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まさかの貴族に転生、そして最強竜魔導王となる!  作者:
第三章 貴族社会奮闘編
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蠢(うごめ)く悪意

 ここはアフトクラトリア帝国の帝都郊外の小さな町。その町の奥地の方には基本的に誰も寄り付かない場所がある。いわゆる、スラム街である。

 そのエリアの一角にあるボロボロな家の一室、そこで怪しげな連中が集まり、何やら話している。


「ああ、解せんなぁ。なんで各地の悪魔たちはこうも簡単に消されてしまってるんだよ? おまけで復活した天使も、弱すぎるったらありゃしない」

「大司教様、それは仕方なきことでございましょう。彼らは復活したてですし、封印の影響で力まで奪われて、それを回復するのに時間がかかると申しておりました」

「なるほど、そういうことかぁ。道理でこの間偵察に向かった時、地元の竜魔導師と戦って、撤退してたあの者の力、中位悪魔って言ってるわりには波動や覇気がすごく弱々しかったからな」

「ええ、ですが破壊衝動にはあらがうことをしない者たちですので、すぐに天使や、人間と戦いになるのでしょう」

「馬鹿な奴らだ。力が戻るまで大人しくしていればいいものを」


 そういって、コンラート大司教と呼ばれる男は報告をつまらなそうに聞いていた。


「しかし、最近は少しずつではありますが、天使、悪魔ともに力を取り戻してきているのも事実です。要は魔力さえ戻ればいいわけですから」

「確かに。そこまで観察して情報を集めてくるとは、やはりお前は有能だな。では引き続き……」

「あ、お待ちください、コンラート様」

「なんだ?」


 基本的にコンラートは自分が認めた者の話か、興味ある話以外耳を貸さないし、自分の注意をひけるほどの話題を持っていない者に話を遮られるのは一番嫌いなことだ。

 だが、報告をしていた彼が今こうして生きていられるのは、ひとえに彼の努力のたまものだ。コンラートに褒めてもらえるよう必死で情報を集め、信頼を得てきたからだ。

 しかしコンラートが自分の話を遮られるのが嫌いなのも事実。実際、彼は今少し不機嫌そうだ。

 これ以上機嫌を損ねないように、手短に、そして興味の湧きそうな話題を口にする。


「強欲のアルマーダが目覚めたようです」

「何?……」


 コンラートは一瞬でさっきの不機嫌が飛んでいったように飛び起きた。


「それは事実か?」

「はい。この目で確認いたしました。コンラート様よりご伝授いただいた伝承の知識、そして風貌、そういった情報から判断するに、まず間違いなく強欲のアルマーダでしょう。実際風の上位竜に認められている私の力をもってしても勝てる未来どころかかすり傷一つ負わせられる未来すら見えませんでした。あれは正真正銘の怪物です」

「お前がそこまで言うか……」

「はい。正直目視した時は心臓を握りつぶされそうなほどの圧倒的な圧迫感と恐怖で彼が立ち去るまでその場から身動きすることすらできませんでした」

「ははは……それほどのものか。ならば力を本格的に取り戻せば、まず竜魔導師級でないと相手にならんな。それもとびっきりの階級の竜に認められたものでないと。これはいい、我らの悲願も達成できそうだ」


 コンラートは一気に上機嫌になった。報告に来ていた信徒は安堵した。彼の話を遮ってしまった時、正直肝が縮みあがりそうになったからだ。

 何とかこらえて報告したが、それがつまらない内容だったなら、殺されていただろう。そう思えるほどには彼は不機嫌になっていたのだ。


「いかがいたしますか?」

「そうだな。もう少し様子を見ようか。もう少し状況が変わってきたら、一気に大攻勢を仕掛けよう。まずは帝国の愚か者の掃除が優先だ。この醜いけがれた生き物が支配するようになってしまった間違った世界を正すには一度世界に滅んでもらうのが手っ取り早い。そして我々はあくまで人間ではなく、竜人と呼ばれる人間よりも上位の生命体として生きていく。その理想郷を実現するために奴らを利用するのだ」

「承知しております。では今後も様子見ということで、事を運ばせていただきます」

「うむ。有益な報告ご苦労。下がって休め」

「はは、お気遣い、誠に感謝いたします」


 そういって報告していた魔天教の信徒は下がっていった。


「そうか、ついにあの悪魔が……私は先祖から聞いた伝承でしか知らないが、やはり強いのだな……彼ら七つの大罪は。私では勝てないだろう。だがあのお方なら勝てるのでは?」


