決着の時!?
みんなが各々最終決戦に向けて意識を集中させていく。
そして、皆が一気に動き出した。
「業炎竜! 焼き払え! それから、『母なる炎』!」
なるほどグスタフはまず、業炎竜に攻撃させ、僕たちの意識をそっちに向けた後、自分はちゃっかり炎の強化魔法を発動したのか。ただ身体強化をしている時とは感じられる波動が段違いに上がった。身体強化プラス炎の強化魔法……厄介だな。
とりあえずあの炎を何とかしないと、
「『雷速閃動』!」
「『聖水の加護』!」
僕は雷魔法の一つ、体に雷をまとい高速移動をするというものを使い、業炎竜のブレスを回避した。ツェーザルは自分の周囲に水の魔法で防御陣を張る魔法を使い、そして水竜にも防御魔法を張ってもらってた。
そして今ので証明されたことがある。それは、竜の格はあくまでも才能の一つであり、その竜を使役する戦闘においては完全に使役者の実力が物を言う世界なのだと。
まあ、もちろん竜自身に戦わせた場合どうしても格の差が出るが、その差をしっかりと受け止め、意地を張らず、差を埋める努力をすれば素晴らしい戦いができるということだ。
事実ツェーザルがそれを証明して見せた。
「やはりな、ツェーザル、貴様ならこの程度の攻撃に対処するなど造作もない事だろうと踏んでいたが、俺の読みは間違っていなかったようだ」
「それならもっとましな攻撃をしてほしかったな」
「それは違うぞ? 俺は今攻撃とは言ったものの、あんなのはあいさつ代わりだ。だから万全を期すため、俺は炎の強化魔法まで使ったのだしな」
「そのようだね」
やっぱりグスタフは油断ならないな。僕がこの間楽勝に勝てたのも、彼の油断があったからだ。油断していない彼は恐ろしいだろうな。しっかり集中していこう。
「さすがは二人とも最強の特1教室の上位者だね」
「ほざけ。貴様もおかしな魔法で難なく躱していただろう」
「まあね」
とは言いつつも、さっき業炎竜が放ってきたブレスは僕たちや他の特1の上位陣じゃなければ防げなかっただろう。それくらいの威力があったのだ。それをここで何も問題とされないのは、二人がそれほどの域にいる武人だからというのがあるだろう。もちろん僕だって負けてないと思ってるよ。
「とにかくさっさと続きをやろうよ」
「言われなくとも、『火炎爆裂熱波』! 業炎竜、お前も行け!」
「その魔法を知ってるとはさすがだね! 『大地の岩壁』!」
「そういうツェーザルも知ってたんだね! なら僕は、『電磁力場』!」
ツェーザルは大地の防御魔法、僕は電磁波の力場を生み出し、対照の進行方向をずらすと言う魔法だ。これは僕のオリジナル魔法だ。
それにしてもあの魔法、災厄級の有名な魔法だとは知っていたけど、それは僕の家にたまたま魔法図鑑のようなものがあったからだ。父上も母上も優秀な魔法師だからね。
学園でもまだ習っていない。伝説級以上の魔法は今学期の後半あたりからだったはず。あくまであの魔法が有名なのは、学園で伝説級以上の魔法を習った者の間ということだ。
それもそうだろうそんな危険な魔法平民や戦闘職でなく、魔法や戦闘技術の危険性を理解していない人間に(特に貴族)教えられようはずもない。
だからすごく不思議なんだよね。
「そりゃ、毎日のように学園の図書館に通ってるからね。その中でも魔法書の棚に関してはかなりの頻度で通ってるよ」
「そういうことか」
なるほどね。図書館なら勉強熱心な人からすれば宝の山だもんね。
「ふん。水と大地属性が適性のくせに生意気な。俺は生まれが生まれだからな。しかも魔法関連で力を持つお家だ。だがなぜ騎士ばかり輩出してきたアデナウアー家の人間が知っていると思ったが、なるほど、図書館か。考えたものだな」
「おほめにあずかり光栄だよ。それじゃあそろそろこっちも反撃させてもらおうかな? 『破滅の水砲』!」
「僕も忘れないでほしいな! 『月下雷鳴』!」
「くッ! 『烈火の大盾』!」
ツェーザルは一点に収束した水レーザーのような魔法、僕は一度空中に飛び上がって、雷をまとった拳を準備し、一気に放電しながら地面にその拳をたたきつけるという魔法。
そしてそれらを轟々、そう、まさに轟くように燃える炎がそれらを防ぐ。
ちなみに、月下雷鳴という名前の由来は上空に上がって雷を放出する際、月のように真っ白に光るのと夜に練習していたこともあって、月下という名前がポンと思いついたんだ。そして雷鳴に関してはそのまま雷をバシバシ放つから雷鳴ね。
だが僕はそこに、
「いまだ! インドラ!」
「ガウ!」
インドラが目をつむりたくなるような閃光とともに雷をツェーザルの魔法のように収束し、放った。
「しまったッ! 間に合え!」
「まずい! ぬぉーーーッ!」
グスタフは持ち前の強化で底上げした身体能力に物を言わせ、上空に大ジャンプ。ツェーザルは身体強化の度合いを増し、真横に回避。二人は何とかこらえたようだ。
だがこれで終わりではない。
「『死神の大鎌』! 僕は何も雷魔法しか使えないわけではないからね!」
そういって、ツェーザルに向かって漆黒の大鎌を振りかざす。闇の魔力で作った鎌だ。そしてツェーザルはこちらに気づき、
「『水聖剣』!」
水の魔力をまとった、剣でつばぜり合いに持ち込んできた。だけどやはり力と力という点で戦ってしまえば、僕が有利だ。なんせ元からの魔力量だけでも僕は相当なものらしい。そのうえルシファーたちからも力を注いでもらってる。今の強化で足りないなら……
「なッ!? まだ強くなるというのかい!? 君の魔力は底なしか!」
「まあね、今んところ疲れる気配とかは全くないよ」
「ちッ! 化け物が……」
あの、グスタフ君? その言い草はひどくない?
