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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第四章 人類守護奮闘編
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王家直属近衛師団 副団長?

 隣国への調査へ赴き、そこでの功績がたたえられ、晴れて伯爵となった僕。

 次の日の朝に王宮にまた来るよう言われていたので今は馬車で王宮へ向かっている。

 馬車は王家から下賜されたものだ。ものすごく質のいい下位貴族ならかなり手痛い出費になるほどの馬車なのだが、造りは質素倹約を体現しているかのような感じだ。

 これは僕が奏上したことだ。陛下に馬車を下賜していただく際、外見をなるべく目立たないようなものにしてほしいと頼んだのだ。

 なぜかと理由を聞かれたので、爵位が高くなってしかも豪華絢爛な馬車に乗っていると一般市民たちから贅沢をしていると思われかねない。貴族たるもの平民のお手本となれるようなるべく節約した馬車にした方が平民からの好感度も上がるのでは?

 と陛下に尋ねてみた。すると、素晴らしい! 確かにその通りだ! と褒めてもらえた。よかった。

 陛下曰く、国政にはなるべく節約を心がけていたのだが、こういった場所でも節約するという考えは特になかったとのこと。

 まあ、そりゃそうだよな。陛下からすれば国政をいかにお金を使わずにそれでいて効率よく回せるよう考えるので手一杯だろう。

 僕らみたいな自分の領地や身の回りのやるべきことだけやっていればよくて、余裕がある人間が考えればいいだろう。


 まあ、そんなこんなで良質ながら見た目は質素の見事な馬車で王宮へ向かうことしばし、門が見えてきた。

 いつも通り馬車を降りて城門をくぐって入っていく。

 そして気づいた。さっきから心なしがすごくみられているような気がするのだ。

 なんだろう? と思ったところでようやく思い至った。


(おそらく勲章や肩章だな)


 僕はそう思った。僕が入ってきただけなら今までにも普通にあることだ。

 けどそんな僕に視線が集まっている。となれば原因は一つしか考えられない。

 普通に先代の後を継いだだけの貴族をしていれば、特に胸につける勲章も肩につける肩章もそんなに多くはならない。

 だけど僕の胸や肩には異常な数の勲章や肩から胸にかけてぶら下がったり肩に乗っかっている肩章がある。

 それらが彼らの目には異様に映っているのだろう。

 そんなことを考えていると、クリストフさんが出迎えてくれた。


「おはよう御座います。ラント卿」

「おはよう、クリストフさん。今日は大貴族の方達の訪問などはなかったんだね」

「ええ、たった今その大貴族のお方のご案内のお仕事が入りました」


 言われて気づいた。そっか僕は伯爵になったから既に大貴族の仲間入りをしているのか。

 敬称こそ変わらないものの、位は立派に大貴族だ。まあ、中には下位貴族と敬称が変わらないのは問題だということで敢えて伯爵呼びする人もいるけどね。

 それにしても、9歳が伯爵か……世の中変なことも起こり得るもんなんだね。


「そっか、僕も大貴族の仲間入りをしたんだったね」

「一般的にはそういう大事なことは忘れない方が多いのですがね。ですが逆に貴方様がどんどんとすごい速さで出世されてる理由が理解できた気がします」

「そう?」

「ええ」

 

 どういう意味かはいまいちわかんないけど、取り敢えず今は陛下をお待たせするのは良くないから進もう。

 その後、いつも通りにクリストフさんについて行くこと5分ほど。


 コンコンッ


「陛下、ベッケラート卿がお見えになりました」

「おお、来たか。通してくれ」


 陛下の許可が降りたので僕も部屋に入る。ここは……いつも仕事に関する相談をする場所だな。


「失礼します。陛下、おはようございます」

「うむ、よく来てくれた。早速だが座ってくれたまえ」

「失礼します」


 ささっと着席し、周りを見渡すと、向かいの席にベッカー侯爵とコルネリウスさんが座っている。

 その隣にはバルツァー公爵が。いつも通りのメンツだ。


 そうしてようやく全員がそろったところで陛下が要件を話し始めた。


「おぬしには近衛師団の団長をやってほしいと思って居る」

「え?」


 あまりに意味不明なその要求に思わず間の抜けた声を出してしまった。


「えっと、それはつまりどういう……ベッカー閣下はどうなさるのですか?」

「ああ、そのことについてだがな、彼から直接話を聞いた方が良い」

「は、はあ……」

「ではベッカー卿、説明を」

「かしこまりました陛下」


 そうして説明が始まった。

 要するに、ベッカー侯爵はもう師団員のトップの座を降りようと思っているとのこと。理由は単純にコルネリウスさんも力をつけてきて、指揮能力も十分とある。そして僕は若くしてあの魔大樹の森遠征で幻獣と話を付ける交渉能力や、その際に伴う戦闘で自分以上の戦闘力を見せたと。

