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最強竜魔導師誕生!

 今日はある場所に向かっている。そう! 魔法属性適正判断の儀式をするための神殿のとある祭壇に向かっているのだ! 自分があまりに特殊属性が得意なせいもあって、ほかの属性はそうでもないんじゃないかと思ってしまう。不安だ……。

 ただ楽しみでもあるんだよな。不思議だこの感じ。

 今日は僕の晴れ舞台でもあるので家族全員で神殿に向かっている。神殿の名前は『降臨神殿』

 名前の由来はシンプルで竜が儀式をしている人間を認めたら必ず『竜の卵』として降臨するからだ。人々はこの卵を大切に育て羽化すると、契約を結び力を貸してもらうというわけだ。


「父上、適性判断の儀式は具体的にどのような手順で行うのですか?」

「ああ、そうか家庭教師はそういう儀式があるという事実しか教えんから、手順までは知らんのか。なら今説明するか」

「はい。お願いします」

「うむ。まずは魔法適性の方だがこれは簡単だ。祭壇に二つ並んでいるほこらのようなものがある。それは常に白く燃えているのだが、自分の適性が判明するとその属性の色に変色する。炎なら赤、雷なら黄色という具合に。そしてそれが判明した時に初めて竜の話だ。隣の祭壇も同じように燃えれば竜がその人間を認めた証拠となり、竜の卵として降臨してくれるのだ」

「それは降臨しないときもあるのですか?それと一つの属性しか降臨してくれないのですか?」

「もちろん降臨しないときもある。私やアンネがそうだ。魔法の才は多少あったようだが竜が力を貸してくれるまでには至らなかった。竜の数についてだが、それについては心配無用だ。才覚ある属性の数に応じて降臨してくれる」


 なるほど~、大体わかった。そして竜に認められるというのがとんでもなくすごいということも分かった。なんせ父上と母上は国からも認められるほどの凄腕魔法使いだ。

 父上に関しては訳あって文官をしているだけで戦争や魔物退治などには必ず呼ばれる。

 その父上や母上ですら竜に認められなかったのだ。狭き門なのは言わずもがなだろう。

 ちなみに僕が扱える魔法は基本全部だ。炎、水、雷、氷、大地、転移、結界、回復、身体強化、そして闇。光と風は全く使えなかった。回復も少し苦手なようだ。ただ現状でも僕はかなりすごいらしいけど……。ほかの人はせいぜい2,3属性扱えればいい方だそうだ(ここで言う、扱えると言うのは戦闘で役に立つほどという意味)。


「アレン、お前には相当な魔法の才がある。もしかしたら竜が降臨するかもしれん。そうなったら神殿の者のいうことをしっかりと聞いて、世話の仕方や契約方法も学んでおくのだぞ」

「はい。父上」

「うむ」


 って、勢いで返事しちゃったけど父上完全に僕が竜に認められるって信じて疑ってないじゃん! これ認められなかったら、父上しばらく立ち直れないんじゃ……。うれしいけど、すごい親バカだ。


 そうそうアデナウアー家はもうすでに診断を受けたらしい。僕が生まれた時、男の子が生まれて今では親友だ。名前はツェーザル。そして適性は水と大地だったそうだ。特殊属性は身体強化のみ。上位属性は全く使えないらしい。それ以外はそこそこという感じらしい。

 そしてなんと! 我が親友ツェーザル君は水の竜に認められたらしい! すごい!

 そのことを父上と話していると父上が、


「確かにツェーザルも認められたらしいな。ただ本人が言っていたが、認められたといっても下位竜だったらしい。竜にも格があるからな。竜に認められること自体すごいのだが彼は、それでも自分の才覚は下位竜に認められるのがやっと。もっと頑張らねばならないと言っておったな」

「竜の格については家庭教師の先生から伺っています。なんでも、下位竜、上位竜、超位竜、そして神位竜がいると。神位竜については発見事例が片手の指で数えられるほどしかないと」

「そうだ。それだけ上がいるというのに、下位竜にしか認められなかったから、彼は少し落ち込んでいたのだ。ただ間違いなく魔法の質、威力ともに圧倒的に上がっていたらしい。例えるなら水たまりが、対岸が見えないほど巨大な湖ほどにまで」

