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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第三章 貴族社会奮闘編
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幻獣という名の意味!

 凄い、凄すぎる……冷気を操る能力と雷を操る能力に加えて風ときたか……ほかにも何か隠しているのだろうか?

 だが気になるのは彼が魔法を使っていないところだ。前世のファンタジー小説風に言うとスキルといったところか? とにかく魔力を使っているのは確かなのだが、魔法陣も浮かび上がらないし、呪文や術式が使われている様子もない。

 つまり今までの攻撃は完全に彼自身の能力だ。ルシファーたちもこの類の力だ。魔法も使うらしいけど今のところ見たことはない。

 悪魔や天使は完全に魔法がメインだ。そしてその上で彼ら自身の身体能力や特殊能力も使ってくるから強いのだろう。

、生物にはそれぞれに得意な戦い方がある。この幻獣もそういった特殊能力がメインの戦い方なのだろうか?


 そんなことを考えていると、


「何をそんなに驚いておる? 人間は魔法をよく使うかもしれんがそれ以外の生物が特殊な能力を使うのなんて珍しくもないであろう?」

「確かにそうだけど、全く関連性のない三つの能力を使ってこられたのは初めてで少し驚いているんだ」

「なるほどのぉ。ならば今回は貴様にとって良い機会なのではないか?」

「そうだね。経験を積むには実にいい機会だよ」

「そうであろう。ならばもっとワレを楽しませよ。さすればワレももっと面白いものを見せてやろう」

「言われなくてもそうするさ!」


 僕は身体強化魔法を体にまとい、さらに雷の強化魔法をまとってから一気に距離を詰めた。


「!……ほう、やはり貴様は面白い! その速さ、まさに異次元だな。今まで反応できた者はほとんどいなかっただろう?」

「しっかりと僕の速さに付いてきておいてよく言うよ。でもまあ、あなたの言う通りだ」

「で、あろうな。その速さ、はっきり言って人間の範疇にとどまっている程度の強さなら反応はできまい」

「褒めてもらえて光栄だけど、そろそろ本気で行くよ! 『雷閃斬(らいせんざん)』!」


 僕は雷速閃動で動きながら、剣に雷の強化を施して、一閃した。が、なんと、


「!?……まさか、転移まで使ってくるとはね。でもようやく……」

「我に魔法を使わせた……と?」

「そういうこと!」


 そういって僕はもう一度距離を詰めた。


「確かに今のはやばかったのぉ。なのでワレもそろそろ真の力を見せるとするか。距離を詰めてくるのであれば詰めさせないだけだ」

「出来るものならやってみなよ!」

「ああ、そうさせてもらう! 『終焉(しゅうえん)大嵐(たいらん)』!」

「くッ!? うわッ!」


 うそでしょ?……冷気と雷と風を混ぜ合わせた大竜巻を十数個発動させてきた。周囲への被害が半端ない! めちゃくちゃだコイツ! 初めに師団員のみんなには帝王級の結界を張ったけど、気を抜かない方がいいかも。もしかしたらより強力な力を発動してくるかもしれない。ああ、面倒だな~みんなを守りながらこんなエゲツない戦い。

 きつすぎるな。でもやるしかない! 

 力も供給してもらってるし、結界も張った。ならもう派手にやっちゃおう。そうしないと勝てないよ、これ。


「万有引力!」

「む!?」


 僕は前方に向けて万有引力の魔法を発動した。そして竜巻すべてを飲みんだ。ただ魔力波動が強すぎて、とんでもない衝撃波が発生したので結果的にはさっきより被害がすごいことになっている。


「なかなかやりおるの。今のを完全に消し去るか……」

「一応最強の竜たちを従えているんでね」

「だが、一つ気になるのだが、なぜ竜を顕現させんのだ? ワレを相手に手を抜いておるのか?」


 うーんっと全くそんなつもりはないんだけど。竜を顕現させて戦うのはかなり消耗するからね。ここぞ、という時のとっておきと手段として使うのが最適解なんだけど……でも相手に不満とかを持たれても後々困るか。