 さらには今回の遠征で素晴らしい功績を残して指揮者としての才能も発揮したと。それらが理由らしい。

 そしてベッカー侯爵自身、元から自分の地位に疑問を持っていたそうだ。自分より強い人間は師団にはいなくても、冒険者や他の戦闘職の者にはいる。

 そもそも自分は竜魔導師でもないし、魔法師でも魔法騎士でもない。騎士としては王国最強であるという自負はあるけど、やはりどうしても火力の面では魔法が扱えるものの方が優れているということだ。実際、僕の父上の方が強いと思っているそうだ。(実際の戦場ではほとんどの場合、魔法師や魔法騎士、竜魔導師が主力となって自分は指揮に回ることが多いそうだ。)



 なのでそういう自分が師団のトップにいるのが常に疑問だったと。


 なるほどぉ……そういう考えもあるのか。

 しかしそれにしても僕が団長はおかしな気がする。


「そういうことでしたか。お話は分かりました。ですがその申し出をお受けすることはできません」

「な!? なぜ?」


 ベッカー侯爵はどうしてだか分からないといった顔だ。


「ベッカー閣下が次の世代に地位を譲りたいとおっしゃられるのは理解できます。しかしその役目を私に、というのはどうかと思われます」

「どうしてそう思うのかね?」


 ベッカー侯爵が尋ねてきた。


「今回のお話、アーベントロート卿がお引き受けになった方がよろしいかと思われます」

「わ、私がかい!?」


 コルネリウスさんはいきなり話を振られるとは思っていなかったのか、ものすごく驚いている。


「はい。アーベントロート卿の方が適任かと」

「確かにアーベントロート卿も優秀な師団員として我が国を助けてくれておるが、実際に残してきた功績ではおぬしの方が多いであろう?」


 陛下も疑問なようだ。


「そうかもしれませんが、それはあくまで師団員全体に比べ、小規模な部隊を率いた場合の功績と武においての功績がほとんどです。しかしアーベントロート卿はより大きな部隊を率いられた経験がおありです。ですので場数の面から言ってもやはりアーベントロート卿がお引き受けになるのがよろしいのではないかと」

「なるほどのお。ベッカー卿、おぬしはどう考える?」

「確かにラント卿の言う通り、経験の数ではアーベントロート卿が上回りますな。悪くない選択かと」

「ふむ」


 陛下はそこで考え込んだ。そしてじっくりと考えたのであろう考えを告げるために顔を上げた。


「あい、分かった。これより師団の団長をコルネリウス・アーベントロート伯爵とし、副団長にアレン・ベッケラート・ラント伯爵とする。良いな?」

「承知いたしました」


 コルネリウスさんが承諾の意を示す。そして僕も、


「仰せのままに。謹んで拝命いたします」

「うむ。頼んだぞ!」


 


 そんなこんなで新たな団長と副団長が決定し、盛大に国中に発表された。当然、どこかのめでたいモードに入った男の人が僕の屋敷に押しかけてきて、盛大に祝うぞ! と言って宴を始めたのは言うまでもないだろう。

 そして役職を引退したベッカー侯爵はというと、僕たちが部屋を辞し、陛下と二人きりとなった部屋で……


「それでアーベルよ、おぬしはこれからどうするのだ?」

「そうだな。取り敢えず子供たちが立派に家を継げるよう教育の方に専念するのは確定事項だ」

「うむ。それも重要なことだな」

「ああ、そして今後は政務に力を注いでいこうと思う。まあ、俺もまだなんだかんだと年を食ってるわけではないんだ。いくらでも新しい人生を歩めるさ」

「そうか……だが、これからも顧問としてあ奴らが苦戦しているときは力になってやってほしい。そして本当にこの国が全面戦争に突入して総力戦などになった時には……頼めるか?」

「もちろんだ。これからも体を鍛えて武の鍛錬も怠るつもりはまだねえよ」

「助かる」




 こうして、新生近衛師団が公式に誕生したのである。



 後にこのような記述が発見された。それは、若くして自身の力不足に疑問を持ち、近衛師団を引退したアーベル・ベッカー侯爵の背中を見て育ってきたアーベントロート伯爵。

 彼は前団長が引退後、それはもう周りが止めに入るほどの猛烈な訓練を続けた。そしてその後に続く作戦の数々でベッカー侯爵と同じ近距離専門の騎士でありながら多大なる戦果を挙げていったと。

 この時に本格的に騎士のような身体強化や結界などで、己にしか効果を及ぼせない魔法しか扱えないとされる騎士でも、戦場で竜魔導師や強力な魔法師や魔法騎士たちと同じように戦えると証明されたのだ。

 それからは竜魔導師や魔法師、魔法騎士だけでなく、騎士にも積極的になりたがる若者が増えたという。

 


 彼は後にこう呼ばれた……真騎士(しんきし)と……

 これは騎士という階級のさらに上の特別な騎士にだけ与えられる階級として認知されていった。

 皆が彼のような騎士になりたいと言って師団に多くの若者が入団するきっかけになったのだ。

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