「そ、そこまで変わるのですか!? ならもっと上位の竜に認められれば……」

「ああ、小国程度じゃ、徒党を組んでも相手にならんだろうな。それほどまでに竜に認められた魔法師、竜魔導師は圧倒的なのだ。だから皆、魔法師を目指すなら一度は竜魔導師に憧れるのだ」


 今、本格的な話を聞いてようやく実感した。父上と母上が何故いつもお酒が入ると竜魔導師になりたかった、といったような話をしていたのか。それにしても不思議だな。ツェーザルはバリバリの騎士の家系に生まれたのにめちゃくちゃ魔法の才に恵まれてるじゃん。面白い。

 エーヴァルト男爵は身体強化と簡単な魔法なら自然属性はほとんど使えるが、戦闘に役立つほどなのは火属性のみらしい。


 そんなことを考えていると、神殿に着いた。


(うわぁ、すごい!)


 元の世界では絶対に拝めないほどの完璧な神殿だ! なんて神秘的なんだ……


「ようこそ、降臨神殿へ。本日はいかようなご用向きでしょうか? お祈りですか?」


 と受付の女の人が尋ねてくれた。


「ベッケラート男爵家の者だ。今日は息子の適性判断の儀式を頼みたい」

「なんと! あのベッケラート男爵家の方々ですか!? 気づけず誠に申し訳ありません!」


 受付さん、めっちゃ動揺してる……。そりゃ、いくら男爵家で爵位は高くないとはいえ、ここいら一帯をほかの貴族領にも手助けして治めているほどの貴族が来たら、普通にビビるよね……。


「そんなにかしこまらずとも良い。今日はこちらが頼みごとをするために来たのだ。最低限の作法さえしっかりしてくれればあとは一切文句は言わんよ。よろしく頼む」

「こ、こちらこそ、よろしくお願い申し上げます。では、ご案内いたしますので、こちらへ」

「うむ」


 いつも思うけど、父上ってかなり良心的な貴族だよね。それに、一瞬で受付の人を安心させた。マジで凄い……。


「こちらです。ここの祭壇の前で立っていただき、魔力を放出していただきます。そうすると適性のある属性が次々と判明する仕組みです」

「よし、ではアレン、行ってこい」

「頑張るのですよ」

「兄さまなら大丈夫!」

「そうでしゅ!だいじょうぶでしゅ!」

「はい父上、母上、それにディルクにアンナも行ってまいります!」


 そして僕は前方の祭壇の前にて立ち止まった。そして魔力を解き放った。

 すると、一気に祭壇の炎の色が変わった。赤色、水色、黄色、土色、そして漆黒……。

 へ?……これってつまり……


「なんと……これは!」

「まさかですの」

「これってつまり、どういうこと?」

「わかりましぇん」


「おめでとうございます! アレン様! 素晴らしいですよ! あなた様の適性は、炎、氷、雷、大地、そしてなんと上位属性の闇です! 途轍もない結果です!」


 つまり、僕は今言われた属性すべてにこれからも上達できる可能性があるってことか……。

 反則じゃね?……でもまあ、損はしないしまいっか。多分これも特権の一つだろう。セオーティタ様ありがとう。

 とその時、


「こ、これは……」

「君、どうした?」

「こ、これをご覧ください……」

「な、なんと……」


 僕も絶句した。 そこにはものすごく鮮やかな色で4つの色の卵が炎の中に浮かんでいた。

 赤色、水色、黄色、土色と。 つまり?……


「なんと、アレン様は4属性の竜に認められたということですか……」

「なんだと!? それはまた……」

「あり得るのですか? こんなこと……。いえ、実際に起きているのですからあり得るのですね……」

「に、兄さますごい……」

「お兄さまは、しゅごいのですか?」

「ああ、アンナ、すごいなんてものじゃないぞ」


 そんなことをみんなで話しているとき、


『確かにすごいなどという言葉ではすまんな』


 ん? 何だ?


