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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第四章 人類守護奮闘編
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暴食のゼローグと傲慢のヴェルノート

 アレンが辺境伯位への陞爵の儀を終えてから数週間後。

 旧アフトクラトリア帝国・帝都から出てくる人影が二つ、否、ひとらしき影が二つ。


「全く、人間の竜魔導師か。やってくれたものだ」

「どうでもいいだろうそんなこと。アリシアはなんだかんだで魔将帝にまで上り詰めたが、結局のところあいつは敵の連携とかを崩したりするのが本業だろうがよ。敵を寝返らせたりよう」

「何が言いたい?」

「要は戦闘向きじゃなかったってことだろ。強いは強いがお前や俺ほどじゃねえ。なのに油断して竜魔導師なんかと戦うからこうなるんだ」

「貴様には同胞を思う気持ちという物がないのか?」

「俺は自分の役割を理解してる。だが奴はそれができなかった。結果一族に甚大な損害を与えることとなった。残念ではあるが、心から同情するわけにゃいかねえな」


 我は頭を抱える思いだった。そうだ、こいつは昔からこうだった。傲慢で高飛車でいつも他を下に見ている。

 まあ、それでも戦いに関しては正直者だ。ヴォルドールには勝てないと自分から言っていた。我にも、いい勝負ができるだろうし簡単には負けないだろうが勝てもしないだろうと言っていた。

 だからこそだ。こいつの言っていることは正しい。己の力量をしっかりと見極めるのは大事だ。こいつはそれが完璧にできる。そして彼女はできなかった。それが今ここに立っているかいないかの違いだろう。こいつの実力が本物で言っていることもド正論だからこそ反論がしにくい。

 だが分かっているのだ。今我は感情的になっているだけだと。

 だからこそ、こいつの言っていることがひどく冷たく感じてしまうのだ。


「まあでも、お前は俺と違って極端すぎるほど仲間思いだからな。そうなるのは仕方ねえよ。俺はそこまで甘くねえってだけだ。お前の考えを否定なんざしねえよ。だが今は仕事中だ。あいつら羽虫は鬱陶しいボケどもだが、強い。だからよう今だけは仕事に集中しやがれ」

「……全く。貴様には敵わんな」


 そう言葉を交わした後、彼らはとある方面、ラグナス王国の方面へ移動していく。

 それはつまり天使たちの本拠地。


 そう、彼らはまず天使たちに期せずして与えてしまった優勢の立場をひっくり返してやろうと二人、最低でも一人の七大天使・聖天将の討伐を任務として行動している。そしていつの間に合流したのやら彼らの腹心やアリシアの腹心、そしてそれ以外にも大勢の悪魔たちが集結していた。



「ふん。貴様らも来たのか」

「大好きなお姉ちゃんの尻ぬぐいか?」


 アリシアの部下にゼローグが声をかける。そしてヴェルノートは彼らを茶化す。別に本当の兄妹という訳ではない。だがそれほどまでに彼女に忠誠を誓ってきて二つ名を与えられるほどの部下だ。

 だからこそ何かしなくては気が済まない。彼女の目的でもあり、そして一族の目的でもある天使の殲滅を成し遂げるために。


「当然でございます。あの方は我々のすべてです。本当ならば今すぐにでも刺し違えてでもあのクソガキを仕留めに行きたいのですが……」


 部下の代表がそう答える。だがヴェルノートの答えは辛口の厳しいものだった。


「やめとけ、アリシアはどっちかっつうと支援系ではあったがそれでもれっきとした魔将帝だったんだ。それを倒したとなるとお前らでは相手にならんだろうよ」

「それは! いえ、そうですね。それこそ無駄死にすればあの世であの方に再び殺されそうです」

「はは! 違ぇねえ! だからこそ弔いの意味も込めて俺たちの本当の目的を果たしてやろうじゃなええの」

「そうですね!」


 我は思う。こいつは発言がいちいち傲慢で他者を見下したものではあるが、根っからのワルという訳ではない。

 なので、


(むしろこういう時はこいつの方が上に立つのに向いているな。言い方を多少考えて相手に伝えてやれば誤解も少なくなるだろうに。全く)