 そう呟きながら、彼は思案に浸っていく。これから人類という害悪を掃除していくための、計画をあれこれと考えたり、修正したりせねばならない。それらを考えるだけで心が躍るというものだ。

 自分たちの桃源郷の実現の日は近い、とそう信じて疑わないコンラートであった。




 一方報告に来ていた信徒は自分の考えが揺らいでいることに気づき、困惑していた。彼ら魔天教のことは信じている……と思う。だが一度あの圧倒的暴力の塊とでも言うべき生命体を見てしまえば、世界を滅ぼした後の世で自分たちの生きる道は本当に存在するのか、そういう一抹の不安が脳裏をどうしてもよぎるのだ。

 確かにコンラートやその同僚の大司教たち、そのさらに上の枢機卿や教祖達ならば、悪魔や天使達にも物申せるほどの力があるのかもしれない。だがあくまでもそこまでの力を持たないものからすればあの力は後の世の自分たちへの脅威でしかない。

 まあ、自分は一応上位竜に認められたというのもあって、そこそこの力は持っている。それに見た目は20代前半ほどだが実際はそれほど若くない。

 10年前から成長は完全に止まっている。なのでその間も修行は続けた。だがそれでもあの魔将帝と呼ばれる階級の悪魔には遠く及ばないと、一瞬で悟った。なんせ彼はあれで全力を出せていない状態なのだから。

 本気を出せる状態なら、自分が後数十年から数百年単位で修業を積めばかろうじて遊び相手になれるかもしれないが、それでも実力は雲泥の差だろう。

 比べるのもおこがましい。


「やはり、今の状況を少し考え直すべきか」


 そう呟いた後、彼は暗闇の中に消えていった。






 同時刻、ここは帝都。

 帝都では今、大暴動が起きている。天使と悪魔を復活させて従わせることができるようになった。なのでその力を使って他国に侵攻するという宣言をしていたからだ。

 初めはその宣言も貴族達だけにされたものだったが、時間がたってから国民にも同様の宣言を発していたのだ。

 それがあだとなって今は暴動になっている。帝国各地で暴れまくっている悪魔、それを咎めようと混ざってくる天使、そして結局大規模な戦闘に発展してしまい、国内は荒れに荒れている。

 これのどこが完璧に悪魔や天使を従えられているんだと猛反発を受けているのだ。そしてその様子を上空から愉しそうに眺めている人影が、否、人影ではない。頭から鋭い角を生やし、背中からは強靭な、それこそそれで獲物を切り裂けるのではと言われそうなほど強靭な翼が生えている。

 そしてその者は人間ではありえない現象を実現している。それは宙に浮いているのだ。それも瞑想ではない。

 瞑想なら魔力の多い人間が修行するときに魔力を練ることで浮くことはできる。だが彼は瞑想をしていない。

 つまりは彼は自分から放たれている魔力圧、すなわち魔闘覇(まとうは)だけで浮いているのだ。本来ならこれは竜魔導師でもなかなかできるものではない。

 そしてその大物感漂う存在は、


「ハハハ、人間ってのはつくづく愚かだね~。聞いた話によれば、我々を魔法具によって従わせられる、とか御触れを出してたそうじゃないか。なんと愚かなことを。そうして我々の力を利用できると思い、我らの封印を解いたのだが、結果はこのざまで国の上層部は崩壊寸前、といったところか」


 そういいながらケタケタと笑い、帝都を眺め続けていると、


 ヒュッ!


 と、転移で後ろに現れた者が、


「アルマーダ様、周辺には特に我らの同胞はいないようです。この場に同伴した者だけのようです」

「そのようだな。ご苦労だ」

「ありがとうございます」


 そういって彼が一歩後ろに下がった瞬間、両隣に二人の悪魔が現れた。一人は男ならだれでも卒倒しそうなほどの美貌を持つ、女性の悪魔。

 もう一人は小柄でまだ子供という雰囲気の抜けない少年のような悪魔。すごく周りに興味なさそうな顔をしている。

 その二人がおそらく報告に来た悪魔と一緒でアルマーダの配下なのだろう。それぞれ個性的な感じだが、立ち居振る舞いに一切のスキがない。


「さて、お前たちにはひと暴れしてもらおうか」

「「「承知いたしました」」」



 そういって三人の悪魔は強欲のアルマーダの指示に従い、帝都に攻撃を仕掛け始めた。




 アレンの知らないところで、世界情勢はどんどんと動き出している。

本日もお読みくださり、ありがとうございました。

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