 よ~く考えたら今は勝つための戦いじゃなくて、信頼を得るための戦いだもんね! よし、それなら戦いのための作戦とかやめて、紳士に戦のがいいよね。


「そうだね。魔法で本気出しても竜を顕現させなければ竜魔導師としては本気出してるとは言えないもんね」

「そうだな。できればワレは貴様の全力を見たいのだ」

「ごめんね。僕今まで勝たないと死ぬ、もしくは自分の大切な何かを傷つけられるっていう戦いしかしてこなかったから、戦うとどうしても勝つための作戦を考えちゃうんだ」

「なるほど、自然と温存する戦い方が身に着いたということか」


 おお、さすがだ。今の情報量だけで僕の言いたいことを理解してくれたらしい。さすがは歴戦の猛者だな。


「そういうこと。でも今回の戦いはあなたの信頼を得ること。戦いのための戦いじゃないんだよね?」

「そういうことだ。だからワレに貴様のすべてを見せよ。それをもとにワレは貴様を信じるか決めるのだ」

「わかった。じゃあ……行くよ?」

「来い!」


 僕はルシファーに呼びかけ、顕現の準備をしてもらった。


「出でよ! ルシファー!」

「おお、これが……凄まじいな。楽しめそうだ」


 ヴェルセルクかなりテンションが上がってる。よかった、取り敢えず機嫌は戻ったみたいだ。


「やれやれ、ようやく出番か」

「ごめんね? いつもの癖で」

「全くお前は……あ奴も本気を出せと申しておっただろう」

「貴様がそ奴の契約した竜か」

「いかにも。この者からはルシファーと呼ばれておる」

「ほう、名前があるのか。いいではないか」

「そうだな。良い相棒になれると思うておる」

「それで、わっぱ、始めてもいいのか?」

「もちろん!」


 というわけで、またまた戦闘準備に入った。


「では行くぞ!」

「じゃあ、ルシファーもお願いね!」

「任せておけ」


 僕たちは一斉に動き出した。ルシファーは口から万有引力と同じような効果があるブレスを放った。


「何のこれしき! 『氷帝(ひょうてい)咆哮(ほうこう)』!」


 ヴェルセルクは冷気のブレスで相殺した。強烈な衝撃波だ。


「今度はこっちから行くぞ! 『雷砲(らいほう)』!」


 ヴェルセルクは雷を球状に変形させて砲弾のようにこっちにはなってきた。なので僕は、


「『大地(だいち)進軍(しんぐん)』!」


 大地魔法の防御で防いだ。断崖絶壁の巨大な岩の壁が地面から湧き出し、雷の砲弾を受け止めた。


 僕はそのうちに、感知魔法を使ってヴェルセルクの後ろに転移した。のだが、


「その程度の小細工予想してなかったと思うか! 『雷鞭(らいべん)』!」


 彼はそういって尻尾に雷をまとわせて一気に振り下ろしてきた。なんて波動だ。これだけで弱い人間なら消し飛ぶだろう。


「永久氷獄! いまだルシファー!」

「む!?」


 ルシファーが当たり前のようにヴェルセルクの眼前に現れ、


「『漆黒爪(しっこくそう)』!」


 闇の力をまとった爪でヴェルセルクの胸あたりを削ぎ落した。


「クッ! なら、『冷気爆裂冰波(れいきばくれつひょうは)』!」

「まさか!?」

「しまッ!?」


 火炎爆裂熱波の氷属性バージョンだ。まさかのここで魔法を使ってきた。しかも災厄級魔法……


「さすが、耐えたか」


 耐えたか、じゃないよ! 結界魔法の展開が一瞬遅れてたら死んでたよ! いくら何でも身体強化と雷の強化魔法だけでは災厄級魔法は耐えられない。


「今のは流石にやりすぎでは?……」

「我もそれは思ったぞ。幻獣ヴェルセルクよ」

「ほう、ワレの種族名を知ってるとな? かなり古参の竜のようだな」

「当然だ。我は古代竜だからな」

「なるほど、通りでただの神位竜にしては覇気が強烈だったわけだ……よし! わかった。貴様らを信じよう! それと、とっさにやりすぎたのは謝罪する。すまなかった」


 うん、まあ、いいんだけどさ。なんか出し抜かれて終わったようで釈然としないな。でもまあ、今は仕事優先。


「うん。その謝罪、受け入れるよ。そして同時にこちらの要求も受け入れていただき、感謝します」

「よいよい。それとそこの竜と、わっぱ、二人そろって釈然とせんって顔をしておるな」

「当然だ。我は最後の最後の方にさらっと呼び出され、さらっと負ける瞬間に居合わせたのだからな」

「それも、そうだな! ははは!」

「僕も貴族としては使命を全うできたけど、正直内心微妙です」

「それでも、貴様らは負けなかった。そうだろ? 自然界において負けは死を意味する。その点、貴様らは死ななかった」

「確かにのう。まあ、我はあくまでこの、アレン・ベッケラートの契約竜だ。こやつが納得するならそれでも良い」

「ルシファー……」


 全く、情けないな。契約竜にそこまで言われたら、負けず嫌いで駄々をこねるなんてできないじゃん。


「うん。そうだね。死んでないんだから今はそれで納得すべきだよね。ただ」

「ただ?」

「幻獣ヴェルセルク、いずれまたあなたに模擬戦を申し込みます」

「よかろう、いつでも待っているぞ。アレン・ベッケラート」




 そうして、僕たち探索師団は森での一件を一歩解決に導けた。だがあくまで一歩だ。これからお国に報告し、なんとしてもあの森に今後手を出すようなことはあってはならないと説得しなければならない。

 僕の戦いはまだ続くんだ。気を抜かずに頑張っていこう!





また遅くなってしまいました。申し訳ありません。

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