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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第三章 貴族社会奮闘編
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全てを奪う、強欲のアルマーダ!

 帝国の人々は激怒していた。おとぎ話や迷信に近い存在が実在すると分かったのは別にいい。むしろそんな大発見、褒められるほどのことだ。

 だが帝国の上層部は欲をかきすぎた。そもそもの話帝国の臣民たちは戦争など望んでいない。ただ平和に暮らしたいだけだ。その平和を脅かすものなら倒すべきとは考えてはいるが。

 だがそれでもわざわざしなくてもいい戦争を、しかも自分たちから仕掛ける戦争など言語道断だと考える者も当然いるわけで。

 なので、当然今回の侵攻にも反対している者はいたのだ。平民にも、貴族にも。しかも反対している側に辺境伯や侯爵といった大貴族までいたのだから始末に負えない。

 頭のいい指導者ならそんな大物ほったらかして強行作戦、なんてことはしないだろう。もしそんな力のある人物をほったらかして意見を聞かず暴走し、最終的に失敗すれば暴動が勃発する可能性も余裕で思いつくはずだ。

 だが皇帝含め、大公や公爵といったトップの貴族たちまでも戦争のことしか頭になかった。そして禁忌級などという馬鹿げた威力の魔法など今までに見たことなどない。

 なので魔天教の者たちがこれで伝説の存在を操れるとそそのかした瞬間、餌に群がる肉食獣のようにその禁忌級の威力を発揮する魔法具を使うことを決定した。



 そうして今は帝都内は戦火に包まれるほどの暴動が起きている。民からすれば皇帝含め国の上層部は裏切り者の大罪人だ。

 あれだけ盛大に、『何も心配はいらない。これで悪魔や天使どもを操れる!』と宣言していたくせに、蓋を開けばこのざまだ。

 詐欺師と言われても文句は言えない。

 というわけで、今は反対派に回っていた侯爵や辺境伯たち主導で帝都で反乱がおきているのだ。

 本来ならいくら辺境伯や侯爵といっても相手は国のトップクラスの貴族と皇帝だ。戦いは厳しいものになると思われるのが普通だ。

 だが、今回反対していたのは何と武家の貴族たちなのだ。賛成派に回りそうに思える彼らが反対派に回ってしまったことで一気に戦況は皇帝側が不利になったのだ。


「ええい! いつまでかかっておるのだ! 相手がいくら武家の貴族だからと言って、こちらには国の最上位権力者の兵力がぞろぞろとおるのだぞ! なんという体たらくだ!」

「落ち着いてくださいませ、陛下。仕方なきことかと、何せ、あのバーデン侯爵とブラウンシュヴァイク辺境伯が反対派に回ってしまったのです。戦争の時にいつも尽力してくれていた、軍事力では最大勢力の彼らが敵なのです。いくら何でも兵力の質が違いすぎます」

「おのれッ! あやつら! 戦が落ち着き次第、八つ裂きにしてくれるわ!」

「ええ、ですがその前に我々が彼らに敗れ、八つ裂きにされる未来を避けねばなりませぬ。これからも陛下のお力は必要なのです。どうか今は怒りをお収めくださいませ」

「く、確かに奴らを侮ればその可能性も無きにしも非ずか……」


 そういって皇帝はこれからの作戦展開を参謀たちと考えていく。その際ほかの貴族たちは戦々恐々としていた。

 なぜなら皇帝に対してあのようななだめ方をするものなど普通はいないからだ。だがその普通ではない者がこの場にいた。故に彼らは皇帝が機嫌を損ねないか不安だったのだ。

 なだめていたのがこの国の大公だったというのも問題が起きなかった理由の一つだろう。それ以外の者だったらどうなっていたかわからない。

 そんなこんなでかなり肝を冷やした彼らだが、今は作戦を練り直すのに集中しようと彼らも参謀たちの会話に混ざっていく。




 皇帝たちが暢気に作戦会議をしているのと同じタイミング、帝都では新たな動きがあった。

 それは、強欲のアルマーダの配下たちが本格的に帝都で活動を始めたのだ。


 攻撃が始まったエリアの帝都の民は絶叫し絶望しながら助けを求めた。

 だがその願いは叶えられることなく粛々と命は刈り取られていく。ちなみにこれは悪意の塊といっても過言ではない行為だが、彼ら悪魔からすれば余興、もしくは本当にただの破壊衝動の発散。

 アルマーダから命令を受け、行動してはいるものの、その本質はただの本能的行動だ。皆が皆今やっているこの行為をしたいと思ってやっている。

 それが悪魔。もちろん強欲のアルマーダも悪意があるというより、長年封印されてつまらなかった憂さ晴らしと言って側面がかなり強い。


 そうして破壊活動が行わるのだが、今はアルマーダは表立って動いてはいない。動いているのは配下の三人。

 アルマーダは配下の三にも”欲”とつく二つ名を与えている。それぞれ、眠欲のコリン、闘欲のガジェス、情欲のシャルドネといった風に。それぞれ強い欲を持っていて、それにちなんだ名前を彼らにアルマーダが与えたのだ。


