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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第三章 貴族社会奮闘編
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魔大樹の森

 遠征に出発して、一時間ほどが経過した。ようやく魔大樹の森が見えてきた。

 まだざっくりと森の輪郭が見える程度にしか近づいていないけど、それでもこの距離からでも一本だけ、異常な高さの木があることがわかる。

 あれが魔大樹か……デカすぎだろ。東京スカイツリーがすっぽりおさまるどころか頭一つ分ほどデカいかもしれない。

 スカイツリーが確か634メートルだったと思う。そしてあの木はさらに100メートル近く高いから約700メートル!? いやもう、なんも言葉が出てこない。


 とまあ、そんなどうでもいいことを考えていると、


「アレン君、ついたようだよ」

「あ、本当だ。長かったですね」

「確かに。今回は少し遠いところに遠征していたからね」


 今、どうして砕けた感じで会話をしているかというと、馬車に乗っているのは僕とコルネリウスさんだけだからだ。

 僕が後衛について任務を遂行するのも森に入ってからなので、部隊の人も今はいない。なので軽い感じで会話している。ちなみに名前も個人での会話の時はコルネリウスの方で呼んでほしいと言われている。


「いよいよですね」

「ああ、気合を入れていかないとね」


 そういって僕たちは馬車を降りた。ここからは貴族モードだ。会話も堅苦しくしないといけない。よし、気を取り直して、


「それではここからはアーベントロート卿とは別行動ですね」

「だね。ではまた幹部で集まるときにでも会おう」

「はい」


 そういって僕とコルネリウスさんはそれぞれの持ち場に向かう。


「このあたりか。部隊の人たちはっと……」

「ベッケラート卿、お待ちしておりました」

「あ、どうも。これからお世話になります。アレン・ベッケラートです。よろしくお願いしますね」


 ぼくは自分の部隊と思われる人に声をかけられたので、まずは挨拶をした。すると隊員の人は驚いたような顔をした後に今度は顔を真っ青にした。

 どした?


「と、とんでもございません! クラウス中隊長です! よろしくお願い申し上げます! それとご挨拶が遅れて誠に申し訳ありませんでした!」


 ああ、なるほど。そういうことね。自分は僕の部下で、しかも平民なのに身分でも立場でも上の人間に先にあいさつさせてしまった、とそう思って顔を青ざめさせていたんだな。

 そんなこと気にしなくていいのに。でもここは体裁もある。とりあえずなんか言ってあげないとこの人の気が収まらないだろう。


「気にしなくていいよ。僕が勝手に先にあいさつをしただけだから君に非はないよ。それとこれからは立場上、ため口になるけど勘弁してね。いくらあなたが僕より年上でも貴族は簡単に立場が下の者にへりくだっちゃいけないんだ」

「承知しております。勿論そのようにしてくださって構いません。当然でございます。寛大なご対応とそのお気遣いに感謝いたします」

「いいんだよ。気にしないで。それじゃあ、部隊のみんなが集まってる場所に案内してもらえるかな?」

「御意。こちらでございます」


 そうして一通りのやり取りをしてから部隊の場所に案内してもらった。僕が着くと団員たちはピシっと綺麗に敬礼して出迎えてくれた。心なしかすごく緊張しているように見えるのは気のせい?


「おはようございます。今日からこの部隊の大隊長を務めることになったアレン・ベッケラートです。もう見てわかると思うけど、僕はまだ子供なんだ。なので本当にこんな奴に任しても大丈夫なのか? と疑問に思う人もいるかもしれない。それは当然の気持ちだろうしそれについてとやかく言う気はない。ただ、絶対に何か判断をしないといけないときは僕がよほど無茶なことを言ってない限りはついてきてほしい。それだけだ。これでも一応学園の軍略学は首席で卒業資格を得ているんでね」


 そういって初めの言葉を述べるとみんな驚いたような顔をした。まあ、そうなるかもね。だって学園の選択科目の中でも軍略学はトップクラスに難しい科目だ。

 それを首席で通ってきてるんなら後は本当に実践を積むだけという段階に来ている。心配するのもばかばかしいほどのレベルがないと軍略学で主席なんて到底無理なのだ。

 なので今ので僕が即戦力として大隊長に選ばれた理由を彼らも理解してくれただろう。


「そういうわけで、これからもよろしくね。ベッカー閣下からはやわな鍛え方はしていないから厳しく言ってくれていいと言われてる。だからある程度そのお言葉に従うつもりではいるけど、これだけは守ってほしい、くれぐれも無茶はしないように。体調などが悪くなればすぐに衛生員に治療を頼むこと。別に個人の判断でそうしてくれても僕は何も言わない」


