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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第三章 貴族社会奮闘編
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会議は踊る、されど進まず

 会議が開始してから5分ほどたった。大体のいきさつをバルツァー公爵が説明してくれた。ここからは各々の意見を聞いていく段階に入る。

 そして皆が発言をしようとしたときに陛下が一言、


「ああ、それと済まない。まだ来れていないようだが、この後、ベッケラート男爵とアーベントロート伯爵も来ることになっている。二人は今別件で動いてくれていてな、戻ってくるまでに時間がかかる。だが事は一刻を争うのでな。こうして先に会議を始めた次第だ。その旨、伝えておこうと思う」


 一人を除いて皆が頷いた。その一人とはベーレンドルフ公爵である。彼はまだ来るのかと少し難色を示している感じだったが、やがて頷いた。


「ではバルツァー卿続けてくれ」

「かしこまりました」


 そうしてまた開始の合図が下りてからはみんなが意見を言い出した。やれ、帝国が落ちたというなら敵は相当なもの。すぐにでも臨戦態勢に入るべき、というもの。やれ、いやそもそもその相手に勝てるのか、というもの。

 やれ、様子を見た方がいいのでは、というもの。いろいろだ。

 そんな様子を黙って聞いていると、陛下が、


「では、次はベッケラート卿にも意見を聞いてみようか」


 そういわれた。僕としては別に構わないが、やはりベーレンドルフ公爵だけは、チッ! という舌打ちが聞こえてきそうなほど、顔には出していないが雰囲気に僕を疎んでいる感じがにじみ出ている。

 それ以外の方はむしろ興味深い、といった視線を向けてくる。

 だが、ここは陛下のご指名だ。しっかり意見を言わなければ。


「では、わたくしの意見を述べさせていただく前に、一つ質問をよろしいでしょうか?」

「む? なんだ、何でも申してみよ」

「はい。では、なぜ帝国はそれほど簡単に落ちたのですか?」


 という僕の質問にみんな疑問を示す。


「それは……敵が強かったからではないのか?」


 というベッカー侯爵の質問に、


「それもあるかもしれません。ですがもっと気になるのは帝国は領土も国民の数も多い。なのに強い人が一人もいなかったのか? というものです。それこそ竜魔導師級の人たちが。しかし現実はあっけなく陥落したと報告にあります」

「つまり、おぬしは何を申したいのだ?」

「はい。これは私の推測ですが、帝国はかなり横暴な政策をとることもあると聞きます。そして今回、密偵からの報告によれば悪魔や天使を操れる方法を得たと言っていたとあります。そして彼らが封印を解いたと。はなはだ迷惑な話ではありますが、その愚かな行為に強い人間たちが国に愛想をつかし、出ていったというのもあり得るかもしれません」

「なるほど。それはあるのか。だがおぬしの顔を見る限り、まだ何かあると思って居るのだろう?」

「はい。さすがに強い人たち全員が全員国を去ったとは考えにくい。もし去っていったとしても何人かは残る人もいるはずです。そんな人たちも勝てなかったのだとすれば……」


 ここまで言うと、みんなも事の重大性が分かったみたいだ。帝国が落ちたのならそれは驚くべきことだが、横暴な政策などをとっていたのなら国民に嫌われていても不思議ではない。

 おそらく僕の予想はあながち間違いではないだろう。かといって全員が国を去るとも思えない。そうなってくると、強い人もいたうえでボロ負けしたということになる。

 もしかして、今回の悪魔はいままでの比じゃないかもしれない。それにそれほどの悪魔が動けば、奴らも混じってくるかもしれない。

 そう、天使だ。彼らまでも強力な個体が出てきてしまったら、なかなか厳しいな。


「なるほど、今回の敵はかなり強大な力を持っているかもしれんということだな?」

「はい。私の予想が正しければそうなるかと」

「ふむ。ならば、冒険者などにも緊急招集の手配をすべきと思うか?」

「私としましては、わからないというのが正直なところでございます。緊急招集はすべての力ある武人を自分が拠点としている町に配置するということ。依頼をこなして拠点から離れていてもです。なので王都を拠点としている強い冒険者なども集まってはくれるでしょう。ですがまだ敵が攻めてきてはいない段階で、しかも敵は気まぐれときました。これではいつ緊急招集の意味が出てくるかわかりません。なので、ここはいったん国家が正式に常備師団員として雇っている者で王都の守りを固めるのがよろしいかと」

「なるほどのぉ。正論だな。他のものはどう思う?」


 陛下がそういって周りを見たとき、皆がフリーズして突っ立っていた。だがそれもつかの間、すぐにみんな戻ってきた。


「い、いやまさかこれほどとは。ははは。陛下がとても将来有望な者がおる! と仰られていた意味がよく理解できましたぞ」

「そうですな。全くもってあっぱれです」 


 何人かが僕の判断に感服してくれていたみたいだ。ベーレンドルフ公爵も異論はなさそう。


「よし、ならば、このまま国家所属の者たちで事に当たっていくとしよう。ただ根本的な解決にはまだ至っていない。そこをどうするかも今後の展開次第だ。それも話し合っていかねばならん。最終的には一時的にではあっても我が国が安定して過ごせる国である状態を保たねばならぬ。そろそろベッケラート卿らも来るであろう。それまでは少し休憩としよう」

