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卒業資格 その2!

 ダミアンと資格試験を受けて、その後僕は次の試験があるからという理由で解散した。ちなみに卒業資格取得試験を受験中の生徒は授業が休みなので、この後ダミアンは帰るようだ。

 というわけで、僕は魔法の試験説明の教室にやってきた。安定のさらっとした試験の説明を受け、さっそく会場に向かう。

 エレオノーレはすでに試験を受け終えているのでどこか別の場所で待ってくれてると思う。なのでできれば早く終えたい。

 剣術ですらあの評価だったんだ。なら魔法は100パー受かる。受験番号が早めだといいんだけど……


「ちなみに今回の卒業資格取得試験、学園史上最高峰といってもいいほどの化け物染みた成績を残されている生徒さんもいらっしゃいます。一年生でね。なのであなた方も頑張ってください」


 エレオノーレ!! もしくはほかの特1の上位陣! あんたら一体何をしでかしたんや! 教授に化け物って言わせるとか何の冗談かな? 

 あ、でも、よく考えればダミアンもそんな感じだったな。僕も開いた口が塞がらない、みたいな反応されたし……あ、もう考えるのやめよう!


「それでは、ここではさっとどのような試験をするかの説明をしましょう。内容はそこまで複雑ではありません。攻撃魔法が得意な方はそちらの的に向かって全力で魔法攻撃をお願いします。ただしここで一つ注意が。これはあくまでも魔法の試験です。なので剣術とは違って魔法から大きくそれた攻撃方法は無しです。剣術は魔力を剣にまとったりしていいということでしたよね? ですがここでは魔法のみです。武器は魔法発動に関連してくるもの以外一切禁止です。そしてその他の魔法、回復魔法や転移魔法、結界魔法などはそれぞれ違った方法で試験をします。ここまでで質問は?……よろしい。では始めていきましょう」


 そうしてさっそく魔法の試験が始まった。みんなすごいなあ。ここに集まってくるだけあって、実力者ぞろいだ。

 ただ突出して凄いものを披露してるわけでもないが合格が出ている人もいる。つまりは基礎ができているのは当たり前だけど、応用面では今まで難しい授業だったとしてもしっかりと復習してついてきていたかというのが問われているのだろう。

 強烈に印象を残す成果を出さなくても卒業資格は得られるということだな。ならさっきの剣術でもあんなに張り切らなくてもよかったんじゃ……いや、今は関係ないか。集中しよう。

 多分そろそろ呼ばれてもいいころだし。そうこうしていると、見覚えのある人物が。


「おーい、グスタフ」

「ああ、お前か。剣術も受けていたのか?」

「うん。でもグスタフは見かけなかったな」

「俺は昼からになっている。受験番号はわかっても順番はわからないから正確なことはわからないが、おそらく俺の受験番号はかなり遅めなのだろう」

「そういうことか。じゃあ、昼に受けたら今日はもう上がり?」

「そういうことになるな」

「そっか。じゃあ、頑張ろうね!」

「ああ、絶対に受かって見せる」


 そうやって軽く話してから僕たちはまた別れた。


「そうだね。じゃあ、また明日だね」

「ああ」


 そうして待つこと数分。僕の名前が呼ばれた。


「次、アレン・ベッケラート!」

「はい!」


 そう呼ばれた瞬間、周りがざわっと騒がしくなった。なんかこの反応どこでも起こるな。


「では君の試験項目は何にします?」

「攻撃魔法で」

「わかりました」


 そういって教授は攻撃魔法の評価項目のページを開いた。


「では、始めてください」

「はい」


 合図が出たので僕はまず空中に大きめの水球を作り出し、そこに青色にまで温度を上げた超高温の炎の魔力を近づける。

 するとすぐに水球は気化する。それを結界魔法で完全に覆って、対象に飛ばす。そこに初級の雷魔法、『落雷(らくらい)』を放つ。すると、気体を覆っていた結界は大爆発とともに爆散し、的も木っ端みじんになった。

 今のは水の熱分解である。本当は電気分解の方がシンプルでやりやすいんだろうけど、それはほかの物質が混じった水でないとできない。だが魔法で生み出す水は何も混じっていない不純物のない水だ。純粋な水は電気をほぼほぼ通さないので分解はできない、だからここでは熱分解を用いた。

 はじめはできるか不安だったけど、なんかできたような? ので、それを使うことにした。今回は魔法理論を用いたというより、前世の科学知識を用いたといった方がいいだろう。

 教授は絶句している。当然だろう。手間が多いがこの魔法を実践すべき理由がいくつかある。それは何と言っても消費魔力の少なさだ。全部初級程度の魔法しか使っていない。なのに魔力強化された的を跡形もなく吹っ飛ばすほどだ。