 そうして彼らは意気揚々と隣国へ向かったのだった。




 


 時を同じくして、ラグナス王国にいる天使たちはと言えば一族全体に激震が走った。


「本当なのか!? 魔将帝二人がこちらに向かっているだと? その二人以外の規模は? 配下はどれくらいだ!」

「お、およそ500、です……し、しかも」

「しかも? なんだ! ハキハキ答えろ!」

「は、はい! 悪魔の部隊500名ですがそのすべてが上位悪魔以上です!」

「な!?」


 天軍大隊長であるヴェスカルは絶句した。彼は天軍の中でも大隊長に上り詰めるほどの猛者だ。階級は天使長。

 だが今報告に上がった規模にはさすがのヴェスカルでも戦慄せざるを得ない。

 故にこう思う。


(奴ら、この間の魔将帝討ち死にの件を受けてついに本気で動き出したのか!? こちらの密偵での報告によると相手は人間の竜魔導師だったらしいが、そ奴への復讐にまず向かわないところを見る限りまず間違いない! まずい! 今は聖天将様は一人しかおられないというのに……他の方はそれぞれ好き勝手に行動されていて今この場にはいない)


 まさに絶体絶命とはこのことだ。と、そんなとき、


「狼狽えるな!」


 大きく、そして響く声が聞こえてきた。その声の主とは、


「あ、サルネリエ様!」

「おお、ヴェスカル大隊長。いつも真面目に働いてくれて感謝するぞ」

「い、いえ! もったいなきお言葉でございます」

「ふふ。それよりも、だ」

「はい」

「数は二つ、か。全く我はいつも貧乏くじだな」

「は、ははは……」


 ヴェスカルは何も言えなかった。事実この風嵐のサルネリエは多くの魔将帝に対し、一人で戦わねばならない状況を経験している。

 貧乏くじと思っても仕方ない。


「とにかく奴らはなんとかしよう。だがもし万が一のことがあればヴェスカル大隊長……貴殿にも覚悟を決めてもらうぞ?」

「……!!」


 ヴェスカルは心臓が飛び出るほどの思いだった。いつもなら自分より格上の悪魔に対しては自分より格上の天使が相手をしてくれていた。

 だが今回その格上は一人しかいない。当然次に階級が高いのは自分とあと数名くらいだ。その自分たちが今から起こるだろう戦いの中心になっていくのは火を見るよりも明らかであろう。

 覚悟を決めるときであった。


「も、勿論でございます! このヴェスカル、身命を賭してでも戦い抜いて見せましょう!」

「うむ、良く申した!」




 そうして二人が笑いあったその時、



 ドゴーンッ!!


「来たか」

「そのようですね……」


 二人は主語無くして話しているが、それでもお互いの言いたいことは伝わっている。


 そして、



「よう、久しぶりだな! アホ天使!」

「誰がアホ天使だ! 無礼者!」

「ブフッ! あ、いやすまん。つい、な」

「お? お前久しぶりに笑ったんじゃねえ?」

「ふん、今のはなかなか良かったと言っておこう」

「素直じゃねえな」

「やかましい」


 完全にサルネリエはスルーされている。なんとも言えない気分ではあるがサルネリエは自分の役目を全うしようと今のスルーを気にしない方向で話を進める。


「いきなり派手に登場したが、何用かな?」

「何用って?」

「そんなの決まっている。どうやら聖天将は貴様しかいないようだが」

「つまり?」

「「お前らを倒しに来たんだよ!!」」

「面白い、やれるものならやって見せろ!」



 ゼローグとヴェルノート、そしてサルネリエはお互い叫びあった後、一気に肉薄しぶつかり合う。

 激しい覇気と拳のぶつかり合いで辺りは一瞬で更地になった。



 今、天使と悪魔の激闘の幕が開かれた。


 

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