 そういうと団員たちはみんな驚いた顔をした。おいおい、今までどんだけ鬼教育を受けてきたんだか……治療を個人の判断で頼んでいいと言っただけでこの反応って。

 まあ、いいや。


「とにかく無理はしないように。頭痛がするとか吐き気がするとかそういった理由でもいい。とにかく行軍に支障が出そうならすぐに治療してもらってね。では以後よろしく頼むよ」


 そういって僕は幹部用テントに入っていった。


「あの年であの覇気と立ち居振る舞い、あれがたった6歳で貴族家当主になったお人の実力か……我らはもしかしたらとんでもないお方を上司にしていただいたのかもしれないな」


 クラウスが独り言をつぶやいた。それに対しほかの団員が、


「かもしれない、じゃなくてその通りなんだよ。ふつうあの年であんなにはきはきと大勢の大人の前で演説なんてできないよ」


 もう一人の中隊長、ヘルムートが答えた。


「ああ、そうだな。しっかりとお支えしよう! それが巡り巡って自分たちのためにもなる」

「そうだね」


 その後団員たちは新しい大隊長の話題で持ち切りとなった。




 一方、テントの中で当の大隊長本人は、


「ふう、疲れた。もともと身分なんて関係ない場所から来た僕からすれば、ああやって大人相手に偉そうに演説するのはきついんだよね~。とにかくあと30分くらいはこの森の前の野営地でゆっくりするみたいだから、少し休憩しようか」


 そういって僕は軽く目を閉じた。



 そうして30分ほどが経過して、


「ベッケラート卿、そろそろお時間です」


 そうやって僕を呼ぶ声が聞こえた。ああ、眠い。今はお昼を済ませた後だからすごく眠たい。でも起きなきゃ。


「はいはーい。今行くよ」

「もしかしてお休みでしたか?」

「うん、少しね」

「それは、いきなり失礼しました」

「いや、いいんだよ。どのみち起きなきゃいけなかったし、結果的には良いころ合いだったよ」

「はは」


 僕は近くにあった水入れからコップに少し水を注いでから軽く飲んだ。ああ、すっきりした~。


「よし、行こうか」

「はい!」


 僕たちは勢いよくテントを出て最初集まっていた場所に来た。するとそこではすでに完璧に整列がなされていた。

 よしよし、準備は万端だな。


「ではこれより、魔大樹の森探索任務を開始する。我々の隊は後方で援護や遠距離攻撃を行う部隊だ。非常に重要な役割だということは諸君が一番理解してくれていると思う。自分たちの援護が雑なものだったり、失敗すれば仲間が死ぬ可能性もある、誰でも間違いはあるものだけど決して気は抜かないように。いいね?」

「「「「「おぉ!!!!!!!」」」」」


 すごい士気だ。これなら大丈夫そうだ。


「ではこの後すぐに前列の部隊に合流する。総員! 準備にかかれ!」

「「「「「はは!!!!」」」」」


 そう返事をして皆各々の荷物などをとりに行き、再生列の準備を整えに移る。



 30分後、皆が準備を整え、前列とも合流し、本格的に軍事行動に移ってから30分が経過した。

 森を探索し始めてからは静かなものだ。僕も厳かな肩章や勲章に彩られた魔法戦闘服を着ながら、静かに歩いていた。


「ベッケラート卿、この間の団員会議所での会議、私は所用で参加できていなかったのですが、上層部の方は何か仰っていましたか?」


 そんな風にクラウスが尋ねてきた。僕は特に何も言われていないので首を横に振った。


「左様ですか。ですがそれなら何でしょうね? この不穏な気配は。本来こういう森の浅いところでは感じないような不吉な気配を感じます」

「やっぱり君も感じてる? これはたぶん魔力が多くて魔法を使った戦闘ができる人にしかわからないものだね。念のため伝令を走らせよう」

「ええ、賢明なご判断かと」

「ねえ、君……」


 僕は後ろにいた団員に今話していたことを前方に伝えに行ってもらうよう頼んだ。何かありそうなんだ。こういう時のいやな予感って結構当たるんだよね。

 テストでいい点取れた感じがするって予感とかは結構外れたりするのに、こういう嫌な感じがするときの予感はなぜか嫌になるほど当たったりする。



 このまま何もなければいいんだけど。とにかく警戒は強めていこう

いよいよ探索開始ですね!

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