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臨時休講!

 対抗戦が終わって学園のみんなも完全に休憩モードだ。あれは疲れるもんな~。わかるよ生徒諸君。

 今日も今日とてエレオノーレと一緒に寮から出かけた。別に今日は休講なので登校自体はないが対抗戦の初めの時にエレオノーレと出かけようって言ってたからな。

 本来なら家でぐーたらしたいと思うんだろうけど、僕は違った。昨日はエレオノーレとどこに行こうかとか考えながら夜は床に入ったからな。今日がとても楽しみだったのだ。

 それはエレオノーレも一緒だったようで、今日を楽しみにしていたとすごく喜んでくれた。学級対抗戦が終わったばかりで思ったよりもみんな疲れてるし、もしかしたら出かけるのはなくなるかもしれないと思ったりしてたそうだ。

 そんな時に僕から一緒に約束してたように出かける? といった誘いがあったからうれしかったといってくれた。

 僕としては泣くほど感動されたから逆に対応に困ったけどね……。


「今日は本当にありがとうございます。休校日で外出も自由な日ですのでせっかくならアレン様とお時間を共にしたいと考えていたんです」

「そ、そっか。僕もそういってもらえると嬉しいよ。でも心配しなくてもよかったんだよ? 僕は元から確実に対抗戦が終わったら君とお出かけしたいと思ってたから」

「そ、そうだったんですか?」

「うん。元からそう思ってたっていうのもあるし、君が三位決定戦で最上の結果を残していたのもより一層お出かけしたいと思った理由だね」


 そう僕が言うと、エレオノーレはきょとんとした顔をした。あ、その顔も好きです。可愛いです。それはとりあえず置いといて。


「どうしてもどこか連れてってあげたくなったというか、だってあんなに頑張ってたんだし、しかも相性的にはかなり厳しいダミアンを相手に。本当にすごいことだからエレオノーレのお祝いもかねて今日は全部僕が支払いを持ちます!」

「ええ!? そ、そんな、嬉しいですけど悪いですよ!」

「うーん、でも僕としてはどうしてもエレオノーレのお祝いをしたくてさ……ここは僕にカッコつけさせてほしいな、なんて。ダメ、かな?」

「い、いえ。殿方にそこまで言っていただいてこれ以上意地を張るわけにはいきません。ただ、本来なら優勝という偉業を成し遂げたアレン様こそ祝われるべきではとも考えるのですが……」


 うそ、そんなこと考えてたの!? なんていい子なんだ……。いや、確かに優勝の方が三位よりすごいのかもよ? でも僕としては偉大な竜魔導師を目指すのは当然として、コルネリウスさんの前で父上を超える! と豪語してしまったのもあって、すごく厳しい戦いであったのは事実だし、決勝に出ていたメンツを見下す気持ちなんてかけらもない。けど内心ではこんなところで躓いていられない、という気持ちの方が強くて、なので優勝もすごいことと言うよりは、父上を超えるほどの力をつけ、すごい竜魔導師になるのを目指すなら出来て当たり前のこと、という認識が強かったんだよね。

 なので、祝ってもらえるなんて真剣に思っていなかった。まあ、うちの家族には昨日盛大に祝ってもらったんだけどね。それはそれで”ああ、やっぱり”と納得してしまうのが、うちの両親の親バカっぷりを表してると思う。

 勿論嬉しくないなんてことはない。すごく嬉しいよ。なのでそれもあってか、祝ってもらうことは考えてなかった。

 むしろエレオノーレを祝いたい気持ちでいっぱいだった。なので僕は、


「ありがとう。嬉しいよ。でもやっぱり僕としては君のお祝いが最優先なんだ」

「わかりました。それではお言葉に甘えさせていただきます! よろしくお願いしますわ!」

「うん! もちろん!」



 そうして僕たちは校外に出て、高級料理店などが出店されてるエリアや高級装飾品店などを見て回った。

 なんか、前世で妹たちに『女の子はアクセサリーとか好きな子多いよ!』と聞いたことがあったので、そこにも入ってみたのだ。もちろん人それぞれなのでそういうのに興味ないという女の子もいるかもしれない。でも物は試し、比較的好んでそうな人が多いなら入ってみる価値はあると思う。

 そして事実、その作戦は大成功だった。すっごくキラキラした笑顔で僕に『こんなのはどうですか?』とか聞きながら、髪飾りなどを選んでるエレオノーレは正直言うとすごく可愛かった。普段は大人びていて淑女というイメージが強いけど、やっぱり女の子だから可愛い物や綺麗な物好きなのだということがよくわかった。