「とにかく貴様を超える! 俺の今の目標はそれだけだ!」
「望むところだよ」
「僕もそのつもりでいるよ? グスタフばかり見てたら足下救われるよ?」
そんな感じでとりあえず今は、ツェーザルとも距離をとって話してる状態だ。観客は本当に試合開始直後から一切しゃべっていない。
それだけ、僕たちの戦いが衝撃的なんだろうね。まあ、めったに見れるものではないしね。
「それじゃあ、そろそろ決着をつけようかな?」
「その意見には賛成だ」
「僕もそうしようかなと思っていたところだよ」
そうして、僕たちはまたも一斉に動き出した。僕は『死神の大鎌』を構えながら、左手から『氷槍』という魔法を放った。
「そんなもの! 『爆炎槍』!」
そういってグスタフは炎の槍で僕の氷の槍を打ち消した。そして
「業炎竜、援護頼む!」
「グォーー!」
彼は業炎竜にいくつかの魔法を放たせて、自分はそのまま突っ込んできた。僕の方はそれらの魔法の処理をインドラに任せて次の行動に移ろうとした。だがそこに、
「『水聖剣』!」
剣を水の魔法剣に強化したツェーザルが切り込んできた。だがそれこそ僕が望んだ状況。二人がつぶしあってくれてる間に、僕は、伝説級のあの魔法の発射準備を終えていた。
「漁夫の利ってやつだね。さあ、終わりだ!『永久氷獄』!」
「しまッ!……」
「まさか!?……」
二人はその言葉を最後に永劫の氷塊の中に飲み込まれた……
「ふう、終わったね」
そういうと、ようやく放送員が放心状態から戻ってきたのか、放送を再開した。
「し、勝負あり! グスタフ選手、ツェーザル選手、戦闘不能! よって今回の第一学年学級対抗戦優勝者はアレン・ベッケラート! なんという凄まじい攻防の数々、これは学園の歴史に新たな一記録を増やす結果になったでしょう! 観客の皆さん、お見逃しはありませんでしたか? もしここで見逃していたら今後、生涯二度とこのような素晴らしい戦いは拝めませんよ! それでは素晴らしい戦いを見せてくれた三人に惜しみない拍手をよろしくお願いします! では、これにて閉幕です!」
そうやって放送員が言い終えると、盛大な拍手と歓声が鳴り響いた。その間に僕はちょっとした生活用の炎魔法で、二人を氷から出す。
「全く、最後の最後でこんなでたらめな魔法を放ちやがって……完全な俺の負けだ、アレン」
「僕も初めて君と本格的な舞台で戦えると思っていたんだけど、この様とはね……」
「そうだね。ここはあえて謙遜などしないでおくよ。僕も頑張ったわけだし、それにここで謙遜なんてしようものなら今まで切磋琢磨して共に歩んできた君たちへの最大の侮辱になってしまうしね」
「はぁ、そこまで完璧な対応をされてしまっては、苦言の2、3個くらいは言ってやろうと思ってたが、それもやめようと思えてしまうな……アレン、おめでとう」
「僕からも、心からの称賛を、おめでとう」
「二人とも、ありがとう」
そうして、僕たち三人は会場を後にした。その後、控室で待っていたが、その間に3位決定戦が素早く執り行われ、表彰の時間となった。優勝は僕、そして準優勝この大会は少し特殊なんだけど、決勝で僕に勝てなかった人の中で、特に素晴らしい戦いをみんなに見せたものが準優勝となるんだって。そして今回その素晴らしい選手が二人同時にダウンしちゃったので、グスタフとツェーザル、二人同時に準優勝らしい。
そして三位決定戦は決勝で敗れた者と二次予選で負けはしたが、いい戦いだった者でバトルロワイヤルが執り行われ、いい戦いをした者に選ばれたのがエレオノーレとベティーナだ。当然だろう。そして勝者は……なんとリベンジを果たし、エレオノーレだった。これにはみんな驚いていた。持ち前の賢さでもってダミアンの策のさらに上を行き、何とか勝利をおさめられたようだ。
これで今回の学級対抗戦は終わりを迎えた。僕らはそれぞれ陛下や学園長からお褒めの言葉をいただき、敗れた者にも陛下はお言葉をくださってた。みんな涙を流しながら喜んでいた。
そうして、対抗戦自体は終わり、その後、閉会式が行われた。僕ら代表がまた挨拶をし、ようやく終了だ。
その後はみんな連日の疲れをいやすため、寮に戻っていった。
ついに終わりました! よかったよかった。これからも、アレンの活躍に期待です!




