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準決勝!

 翌日の朝、いつも通り寮から出発する準備を整えてすぐに女子寮に向かった。またまた女の子たちに騒がれて、握手してくださいだの、少しおしゃべりしたいだの言われていろいろあったけど、

 頑張ってそれらに対応しきってからエレオノーレが寮から出てきたのですぐにそっちに向かう。僕の話とかを聞きたがってた女の子たちは残念そうだったけど、僕の邪魔はすまいと素直に道をあけてくれた。

 なんだかんだと女の子たちは基本的に穏やかなんだよな~。まあ、この間の令嬢みたいなのもいるにはいるんだろうけど、少なくとも僕の前には表れてこないのでよしとする。

 この子たちもただ僕と話したいとか、自分でいうのも恥ずかしいけど、少し僕は学園で名前が売れてるからそれで握手してほしいとかそういった感じで、基本的にはかかわりを持ちたいって理由で接してくるだけなので、害意がないからすごく接しやすいんだよな~。というかむしろ貴族令嬢の子とかだと将来のつながりも持てるのでむしろありがたいくらいなのだ。

 そこから人脈が生まれたりするからね。


「おはようございます。お待たせしてしまいましたか?」

「おはよう。全然大丈夫。僕もついさっき来たばかりだから」

「そうだったのですね。いつも本当にありがとうございます」

「いいっていいって。気にしないで。この間の件ももちろんあるけど、僕が来たいだけってのもあるから」

「ふふふ。最後に仰った理由の方が嬉しいですわ」

「ははは。じゃあ、行こうか」

「はい!」


 そういって僕たちは会場に向けて歩き出した。実を言うと来たばかりというのは嘘だ。本当は15分くらい待ってる。でも女の子の支度は男の子みたいに髪を整えたり、顔を洗って着替えて、朝食を取ってで終わりではない。

 お化粧とか、男子よりも複雑な服を着こなし、身だしなみを整えたり、長い髪を綺麗に整えたりと、やることが山ほどある。急いでても時間がかかるものなのだ。

 その辺については前世での一つ下の妹と、双子の妹と出かけたりする時にかなり学んだことだ。朝の9時に出かけようといっていたのにその時は起きるのが遅かったのもあるかもしれないが、10時半くらいまで待たされた記憶がある。

 やっぱり女の子の準備は時間がかかるのだ。だからあえてここは待ってなかった風に行くのがいいと思う。それに彼女は待ち合わせ時間に遅れてるわけではないしね。

 というわけでそういった野暮なことは言わずに二人で気持ちよく笑顔で登校した。




 そうして会場に着いたときにまず話題として聞こえてくるのが、昨日の二次予選だ。僕の相手は氷が適性のすごく優秀な魔法師だった。

 僕とは違い、剣を使わないスタイルだけど、だからこそというのもあるかもしれないが全然間合いに入らせてもらえなかった。誘導がすごくうまかったのだ。気が付いたら次の魔法にロックオンされていてそれを避けるとまた距離を離されるという感じだった。

 ただそのコンビネーションを崩さないことには有利に戦いを進めることはできない。なので炎魔法でいろいろ工夫をして打開策を練り、一気に勝負をつけたのだ。

 ほかのみんなもそんな感じだった。だがそこで予想外だったのが、


「僕たち特1教室の上位陣は落ちなかったけど、まさかそれ以外の特1の優秀な生徒たちが何人か蹴落とされたのが予想外だったね」

「そうですわね。やはり純粋な戦闘というくくりにおいては学園での成績はあまり関係ないということでしょうか」

「そうかもしれないね」


 エレオノーレの言う通りだ。なぜならこういう場合もあるからだ。戦闘訓練の成績はすごいのに学業はそこそこといった感じに、それにこの世界には前世にはいなかった生物、魔物などもいる。そういった者たちと戦う職業についている人たちを親に持つ子供なら小さいころから実戦訓練を経験していてもおかしくはない。

 そういうわけで、何人かは下の教室から勝ち上がってきた者たちがいるのだ。当然当日は荒れに荒れた。別に騒動が起きたとかそういう意味ではなく。信じられないという感じで周りが騒ぎ出したのだ。

 そりゃ、学園トップのクラスの一次予選突破者が序盤で退場したのだ。驚くのも無理はない。


「僕たちも気を引き締めないとね。この間のフランツのように隠れた強者がいるかもしれないし。普段は実力を見せていないだけ、みたいなさ」

「ですわね。わたくしも気合を入れていきます!」


 そういってふんふん鼻を鳴らして気合を入れてるエレオノーレ……か、可愛すぎる! だめだだめだ。気合を入れようと思ったのに彼女を見て逆に気がゆるんじゃった。よし、準決に集中。