 そういうエレオノーレの普段は見られない年相応の姿も楽しめたので結果的には大成功だった。よく女の子の買い物は長くて疲れるなんて話を聞いたことがあるけど、僕は今そんなことは感じない。

 これはたぶん、好きな子が僕の考えたデートプランですごく楽しそうにはしゃいでくれてるからだろう。そんな姿を見ているだけで幸せになるんだから。楽しくないわけがない。

 なのであんまし僕はこの買い物が疲れるなんて思わない。

 そんなことを考えていると、エレオノーレが僕の方に駆け寄ってきた。


「アレン様! 本当に今日はありがとうございます! とっても楽しいですわ!」

「喜んでもらえたようで何よりだよ。僕も君に楽しんでもらえて、今日の計画を立てた買いがあるってものだし、何よりもすごく楽しい。こんなに楽しい外出は初めてだよ!」

「ほ、本当ですか?」

「うん!」


 そう答えると、エレオノーレがぱぁッと花が咲いたような笑顔になった。本当にエレオノーレは表情豊かで素敵な子だな。


「それじゃあ、気が付いたらもうお昼だし、どこかお店に入ろうか」

「そ、そうですわね。気が付いたらもうこんな時間!」

「ははは、楽しい時って時間の流れがほんとに早く感じるよね」


 そういって僕たちはとあるお店に入った。高級感あふれるこの辺りでは最上級のレストランだ。


「あ、あの、いいんですか? アレン様、すごく高級そうなお店ですが……」

「もちろん心配ないよ。エレオノーレだってすでに僕が自分でお金を稼いで本家とは独立してるって知ってるでしょ?」

「は、はい。そのお話は伺ってますけど、まさかそんなにすごい額なんですか?」

「うん。平民なら2世代くらいは遊んで暮らせる。豪商だったとしてもその人だけの世代なら一生遊んで暮らせるだけの財産は築いてるんだ」

「そ、そんなにですか?……」


 エレオノーレが絶句しちゃったよ。でもまあ、今ので僕がデートのおごりぐらい余裕だって言った意味が理解できたと思う。

 一番安い料理で一食銀貨2枚(日本円で2万円)だが、それでも週一で通ってたって使いつくせないほどのお金がる。

 普段から散財はしない主義なので資金はたまる一方だ。なのでこういう時くらいはケチらず使おうと思った次第だ。


「うん。その上普段からあまりお金を使う機会がないからたまる一方なんだよね。だからこういう楽しいことをしてる時はケチらず使おうと思ってさ」

「そういうことだったのですね。わかりましたわ! では今日はちょっと図々しくアレン様に甘えさせていただきますわ!」

「うん!」


 本当にエレオノーレはすごいなあ。多分、今のセリフ言われたら男の人は大体いちころなんじゃ?

 そんなことを考えていると、なぜか急に回りがざわつき始めた。


「お、おい、うそだろ? あの子、アレン様って今隣の女の子に言われてなかったか?」

「ま、まさか!? アレンって、あのアレンか!?」

「シィーーッ! 馬鹿かお前、対抗戦の時は一生徒として参加してるからそうやって名前で呼ばれることもあったんだろうが、今はたぶん外出中だろ、つまりは今は生徒としてではなく、一私人として過ごしてるはずだ。この意味わかるな?」

「?」

「ちょ、ちょっとあなた、どういう意味?」

「あんたもわかってなかったのか? 最近噂になってた6歳で叙爵されたっていう男の子いただろ? その子供の名前もアレン・ベッケラートだ」

「「!?」」

「わかったか? つまり今あの子は、いや、あの方は貴族としてこの場にいらっしゃる。口の利き方には気ぃ付けろ」


 そんな感じで小声で話してる人がいた。でも、ごめんね今回はちょっとざわつきの理由が気になったから耳に身体強化しちゃった。なのでもろ聞こえです。

 でも、そうかそうなるな。今僕は私服だし、学園の生徒としてではなく貴族として行動してることになるのか。

 この世界での学生生活が貴族生活よりも板につきすぎて忘れかけてた。そうだ僕はプライベートでは無条件で貴族として扱われるんだった。

 ああ、これはちょっと失敗したな。お店の予約は済ませてたけど、店に着いたらすぐに席に案内してもらえるように手配しとくんだった。

 これは僕の落ち度だ。そんなことを考えていると、受付係と思われる人が猛スピードでこっちに向かってきた。

 そして開口一番、


「よ、ようこそおいでくださいました! アレン様! 席のご用意はできております! すぐにお伺いに参れず誠に申し訳ありません!」


 そういって謝罪してきた。うんまあ、気持ちはわかるよ? 貴族を入り口でずっと待たせてしかもじろじろ見世物みたいにさせてしまってたってなると、そりゃそういう反応になるよね。

