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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第四章 人類守護奮闘編
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陞爵

 陛下やバルツァー公爵との打ち合わせが終わって翌日、僕は謁見の間に向かうための準備と今日の式典でするであろう新しい作法の見直しをしていた。


「今までと同じで現在持ってる勲章や肩章は全て取り付けて、礼服も最上級の物。ここまでは変わらないな。それから今回僕は新しく制作された羽織を渡されるんだよね?」

「そうですね。それを羽織って謁見に臨むとのことです」

「そっかあ」


 今回新しく作られた勲章は文官として功績を挙げた者、武官として功績を挙げた者、それぞれで別れているみたいだ。

 そして文官として功績を挙げた者はまるで前世の軍帽かと思うような帽子、そして武官として功績を挙げた者にはこれまた前世でも似たようなものがあったが、片側の肩にだけ掛けるマントだ。

 こちらの世界では羽織と呼ばれているらしい。軍帽は制帽と呼ばれているようだ。


 よくもまあ、こんな短期間で仕上げていたものだ。マントや帽子、新しい作法に関しては前々からプランが進んでいたのだろう。

 ものすごく手際がいい。


「よし、新しい作法も確認終わり! それじゃあ、行こうか!」

「かしこまりました」


 

 そうしてしっかりと確認を済ませて僕らは王城に着いた。するとそこでは僕の派閥に属している貴族が出迎えてくれた。

 見たこともない顔の人も混じっているけど彼らはおそらくこれから僕の陣営に加わりたいという人たちだろう。

 今までにも何人かいてその人たちも今は派閥に属している。


 それにしてもいつも思うんだけど……いつの間に僕の派閥なんて作ってたのさ。今更だけどね?

 それでもまあ、できてしまったものはしょうがないから彼らを責めるようなことはしないけどさ。

 派閥を持たないシュナイダー伯爵も苦笑してたよ。


『貴方ならいつかできるだろうとは思っていましたが、まさかこんなに早く、しかも秘密裏に作られているとは。ダメですよ、貴族は一瞬でも気を抜いちゃ。即行で既成事実を作り上げられてしまいますからね。まあ、僕も貴方の派閥なら全くかまいませんけど。だから静観していたのもありますよ?』


 と言われてしまった。しかも気づいてたんかい! なら言ってくれても良かったよね? まあ、気づかなかった僕が悪いんだけどさ。

 それでも僕は新興貴族なんだよ。そんなのいちいち気にしてられないよ。

 そんな愚痴をこぼすと、


『まあ、そのあたりも計算に入れていたのでしょう。貴方は自領のことで精いっぱい、故に派閥づくりなんて些事にかかわってこないだろうと』


 とシュナイダー伯爵は言っていた。

 貴族ってやっぱ怖いな。


『まあ、それでも何度も言うようですが、貴方の派閥だから静観していたのです。これがベーレンドルフ家あたりの派閥づくりなら全力で叩き潰していましたよ。私の領内での経済活動、商売活動を全面厳禁にして、食料提供も完全に停止して即刻その勢力拡大をやめなさいと、暗に伝えて脅します。これ、貴方だからお教えしたんですよ? 口外はダメですよ?」


 と、シュナイダー伯爵は素晴らしい笑顔で言ってきた。まあ、目は全く笑ってなかったが……。

 貴族って怖え……僕も貴族だけど。

 でもそんなことをしても大丈夫なのか聞くと、


『全く問題ありませんね。私の領地は辺境、たいして彼の領地は都市部。となると彼の領地は都市開発ですでに多くの天然資源を消耗していますが、私の領地およびその周辺地域はまだそこまで都市や街があるわけではないですからね。こちらの方が天然資源の確保量は圧倒的ですよ。故に衝突して武力闘争案件になっても生産能力はこちらが圧倒しているので話にもなりません。それに彼の領地の周辺の貴族は食料確保をほとんど私に頼っていますからね。この意味貴方ならお分かりでしょう?』