「今回の僕の相手はまさにその勝ち上がってきたほかの教室の生徒みたいだし。緊張するね」

「わたくしはさっそくあの方と当たりますわ」

「ああ、ダミアンね。いきなり強敵だね」

「はい……」

「ここはあえて気休めを言わないでおくよ。ダミアンは普段の成績では君に劣るものの、さっき君が言ったようにこと純粋な戦闘能力という点では間違いなく君に匹敵する。下手をすれば魔法師と魔法騎士という組み合わせだから、間合いを詰められれば一気に君が不利だ。慎重に対策を立てるべきかもね」

「ええ。自分が懐周りでの肉弾戦が圧倒的に不利だというのは痛いくらい承知していますわ。なのでまずは、間合いに入らせないのが肝要ですわね」

「うん」


 今回の相性はやっぱりエレオノーレが不利なんだよな~。エレオノーレは身体強化が使えないからな。間合いに入られたら結構本格的にまずいかも。

 何か名案はないかな?

 そんな感じで二人でいろいろ考えながら会場に向かった。



 今回はすぐに試合が始まるので、会場に着き次第お別れだ。さみしいけど仕方ない。ただ悪い事ばかりではない。今回ダミアンとの試合の対策をエレオノーレと一緒に考えたんだけど、かなりいい案を思いついたからね。何とか間に合ってよかった。

 


 そんなこんなで会場に着いたので、すぐに僕たちは別れて控室に向かった。今回僕の控室はかなり遠いのですぐに移動しないといけないのだ。

 そうして早め早めに行動したおかげか、時間よりも30分ほども早く控室に着いた。なので僕は試合が始まるまでは瞑想に時間を費やした。

 おそらくこの先、竜たちに力を借りずに勝ち抜くというのはそんなにできないと思うから。最低でも力の供給ぐらいはしてもらうと思う。なのでより高度な魔力操作ができるように直前までできることをやる。

 そうこうしているうちに時間が来たようだ。


 コンコンッ


「はーい」

「入りますよ。アレンさん、あなたの試合の準備が整いました。一緒についてきてください」

「わかりました」


 そうして僕は付き添いの係員の人についていく。そこから5分ほど歩いたところで今回の舞台に着いた。


「この先です。まだ放送が流れていませんので入場はしないでください。放送が流れ、名前を呼ばれ次第、入場してください」

「わかりました」


 そうしてさらっと説明を受けてから5分ほどして、ようやく放送が流れだした。そして僕の名前が呼ばれる。


「それでは登場していただきましょう! アレーン・ベッケラート~!」


 前世のボクシングの入場シーンを思い出させるような紹介の後、僕は入場した。そしてその瞬間僕の体を押しつぶすかのような勢いで歓声がとどろいた。

 一瞬びくっとしたが、ここまで来たのだ。堂々としていればいい。僕はなるべく泰然とした態度に見えるように心がけた。

 実は今回の準決勝から父上だけでなく母上たちも見に来てくれるのだ。序盤に見に来れなかったのは父上が忙しいのとプラス母上たちがこちらに来るのに時間がかかってしまうので、父上だけで見に来るのは良くないと父上本人が言って、一緒に見に来ることになったのだ。

 なので当然無様な姿は見せられない。頑張ろう!


 そう考えていると、相手も入場してきた。そしてすぐさま話しかけてきた。


「あんたがあのアレン・ベッケラートか。あ、いや、あなたが……」

「別にここでは基本的には権力乱用は禁止だし、同い年なんだから気軽に話してくれていいよ。ただほかの貴族子息といるときなどは気を付けてほしい。それだけさ」

「そ、そっか。ならそうさせてもらうぜ! 俺は今日を楽しみにしてたんだ。特1の奴らはマジでつえーって聞いててさ、実際戦ってみたら本気でヒヤヒヤする場面が多かったんだ! ただそいつらさえも霞んで見えてしまうのが特1の上位陣だって知ってからは戦ってみたくてしょうがなかったんだよ!」

「そう思ってもらえて光栄だよ」

「ああ、だからあんたもしっかり戦ってくれよな! あの化け物どもをさらに超えんのがあんたらなんだろ?」


 そっか、特1のメンバーってほかのクラスとは異次元すぎてもはや化け物扱いになってるんだ……ははは。


「そうだね。特1主席の名に恥じない戦いをするよ!」

「それでこそこの学園の、俺たちの学年の頂点だぜ! そう来なくっちゃな!」


 この子は完全な戦闘狂なんだな……でも悪い気はしない。今まで周りの影響とかで性格がひん曲がってる人とかを相手にしてきたから、こういった純粋な相手との真剣勝負はむしろ心躍るものがある。ふふ、結局は似た者同士なのかもね。彼とは仲良くなれそうだ。


「それでは、はじめ!」


 バーンッ!


 さあ、試合開始のゴングが鳴った。いっちょ暴れますか!

今回も2パートくらいに分かれそうです。

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