 僕も同じ平民ならそうなってたと思う。こういうところは元庶民だからこそ理解できる僕の利点でもあると思う。

 そして今の謝罪で他のお客さんも店員のことを哀れに思ってるのか、僕の対応をかたずをのんで見守ってる感じだった。


「いえ、お気になさらず。お忙しかったであろうことは店内の状況を見渡せば一目瞭然です。ちょっとくらい入り口で待ったって文句なんて言いませんよ。ほら、肩の力を抜いてください。いつも他のお客さんにされてる対応をしてくだされば僕たちはそれで充分ですので」

「……は、はい。お気遣い感謝いたします!」


 店員はそういうとさっきよりもだいぶ肩の力が抜けたのか、落ち着いた様子だ。そのまま席へと案内してくれた。ちなみに席は二階のようだ。

 そして僕らが階段を上り始めたころ、なぜか一回のフロアから歓声が聞こえてきた。なぜ?

 よくわからなくて不思議に思い、耳を澄ますと、


「おい、見たか? 今のアレン様の対応! あれ子供の対応じゃないだろ! すげえ! まじで器大きいなあのお方!」

「ほんとに! 私、お貴族様を見てて、緊張以外にこんなに感動したのは初めて! 本当にアレン様素敵だわ。きっと素晴らしいお貴族様になられるわよ!」

「いやーほんとにな! 今のにはびっくりした! アレン様さ、さっき女の子といただろ? しかも所作を見るに貴族令嬢だ。つまり一緒に遊んでた最中かもしれない。そんな中で予約してた店で入り口で待つなんて事態になったんだ。いくら店員に非はないとはいえ、場合によってはあの店員終ったと思ったもんな~」

「確かに、場合によっては気分を害されたっていうので多少の罰則を受けてもおかしくはなかった場面よ!」


 そんな感じでみんな騒いでいたのだ。え? もしかしてこの国の貴族は割とほかの国の貴族に比べて穏やかだって聞いてたけど、思ったよりそんなことないってこと? あんなので怒る貴族がいるの? 大げさすぎると最初は思ったけど、今の会話だけで結構重大な現状に気づいたかも。

 もしかすると本当にそういう理不尽な貴族が多くいるのかもしれない。とにかく今はまだかかわることはないだろうからいいだろうけど、将来本格的に貴族社会の中に入っていったときは気を付けよう。

 そして僕はそういう理不尽な貴族にはならないように気を付けよう。まあ、そこについては何も心配することはないだろう。

 なぜなら僕にはすでにお手本にすべき貴族の人たちが周りにたくさんいるから。その人たちを見習えばいい。

 そうこうしているうちに席に着いた。示された場所に僕たちは座った。


「先ほどの店員さんに対する対応、お見事でしたわ。あのような素晴らしい対応がお出来になる殿方の婚約者となれてわたくしはとても幸せですわ」

「大げさだって」


 僕は笑ってそういったが、エレオノーレは首を横に振る。


「中にはあの程度の些事で本当に平民に躊躇なく手を上げる貴族もいますの。そんな低俗な方たちとアレン様では天と地ほどにも差がありますわ」

「そ、そういってもらえるとありがたいよ」

「はい。なのでわたくしもこれからもっと精進して、アレン様のお隣に立って歩いても問題のない女性を目指します!」

「僕にとってはエレオノーレはもうすでに十分すぎるくらい魅力的で素晴らしい女性なんだけど」

「いいえ! そういってもらえるのはうれしいですが、もっと頑張るのです!」

「そ、そっか。なら僕も応援するよ」

「はい!」


 そうして、その後は楽しく話をしながら食事を堪能したのだった。そして食事が終わって店を出るとき、再度先ほどの店員が僕のところに向かってきて、さらに驚いたのがこの店の料理長までもが自ら出向いて、先ほどの僕の『寛大な対応に感謝している』といった感じのことを言ってくれた。

 なので僕はもう一度安心させるために気にしないでいいといったことと、ぜひまた利用させてほしいといったことを伝えた。お店の従業員が涙を流しながら喜んでくれたのには衝撃を受けたね。そうしてお店を出ようとドアに手をかけた。その時になぜか店にいたお客さんも全員手を胸に当てて貴族に対する敬礼をしてきたのには驚いた。

 僕は何となく先ほどのエレオノーレの話から理由が察せたので、軽く手を振って対応し、店を出た。




 その後はいくつかエレオノーレの希望するお店をいくつか回り、今度は違うお店で夕食をとり、お開きとなった。いつも通り女子寮まで送り届け、その日はすぐに男子寮に戻り、翌日からの授業に備え、眠りについた。


ごめんなさい。遅くなりました!

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