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決勝開幕! 

 準決勝が終わり、それぞれのブロックの代表選手が決まったその翌日、昨日は準決終わりに両親と兄弟たちが学園内の食堂ではあるがお祝いパーティーを開いてくれた。

 当然エレオノーレも一緒にね。まあ、学園の食堂といっても高級店の方だけどね。貴族の子息たちが使うようなところ。

 僕も貴族の子息な上にもうすでにお家も持って独立している。さらに魔法具関連の収入にアーベントロート卿を救った時の報酬で、実はすでに結構な財産を築いてる。なのでこういったお店も自分のお金だけで余裕で入れる。

 ただ昔日本人の一般市民だった影響か、この世界に生まれたときから贅沢に抵抗があり、あまり散財をしてこなかった。

 父上たちには相当驚かれた。当然だ、普通の子供ならうちの実家ほどの有力貴族に生まれたのならもっと贅沢しいに育ってもいいはずなのだ。

 それがこんなに金銭感覚が庶民のような子供に育っているのだ。親からすれば不思議で仕方ないだろう。

 まあ、でもどのみち散財しすぎるのは良くないことなので今でもそういう贅沢は基本しないので、こういった高級食堂にもほとんど入らないし、将来への貯金にもなるのでいいことづくめだ。

 今回もこの食堂にはあまり来ないという話を聞いて家族全員にはすごく驚かれたけど、それと同時に褒めてももらえた。




 そして、今日はいよいよ決勝だ! 長かった学級対抗戦もいよいよフィナーレだ。ほかの学年も同じような感じだ。

 今日も今日とて、愛しのエレオノーレに癒されながら一緒に会場に向かっております。


「今日はいよいよですわね」

「そうだね。グスタフやツェーザル、ダミアン、カールも残ってる。かなり厳しい戦いになりそうだよ」

「ですわね。わたくしとベティーナさんは残念な結果になってしまいましたが、客席から精いっぱい応援させていただきますわ」

「うん。よろしくね」


 今の話からも分かるように、実はベティーナも準決で落ちてしまっていたのだ。なので最後に開かれる三位決定戦でエレオノーレと戦うことになるだろうね。

 学園内でもかなり噂になっている。特1の上位陣が二人も落ちたという噂が。ただそれでもベティーナやエレオノーレをなめてかかるような者が今のところ出ていないんだけど、それは今まで彼女たちが相応の力と成績を示してきたのと、今回の戦い、二人ともものすごい強者と当たっていたからだ。

 だから誰も彼女たちを弱いなどと勘違いしていない。中にはしている者もいるかもしれないけど、それは後々彼ら自身が恥をかくだけだしほおっておいても問題なさそうだ。

 何よりエレオノーレ本人たちが気にしていないからね。外野が騒ぐのもおかしいだろう。

 というわけで、今からはしっかりと戦闘モードに入って集中だ。


「じゃあ、会場に入るよ」

「はい、頑張ってください!」

「うん」


 そうして会場に入っていった。




 会場に入るとすぐに案内員さんが来てくれた。そして今回の控室に連れて行ってもらう。その後はいつも通り精神統一と魔力鍛錬の同時並行のため瞑想に入る。

 そして30分ほどたったころ。今日もまた、案内員さんが来てくれて会場に案内してもらった。もう大体の会場の構造は把握しているのだけど、これはもう半ば事務的作業というか、やってしかるべき行動なのだ。

 そうして案内してもらってついた先には試合会場の入場口。


 よし、ここからは余計な雑念は一切不要。目の前のことにだけ集中だ。そうして気持ちを整えていると、放送が流れてきてまた、名前が呼ばれた。なのですぐに入場する。

 すると会場にはすでにグスタフとダミアンがいた。その後も続々とメンバーが入場してきて試合開始前の待機時間となった。

 みんな静かにその時を待っている。


 そして、


「さて! いよいよ本日最後の項目! 第一学年による決勝戦です!」


 放送員がそういうと、会場に盛大な歓声が響き渡った。


「今回の第一学年の対抗戦、注目選手が勢ぞろい、一瞬たりとも目が離せないでしょうから、どうか皆さんくれぐれもお見逃しだけはなきようお気を付けくださいませ! それでは初めていただきましょう! 第一学年決勝戦、開始です!」