 これはまた、あとで質問攻めを食らうかもな。だが教えて理解できるかどうか。なんせこの世界、科学の発展が圧倒的に遅れてるのだ。魔法に頼りすぎた弊害(へいがい)だろう。

 今はこの魔法の名前を決めておくか。この世界の人にもぼんやりとイメージしてもらえそうな名前……『融合爆発(ゆうごうばくはつ)』でいっか。融合どころか分解してるんだけど、まあ、いろんな魔法を組み合わせてるから、その方面で理解してもらえるだろう。


 

 とりあえず僕としては判定が欲しいので教授には戻ってきていただきたい。


「教授?」

「へ? あ、すみません。いや、それにしてもアレン君、すごい魔法でしたね。いろいろ聞きたいことはありますが、今はとりあえず判定が優先だ。では判定を……文句なく合格です!」

「やった! ありがとうございます!」

「はい。これからも頑張るといいですよ。それとこれからちょくちょく私の研究室にも寄ってくれますか? いろいろ語らいたいこともあるので」

「承知しました。教授」

「よし。ではお疲れさまでした。今日は帰ってゆっくり休んでください」

「はい!」


 そうして僕は無事試験を終えることができた。あの後グスタフにすごい詰め寄られたけど、明日話すで何とか納得してもらった。

 その後はグスタフの乾いた笑いしか出てこないようなすごい威力の魔法と彼の合格を見て、すぐに会場を出た。

 早く試験を終えたかったのだ。だって、大切な人を待たせてるからね。

 というわけで早速校舎を出るとすぐにエレオノーレがいてびっくりした。


「うわッ! びっくりした~」

「なんですか? その出た~! みたいな反応は」

「え?」


 そのネタ、こっちにもあるんだ。てことは霊とかもいるのかな? あ、いや、でも魔物とかもいるわけだし、アンデッドというくくりで魔物として存在していても不思議じゃないのか。

 まあ、そんなことはどうでもいい。今は彼女のことが優先だ。今日、僕たちは仮ではあるが卒業したも同然だ。資格証明書をその日のうちにくれるというのはありがたい。

 なので僕はまず父上と、陛下、コルネリウスさん、実家の家族に手紙を書かないといけない。というわけでいったん男子寮に戻り、手紙を即行で書き、学生生活を送る間ずっと僕のお世話とお手伝いをしてくれた使用人、デニス・バーデンに至急、手紙を届けるように申し付ける。この後はエレオノーレと出かける予定だ。

 デニスは優雅に一礼し、部屋を出ようとするが僕はそこでいったん彼を呼び止める。


「デニス、ちょっと待って」

「は、はい。ご主人様。どうかされましたか?」

「君にはこの一年間、とてもお世話になったよね。執務の手伝いをしてもらったり、勉強してる間の部屋や身の回りの世話をしてくれたり」

「もったいなきお言葉、感謝いたします。ですが、それらは使用人として当然のお仕事でございますれば、お気になさらなくてもよろしいのですよ?」

「そんなわけにはいかないよ。誰だって一人で生きていくことは不可能だ。中には貴族はすべてにおいて偉いといったような神にでもなったつもりかと言いたくなるような態度をとる人がいる。でも実際には貴族は仕事が多いうえに、館も大きいから使用人に手伝ってもらわないと家が回らない。そこに感謝できないような愚か者にだけは、僕はなりたくないんだ。ここまで無事に一年間過ごせたのは間違いなく君のおかげだよ。ありがとう」


 僕がそういうと、デニスはうるうると泣き出してしまった。え? どうしよう……そんな感じで僕があわあわしていると、


「わ、私は本当に、幸せ者、です。王家の方々にお仕えして3年ほど、日々がとても忙しく大変でした。ですが、それでも陛下のお役に立てるということが何よりも、うれしかった。ですが、ある日陛下に、とある騎士爵家の専属使用人になって、ほしいと、いわれました。初めは左遷かと、思いました。ですが、六歳で叙爵された、あの方だと、お話を伺いました。私の実家も、貴族なので、悪魔の話は、耳に入っておりました。なのでそんな恐ろしい連中を、討伐できるような素晴らしい方に、お仕えできるなんて誇らしいとさえ、思っておりました。そして今回そのようなお言葉までいただけました。本当にうれしゅうございます。お誓いします。わたくしは生涯、あなた様にお仕えし尽くすと。ですから私の心からの忠誠をお受け取りくださいませ」


 デニスがそういってきた。僕は途中からもらい泣きしていた。嬉しかったのだ、そこまで言ってもらえて。そして心に誓った。彼のその深い忠誠心に必ず報いてみせると。

 僕はもう一度お礼を言って。彼を送り出した。その後はエレオノーレとこの間いった高級料理店で食事を楽しんだのだった。





遅くなりました! 申し訳ありません!

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