 とのことだ。やはりこの人は大物だ! 仲間でよかったと心底思った。

 それに質問の答えも、勿論分かっておりますとも、つまりその周辺貴族にベーレンドルフ公爵領への食糧援助を停止しろと一言いえばたちまち公爵領は孤立無援状態。

 長期戦になれば向こうがじり貧になって終わりだ。いやマジでシュナイダー伯爵の影響力がエゲツなすぎて本当にやばい。

 この人の力もとっくに伯爵の域を超えてると思うけど? 侯爵だとか辺境伯だとか言われても僕は驚かないよ。



 とまあ、派閥のことで疑問に思ってシュナイダー卿に聞いたらその真相だけでなく貴族の恐ろしい部分まであれやこれやと聞く羽目になってしまった。

 とほほ……。


 そうして改めて貴族の世界に戦々恐々としながら城門をくぐると、


「お待ちしておりました。ラント伯爵」

「今日もありがとね、クリストフさん」

「勿体なきお言葉、感謝いたします。では、こちらへ」

「うん」


 そうして歩くこと数分、謁見の間に着いた。


「扉が開き次第、ご入場くださいませ」

「うん、ここまでありがとね」

「では、わたくしはこれで」


 そういってクリストフさんは下がっていった。


 その後、5分ほどして扉が開いた。


「アレン・ベッケラート・ラント伯爵のご入場です!」


 盛大な拍手とともに僕は謁見の間に迎えられた。それにしてもものすごい人の数だ。

 おそらく彼らは全員貴族だ。普通の披露宴やパーティーならば豪商人なども含まれるんだろうけど、貴族の陞爵の儀は貴族のみで執り行われる。だけど子爵位への陞爵の時よりも随分と人が多い。

 これはおそらく今までは言ってしまえば僕はただの成り上がり貴族だ。だけど今では国の中でも結構名の売れた貴族となった。

 故に興味の湧いた貴族が見に来たのだろう。素直に嬉しいことだ。どれだけ打算的でも貴族同士のつながりは大事なものだ。

 故に僕のことを認めてくれたのであろう貴族が増えることは喜ばしいことだ。


 そして僕はレッドカーペットをゆっくりと歩いていく。ここまではいつもと同じだ。この後からが少し変わる。

 陛下との距離が中間あたりにまで来たときにわきに控えていた一人の使用人が僕の左肩に綺麗な蒼色のマントをかけてくる。

 そのマントには金色の神々しさと雄々しさを兼ね備えた竜が二体向かい合うように刺繍(ししゅう)されている。

 そしてそのマントを羽織り終えると使用人は下がっていく。僕はそのまま陛下の御前まで歩いていき、そこで利き手を胸の前に添え、深く一礼する。そして跪いた。


 そして陛下が口を開く。


「よくぞ参った、ラント卿」

「はは、陛下もご健勝そうで何よりでございます」

「うむ、ではさっそくだが本題に入るとしよう」


 そういて陛下はバルツァー公爵に向き直った。

 そしてバルツァー公爵が陛下に一礼した後、一歩前に進み出た。それから今回の謁見の理由と内容を細かく話していく。

 僕らは内容を把握しているが、ここに集められた貴族たちは状況を把握していないからだ。


「……という訳なので上位と思われる天使と悪魔一体ずつ、そして敵の首魁と思われる伝承に残る大悪魔、魔将帝・色欲のアリシア討伐の功績を表し、貴殿に陛下より報酬を与えられる。そのうちのいくつかを今ここで発表する。まず、第一報酬! 配下をだれ一人死なせることなく生還、そして敵を打ち滅ぼした報酬として、金剛貨18枚、白金貨32枚、金貨50枚を進呈する。そして天使と悪魔討伐、それから人的被害皆無の功績に金剛一等勲章および二等勲章を授与する。そして伝説の大悪魔討伐の功績に……”聖金十字竜王勲章”を授与するものとする」


 バルツァー公爵がそういうと、陛下が一歩前に出てその勲章と思われるものを持って待っている。

 それから僕は立ち上がり、陛下の真ん前まで行き、また跪く。

 すると陛下から勲章が首にかけられた。そして、


「アレン・ベッケラート・ラント伯爵、此度の活躍誠に大義であった。故にそなたに……辺境伯位を授けるものとする。これからも北部の土地をより豊かにしていってくれたまえ」

「謹んで拝命いたします」

「うむ」



 そうしてその後はバルツァー公爵が閉会の挨拶をして、祝宴を上げることとなった。当然妻たちを連れてきていなかったので、大急ぎで領地まで転移し、連れてきたのは言うまでもないだろう。

 こうして僕の出世は順調に進んでいる。また一歩目的の一つへと近づいていった。


 


 立派な貴族になってみせるという目標に。

 

遅くなってすみません。

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