 そういうと、審判の人が


「それでは、はじめ!」


 合図をした。それと同時にみんな一斉に動き出す。そしてまず最初に僕に突っ込んできたのはダミアンだった。


「ようやくお前と本格的な勝負ができるな! 今回はお互い出し惜しみなしで行こう! お前も全力で来い!」

「もちろんだよ、それじゃあ僕も身体強化だけじゃなくて、本格的に準備に入ろうか!」


 そういうと僕は5体の竜全員に呼びかけ、力を供給してもらう。


(みんな、出番だよ! 今はまず力の供給からお願い!)

『ようやく我らの出番か。前回はブイのみが出たからな。今回は力を貸せるようで何よりだ』

(ありがとう。ルシファー。全力で力の供給を頼むよ。そのうち君たちにも戦闘に参加してもらうかもしれない)

『あい、わかった。準備だけはしておこう』

(みんなもよろしくね)

『『『『ガウ!』』』』


 だいぶみんな声変わりしてきたよな~。今もみんな可愛いけど、小さいころはもっとかわいかったんだけどな~。

 これが成長していく子供を見守る親の気持ち? まあ、僕は親ではないけど。

 まあ、今はとにかく試合に集中しよう。


 僕が竜から力を借りて魔力を解き放った瞬間からみんな一斉に立ち止まった。舞台上が一気に緊張に包まれたのがわかる。

 今回、グスタフ、ダミアン、ツェーザル、カールだけでなくほかのクラスの人も決勝に進んでる。その人たちも一斉に僕の方を凝視した。


「なるほど、貴様もはじめから全力、ということか。ならば私もそうするか」

「そうだね、君だけ全開じゃだめだよね」


 そういうとグスタフとツェーザルも一気に魔力量が膨れ上がった。すごい覇気だ。やっぱり二人は武人としての覇気もまとってるからか、すごく威圧感があるね。

 カールとダミアンも改めて戦闘態勢に入った。


「やっぱり、わかってたことだけど、あの三人だけは別格だね……」

「はは、カール、俺も忘れないでくれよ。さみしいな」

「わかってる。君も半端な相手じゃないって。でも君自身も感じてるんでしょう? 今までとは次元の違った勝負になるって」

「まあな」


 みんながそれぞれ、戦闘準備に本格的に移ったようだね。ほかのクラスの人たちも続々と持ち直してきてる。

 僕も今ようやく実感した。この試合ヤバい……本気でヤバい。正直あの上位悪魔や上天たちと戦った時はこの試合以上の緊張感だったけど、それ以外の悪魔との戦闘なんて今目の前で闘志むき出しにしてる人たちとこれからするであろう戦闘に比べれば、お遊戯レベルだ。これでようやく確信した。

 あの時の上位悪魔たちとの戦闘、父上は余力があったんじゃないかって思ってたけど、今回のこの試合に出てみて疑問から確信に変わった。師団員を目指す生徒でこれほどなのだ。もちろん最高峰に優秀な生徒が集まってるんだからすごいのは承知の上だけど、それでも学生でこれほどの力を持ち合わせてるんだ。

 おそらく父上はもっとすごい。だからこそ思う。僕ももっと頑張らなきゃってね。


「それじゃあ、行くよ、みんな!」

「来い!」

「いつでも来なよ!」

「く、折れた茶こんな化け物どもと戦おうとしてたのか!? くそ! でも負けねえぞ!」

「私だって、ここまで来たんだから! 負けるわけにはいかないわ!」

「僕だって、ブラント男爵家の名前を背負ってるんだ! 無様は晒せないね」

「俺も久々に燃えてきたぜ」


 みんな各々の決意を胸に戦いに身を投じていく。ここからは一切気を抜けない。おそらく途中からは竜たちにも出てもらうだろう。だが今は力の供給だけで支援してもらう。

 温存の仕方も重要な戦略だからね。



 そうしてアレンたちは激烈な戦いを、学園の歴史に語り継がれるほどの名勝負を、この後演じていくことになる。

 

いよいよ、対抗戦もフィナーレですね! 今回もなるべく2話ぐらいで抑えたい。

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