「だ、誰だ!」


 父上が叫んだ。僕も内心同じことを思っている。


『ははは。そう慌てずとも良い。すぐに姿を見せてやろうぞ』


 とそんなことを言った何者かは姿を現した。

 それは生物を本能から恐怖させるほどの圧倒的な威圧感。気を抜くと、失禁しそうになるほど恐ろしい……。これは、竜なのか?


「そう恐れるのも仕方ない。むしろ今この場でそこの儀式の担当員とその他ちびっこいの二名以外誰も意識が飛ばずに立っていられることの方がすごいのだ。我はいわゆる、古代竜と呼ばれる竜だ、おぬしら人間の言い方でいうところの黒帝竜(こくていりゅう)と呼ばれる者だ」

「そんなまさか! 古代竜!?つまり数千年単位で生きていると言われるあの最強竜たちの一体ということか!?」

「ほう、おぬしはなかなか博識のようだな。人間の貴族か? まあ良い。それよりも小僧」

「ぼ、僕ですか?」

「おぬし以外に誰がいる? 神位級の竜を何体も降臨させておきながらよくそんなほうけたことを言うものだ……」


 え? 今この竜なんて言った? 神位級の竜を何体も? ってことはつまり……。


「今おぬしが察したようにその卵の者たちはみな我と同じ潜在能力を持つ者たちだ。ただ経験がまだ足りんから生まれてすぐに我とやり合うのは不可能だがな。その者らのような竜が何百年、何千年と生きれば我と同じ領域に来れるかもしれんがな」

「ということはこの竜たちももの凄く強いということですが!?」

「だから先ほどからそう言っておる」

「アレン、つまりはその竜たちは火属性から順に炎凰竜(えんおうりゅう)氷皇竜(ひょうこうりゅう)雷王竜(らいおうりゅう)地帝竜(ちていりゅう)と呼ばれる竜たちだ」

「こんなことがあるなんて、それも驚きですが、それよりも気になるのが、なにゆえ古代竜様であらせられるあなたがここに?」

「なにゆえっておぬし、我が認めたからに決まっておろう。今まで姿を現さなかったのは、我を使役するにふさわしい竜魔導師とやらがおらんかったからだ。そもそも闇や光といった魔法すら行使できる者が少ない。それだけの事」


 え? 僕、古代竜様に認められた? 何だよそれ……要するに僕は5体もの竜に、しかも神位級の竜に認められたってことなのか……。もう反則とかどうでもいいわ……ははは。


「えっとそれじゃ、よろしくお願いします?」

「なぜ疑問形なのだ……全く。それとおぬしは今からこの4体の竜と我の主人だ。敬語や敬称は不要」

「あ、はい。じゃあよろしくね。えっと……名前は?」

「ん?名前などないぞ。まあ、竜魔導師の何人かは便利だからと竜に名前を付ける者もおるが。竜はもともと群れたりせん。なので名前は不要だったのだ」

「えっとなら、名前つけても大丈夫かな? いろいろやり取りしやすいし。ダメ?」

「構わんよ」


 よかった~拒絶されなかった。なら名前つけていいならとりあえず呼び名に困ることはないね。さっきからみんなフリーズしてるけど、とりあえず今はこっちが優先。いったん放置!


「ならえっと、闇の竜で帝王みたいな存在なんだよね?」

「そのようだな」

「なら、ルシファーなんてどう?」

「ルシファー……」


 安直なんて言わせないからな! もろに元の世界のものをパクッテるって思われても仕方ない。だって、しっくりくる名前がそれしかなかったから。卵たちの名前は生まれてから決めよう。


「いいではないか! 中々に格好のついた名前だ」


 おお、なんかすごい気に入られた。お気に召したならこれでいいか。


「じゃあ、これからよろしくね!」

「ああ、よろしく頼む」


 こうして家族を完全放置で、決まった古代竜との契約。契約方法はわからないので職員さんが目覚めるのを待った。父上たちにはいろいろ聞かれたけど、あとで話すで納得してもらった。

 これから忙しくなりそうだ……。ただ、少しわくわくもしてる。

 竜魔導師になれるんだ! うれしいけど、慢心せずに頑張ろう!




いつもより少し長くなってしまいましたが、何とか1話で収まりました。楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします!

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