「かしこまりました」


 陛下の言葉にバルツァー公爵が承諾の意を示し、会議はいったん中断となった。


 会議がいったん止まってからは皆が皆いろんな話題を話している。だが僕はその輪に混ざる気になれない。

 そもそも爵位が圧倒的に違いすぎる。コルネリウスさんなら伯爵だし、何とかなりそうだけど……僕は準男爵だ。

 騎士爵よりかは本格的な貴族と言えるかもしれないが、それでもまだまだだ。資金などは普通の準男爵よりもある自信はある。

 でも、それ以外の発言力、影響力など、そういったものすべてが上位貴族には及ばない。歯がゆい限りだ。

 そんなことを考えていると、


「君、ちょっといいか?」


 まさかのベーレンドルフ公爵だ。しかも曲がりなりにも貴族である僕に対して”君”呼ばわり、もうこの時点であり得ない。

 これが本当に公爵? これが本当に陛下の親族? マジで信じられない。まあ、でもこれがもし単純にグれた先祖に影響されてるとかだったら分かるけどね。

 何せこの国の王族は代々、先代国王の直系の子孫しかアンドレアスという名字を名乗れない。つまり本格的な王族とは認められないということだ。大公は当然のこと。公爵家だって基本的には王族の親族に与えられる爵位だ。

 よほど、侯爵の爵位では事足りないという功績を上げた者なら、王族以外でも公爵に上り詰めることはあるかもしれない。

 でも基本は王族が公爵を名乗る。大公は絶対的に王族しか名乗れない。そんな中でいくら法律で決まっているとはいえ、王族の仲間である自分たちがアンドレアスという名字を名乗ることは許されないとなると疎外感を感じて王家にいい印象を持たない親族が出てくる可能性もあるかもしれない。

 もしかしたらベーレンドルフ家もそういうお家なのかも。だから表向き仕事では協力しても、個人的には国家に真っ向から背く思想を持っているのかもしれない。

 憂鬱な気分だが、相手が相手だ。しっかり対応しなければ。


「ええ、ベーレンドルフ閣下。どうかなさいましたか?」

「いや、なに。君はずいぶんと優秀だと思ってね」

「はぁ、ありがたきお言葉、感謝いたします」


 いったい何なんだ? さっきまであんなに僕を疎んでいる感じだったのにいきなり壮年の優しい紳士みたいに振舞ってくるじゃないか。

 これは普通の下位貴族なら光栄だなんだと喜ぶんだろうが、僕としては不気味で仕方ない。なんせこの人は父上とは真っ向から対立している派閥の正真正銘のトップなんだから。

 陛下も手を焼いているとおっしゃっていた。なまじ優秀で使える人材であるがゆえに簡単に切ることもできないと。

 その切れない理由が”親族だから”ではないのが実力ですべてを判断するこの国の王族らしいけど、家族や親族を場合によっては切らないといけないというのは悲しいね。


 まあ、それは置いといて、何が目的だ? この男は。


「そこで話があるんだが、君はこの調子だといずれとんでもない功績を上げていくことになるだろう。だがその時に君をねたんで足を引っ張ってくる輩がいないとも限らない。なのでどうだろう? 私が困った時には力を貸してくれないか? その代わりと言っては何だが、君のこれからの人生、できる限りの協力は惜しまないと約束しよう」


 なるほど、いわゆる引き抜きか。陛下にも見込んでもらえて、この場にいるほかの上位貴族とも良好な関係を築けそうにある僕を自分一人で滅多打ちにすると後々まずいことになる。

 なので今のうちに父上の派閥から引き抜こうというわけか。父上も陛下と懇意にしているからな。

 もし僕がベーレンドルフ家に与するようになれば、陛下もさすがに僕に失望するだろう。そのあとなら僕をどうとでも料理しやすくなるというわけだな。

 確かに陛下が興味のない相手をわざわざほかの上位貴族も助けたりはしないだろう。なるほど、考えたな。

 これならば優秀だから陛下が簡単に切るわけにはいかない。と仰った意味も理解できる。だが悪いが僕はあなたに興味はない。


「お申し出いただき誠に光栄ではございますが、既に私は自分でやっていけるだけの地盤がある上に協力してくださる方も多くいます。それに私は閣下が仰ってくださったようにこれからも努力すれば成り上がれるかもしれません。ですが結局今のところはいち下位貴族でしかありません。お申し出を受けるにはあまりに未熟。そういうわけですので、誠に勝手ではございますがそのお申し出は辞退させていただきます。申し訳ありません」

「ふむ。そうか、君自身がそう思うのなら仕方ない。諦めるとしよう。だがまた気が変わったらいつでも声をかけてくれたまえ」

「はい。その際はぜひ」


 そういってやり過ごした後、ベーレンドルフ公爵は自分の椅子に座って優雅に蒼茶(そうちゃ)を口に運んでいた。

 ちなみに蒼茶とは前世でいう紅茶に似た部類だ。お菓子時やちょっとした休憩の時によく飲まれるものだ。




 そうして30分ほどして、ようやく父上やコルネリウスさんが来た。先ほど話していた内容を手短にバルツァー公爵が説明し、二人はそこで初めて会議内容を把握した。

 僕の判断に父上もコルネリウスさんも大仰なという形容詞が付くほど真剣に頷いていた。

 その後はやはり根本的な解決策は見いだせなかったが、概ね僕が話した内容が採決され、いくつか修正して、細かい内容を詰めた後、解散となった。

 まあ、僕にはこの後も陛下や研究者の人と打ち合わせをする仕事があるんだけどね。そのあとにパーティについて話が出る感じかな?


 何はともあれ、あまり後味のいい終わり方ではなかったけど、とりあえず何事もなく会議が終わってよかった。





昨日は投稿できず、すみません。

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