあな。むしろ今のでつけあがってたらキレてたわ、俺」


 ヴェルノートの目が獲物を狙うそれに代わっていた。標的をサルネリエから天使長たちに移したらしい。


「おい、ゼローグ!」

「言わずともわかっておる。この聖天将の後始末は任せろ。天使長も何匹か集まれば貴様を楽しませるくらいはできよう」

「やっぱ分かってるねえ! じゃあ、こいつらはいただくぜ!」


 そういうとヴェルノートは天使長たちに文句も言わせず場所を移して戦い始めた。

 天使長たちは抵抗したが、ヴェルノートの威圧付きの『黙ってろ』で、仕方なく時間稼ぎをするという選択肢をとる。

 これでサルネリエがゼローグの首をとってきてくれると信じて。


「貴様はずいぶんと部下に慕われているようだな。まさか天使長ごときが魔将帝に抵抗してくるとはな」

「ふんッ! 我らの同胞は貴様らとは志が違うのだ!」

「ほう?」


 サルネリエが志云々の言葉を発した瞬間周りの魔力波動の圧が急激に増した。それは流石のサルネリエでも身構えてしまうほどの……。

 必要なかったのだ、今の言葉が。悪魔たちにとっても上官を守るために部下が命を懸けるほどの志を持つことは普通にあることだ。そして実際にゼローグは今までに何度もそうして散っていった同胞たちを見てきているし今まさに自分に仕えてくれている者たちもその類だ。

 その上、アリシア亡き今も、忠実に上官の為に目的を果たそうと従軍する健気な者たちも見てきたばかりだった。

 だからこそ余計に気分を害したのだ。サルネリエのくだらない発言には。


「貴様は勘違いしているようだが、貴様ら羽虫どもに大義名分など存在しない。そして上官を守るため、部下が命を懸けるなんてことは我々の一族でもあることだ。あまり図に乗るなよ? 虫けらが」


 ゼローグはそういうと思いっきり魔闘覇をまき散らした。ものすごい濃度だ。思わずサルネリエでさえ膝を付きそうになったほどだ。

 それにサルネリエは忘れている。自分を慕う配下たちは戦いに出ているのに、ゼローグの配下たちは彼の後ろで静かに控えていることに。

 だが今のサルネリエには関係ないようだ。事実、

 


「たわけが! 貴様らが仲間愛のようなものを持っているだと? 笑わせるな!」


 そういうとサルネリエも全力で天聖気を放った。

 これにはゼローグも驚いたようだ。


「ほう? 中々強い覇気だな」


 だが、


「だが、所詮”中々”だ。”凄く”はない」


 その後ゼローグは一気にサルネリエへと肉薄した。


「舐めるでないわ! 『光天覇弾(こうてんはだん)』!」


 サルネリエは自分の目の前に光属性と光の力を扱う聖技と風の魔法を混ぜ合わせた、魔法に換算すると帝王級の威力の攻撃を放った。

 構造は単純。光属性と聖技、風属性を圧縮して砲弾のようにして前面に押し出す魔法だ。


 対してゼローグは、


「ふんッ。他愛ない。『深淵(しんえん)から()でし暴食王(ぼうしょくおう)』!」


 ゼローグの呪念、『貪る暗黒』の力をふんだんに使い、さらに風属性を使って吸引力を再現。

 アレンの『万有引力』に似た力を持つ、だがそれ以上に強力な荘厳な鎧とマントを着た全身から吸引力を放つ人物が顕現した。

 魔法に換算すると……災厄級。

 もはやサルネリエに勝ち目など無いに等しい。


「そんな……バカな!」


 自分の魔法を打ち消しながら自分に接近してくる魔法を眺めてサルネリエはそう呟く。趨勢は決した。天使側の完全敗北である。

 その瞬間が決定した後、サルネリエは深く、暗い暗黒の闇に飲み込まれていった。


 ちょうどその魔法が発動し終わったタイミングで、


「終わったのか? 早えじゃねえか」

「ふんッ、当たり前だ」


 ヴェルノートも終わっていたようだ。


「これで何とか振出しに戻ったな」

「ああ、だがアリシアの抜けた穴はデカすぎる。早急にもう一体ほどは狩っておかなくてはな」

「ああ、そうだな」


 二人はさっと手早く連れてきた手勢を集め、撤収したのだった。


 この戦いが後の戦いに大きな影響を与えることになる。



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