 そんな彼らが暴れている戦場ではまさに彼らの個性が強く出ている状況だ。


「全く、これでは全然破壊衝動を発散できない。物足りないものですね~。人間というのはここまで脆弱な生き物でしたっけね? 私の記憶ではもう少し強かったような……うーん、まあ、もうどうでもいいですね。強いものがいないのなら探すまでです」


 そういって、騎士たちの屍の山を築きながら彼は戦火の中へ歩みを進めていく。期せずして反対派の方の軍がどんどんと虐殺されていくわけだが、彼ら悪魔からすればどうでもいい話。

 彼らからすれば自分の欲が満たされなければ最終的には皇帝たちもどのみち始末対象だ。

 特に闘欲のガジェスはその傾向が強いだろう。



 他方の戦場では、


「ああ、眠い。本当に僕はただ眠っていたいだけなのにな~んでか何か物を壊したくなる時があるんだよね~。だから早く眠りたいから破壊衝動を抑えるの君たち人間に手伝ってもらおうかな?」

「な、何を言っている、貴様! 我々に何の用だ! いきなり襲ってきやがって! 俺たちに何のうらみがある!」

「ああ? なに?」

「うッ!」


 コリンのあまりに理不尽な暴虐の数々に耐えかねて、一人の魔法師がコリンに向かって叫んだが、コリンからすればただうるさいだけだ。

 それに、


「何のうらみって、大いにあるでしょうよ。勝手に復活させて勝手に呼び出しておいて、僕の眠りを邪魔して、腹が立つって思っちゃっても仕方ないよね? 僕らを操る? は! つまらない寝言を……そんなことできるわけないでしょうに。僕は封印されてようが、ただ眠ってようがどっちでも構わない。だけど、眠りを邪魔されるのは一番嫌いなんだ。だからさ、その罪を償ってよ」

「な!? そんなこと、国の上層部に言え! 俺たちはお前たち悪魔や天使を復活させることには終始反対していた。それを……」

「でも、僕の眠りを邪魔したのは事実だよね? その時点で僕にとっては君は君の国のお偉いさんたちと同類なんだよ」

「そんな……」


 コリンは唖然としている魔法師の首を刎ねた。なんでもないかのように。そして、彼の周りには死んではいないが眠りについている者がいっぱいいる。

 理由はただ一つ。コリンの仕業だ。今の者を殺したのは単純にイライラしたという理由だが、他のものは別に特に殺しているわけではない。建物とかは適当にこわしたりしているが、ここにいる人間は死んではいない。

 なぜならコリンの魔闘覇には眠気を誘う効果も混じっているからだ。なので、意志の弱いものはすぐに抵抗できずに眠りに落ちる。そんな弱い連中は相手にする気も起きないので面倒だから殺していないのだ。

 逆にさっきの人間は耐えきったので少し期待していたのだが、当てが外れたという心境だ。


「さっさとこのうずうずしたのをどうにかして、寝よっと」


 そんなことを言いながらふわふわ空中に浮いているのだった。




 もう一つの戦場では、


「はぁ、素敵な男の人はいないのかしら? 私よりも強くてカッコよくて、紳士ながらも乱暴な面も持ち合わせていて、少し強引だけど私を興奮させて満足させてくれるような人は……まあ、探してみたところいなさそうよね」

「おい、女! なにを言っている!」

「あなたは別に強くもないしどうでもいいわ。顔はまあまあイケてるけど、私、どんな状況でも大声を出す人あまり好きじゃないのよね。大人しい人が好みなの」

「はぁ? なにをふざけたこと……」

「だからもういいって言ってるでしょ? さっさと楽になっちゃいなさいな。私別にいたぶる趣味とかもないから感謝しなさいよね」


 そういって、シャルドネは話していた男の胸を両手の手刀で引き裂いた。心臓ごと。


「ほかの男たちはもう見てられないから処分ね」


 そういって、シャルドネの魔闘覇から放たれる、生物の性的本能を刺激する波動で目が血走り、そこらじゅうで女性を探している哀れな男どもを氷の中級魔法であたり一面氷漬けにして処分した。

 なんともいたたまれない結末だが、これは仕方ない。彼女は別に悪気があってこの波動を出しているわけではないのだから。

 


「さてと、もう少し中心の方に行けばいい人にあえるかも?」


 そういいながら、彼女は帝都中心の方へ歩みを進めていく。

 その三人の様子をアルマーダは満足げに眺めていた。


「うむ。いい感じだ。長年の封印の影響なんて皆無って感じだな。そのうち俺と同じように力を取り戻していくだろうし、もし天使どもがまたちょっかいかけてきても問題ないだろ。まずは適当にこの地を落とすか。どのみち天使との戦いになった時、また人間に邪魔されたら面倒だしな。今のうちから数を減らしておくか」


 そういって見る者の心を恐怖で埋め尽くすかのような凶悪な笑みをアルマーダは浮かべる。



 帝国が何もなき焦土と化すのも時間の問題だ。

 いつの世も身の程をわきまえない欲張り物は真っ先に淘汰(とうた)される。ここでもそれが現実のものとなるのは間違いないだろう。

今回は完全な悪魔サイドの話です。お楽しみいただけると嬉しいです。

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