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思いもよらぬ強敵!?

お久しぶりです! ようやく時間が取れるようになりました。お待たせして申し訳ありません。

 予選が開始してから5分ほど経過していた。もうほとんどの者が場外か気絶などの戦闘不能状態という状況。

 観客の方ははじめは自分の圧倒ぶりに絶句していたが、途中からは目が慣れてきたのか、楽しんでいた。だが僕には一つ気がかりなことがある。さっきあれだけ威勢よく僕のことを威圧しようとしていた上位貴族の子息と思われる男子生徒が全然攻めてこないのだ。

 決して弱いわけではない。その証拠に今目の前で大柄な男子生徒を身体強化をまとって、剣の一薙ぎで倒して見せたのだから。

 あの時の僕の瞑想に気の抜けたひと振りをさらしてたのとはまるで別人だ。よくわからないやつだな。

 でも彼がかすんで見えてしまうのは今までに冗談のような強さを持つ者とばかり戦ってきたからだろう。具体的にはグスタフにツェーザル、戦ってはいないけど父親のエトヴィンに母親のアンネ(アンネは一般的な魔法師として考えれば超絶優秀だからだ)、他にもアーベントロート卿や認めたくはないが悪魔たち。

 割と普通の人間ならできないような経験や出会いを僕は体験しまくっている。なので目が肥えてしまっているのだろう。



「でも、それで彼の実力が本当に弱くなるわけではないんだよね。強いのは事実。僕の周りの人たちが異常すぎただけだ」


 僕の周りには適性複数持ちがごろごろいたりと結構”天才”という言葉のありがたみがなくなっているような状況なのだ。

 でも、それならなぜ今まで出会った人たちに比べ平凡と感じる相手に対し油断しないかというと理由は一つだ。

 戦いはじめると人は自身の魔力を外に放出する。その波動は人それぞれ異なるため、慣れれば魔力だけで個人を識別できる。

 ただ異なる魔力って言っても似た傾向は結構ある。その証拠に彼からは僕やツェーザル、グスタフと同種のにおいがする。


「なるほど、違和感の正体はこれか……」

『そのようだな。我もおぬしと同じ感想だ』

(はは、やっぱそう思う?)

『うむ、それも下位なんて領域ではない』

(そうだね。ただ多分上位くらいだとは思うんだけど、どうしてかな? 上位にしてはかなり覇気が強烈なんだよね)

『で、あろうな。普通の上位とはどこか少し違うな』

(うん)


 あ、そんな会話をしていると彼がまた一人倒した。しかもこれだけの強い魔力波動と魔力量からくる覇気、放出系の魔法が使えないなんてことはないだろうにずっと無属性の回復と身体強化しか使ってない。

 何のために? とりあえず警戒しよう。そうして自分も切りかかってきた相手を木剣ではたき落とした。

 そこでようやく彼と二人きりの舞台になった。


「ようやく用無しはいなくなったな」


 え? 今の口ぶりから察するにあえてぼくとの一騎打ち状態に持って行ったってこと?


「俺はこの程度の奴らは眼中にない。でもお前もやるみたいだな。だけどそうでなくちゃ面白くない。あそこまでこけにされて黙っているわけにはいかないからな」

「仕返しってことかな?」

「まあ、そんなとこかな。それより始めるぞ」


 そういうと彼の魔力量が一気に膨れ上がった。やっぱり彼にもついてるんだ。竜が。


「顕現せよ光輝竜(こうきりゅう)!」


 彼がそういうと、金色に光り輝く鱗、鋼のように硬そうな手足と羽、そして内包している魔力量的には上位でも、感じる覇気が圧倒的にほかの竜と違う、そんな竜が顕現した。


「上位竜だとは思ったけど……まさか、光属性とはね……」

『なるほど、そういうことか……』

(ん、どういうこと?)

『なに、単純な話だ。光と闇の属性は魔法においては上位属性と呼ばれるほど圧倒的な威力を発揮する属性だ。ならばその力を持つ竜もまた同じということよ』

(なるほどね。確かにルシファーも最初僕と出会った時、他の神位竜たちも強いけど自分にはまだまだ及ばないって言ってたもんね。あれって場数もそうだけど、属性も関係してるってこと?)

『そういうことだ』


 なるほど~。これはまた厄介な相手だね。


「目つきが変わってきたな。ようやく俺の相手をする気になったか?」

「うん。君さっきとは別人みたいだね」

「当然だろう。竜の力とは基本ひけらかすものじゃないからな」

「確かに」

「では始めるぞ。初めに名乗っておこう。俺はフランツ、フランツ・オルデンベルクだ」

「アレン・ベッケラート」

「ふん。よく知っているさ!」


 そうして一気に戦闘に入った。彼は光の魔力を剣にまとった。身体強化だけの時より確実に一撃が重く強いものとなるだろう。


「砕け散れ!『閃光滅破(せんこうめつは)』!」


 まさかの剣での斬撃かと思えば、いきなり刺突の体制に変えてそこから強烈な光線を放ってきた。めちゃめちゃデカい! なにそれ!?


「『永久氷獄(えいきゅうひょうごく)』!」


 とっさに氷属性の伝説級拘束系魔法を防御代わりに使った。危なかった……あのまま突っ込んでたら一発KOだった。


「まさか初見で今のを防ぐなんてな。今までならその一撃で全員戦闘不能だったよ」


 でしょうね。僕はたまたま前世の知識から光の速度は一秒で地球を何周もするくらい早いというのを知ってたから、悪あがきではあっても体の前面に闇魔法で引力力場を発生させ、対象の速度を落とすという特殊な魔法を使った上で、身体強化で動体視力をめちゃくちゃに底上げしてたから何とか対処できた。

 それがなければ見えずにたったの一撃で沈んでた……光魔法ってえげつないな……


「それはそうと俺の竜も忘れないでやってくれよ」


 そういわれた後、後ろから強烈な悪寒がしたので真横に避けた。するとそこにとんでもない威力のしっぽの一撃が炸裂した。しかもご丁寧に光属性の魔力付きで。


「お前が竜魔導師というのは事前に調べがついているうえに、自分でもそのようなことを言っていただろう? いい加減手加減などやめろ。はらわたが煮えくり返りそうになる」

「そうだね。そろそろ本気を出そうかな」

「ふん。初めからそうしていればいいのだ」


 さすがにそろそろ温存して~とかそういうのは無理そうなので、さっさと全開で行くことにした。ただすべての竜を顕現させたりとか、ルシファーを顕現させるところまではしない。別にわざわざ自分に敵対的な相手に手の内全部見せる必要なんてないんだから。強いて言うならそんなのはバカだ。


「出でよ! 地帝竜(ちていりゅう)ポセイドン!」

「な!? なんだこの圧倒的な覇気は!?」


 僕がポセイドンを顕現させると、フランツもそうだが会場中が沈黙に包まれた。おそらくポセイドンの覇気に当てられたのだろう。何人かはバタバタと倒れている。

 いろんなところから悲鳴のようなものも聞こえてくるから小か大かは知らないけど盛大にぶちまけちゃった人もいるようだ。

 多分一生のネタにされるだろうから死ぬほど恥ずかしいだろう。でも悪いが僕の責任じゃない。とりあえず試合に集中しよう。

 それにいくら相手が強いとはいえ予選程度に時間をかけすぎだ。そろそろ決めに行こう。


「さっきから手合わせをしていてわかったことがあるんだけど、君がそれだけの才能と力を持ちながらどうしてグスタフやツェーザルほどにまで脅威を感じないのか、理由はただ一つだ」

「何をふざけたことを!……」

「君は才能に頼りすぎだ。竜の力による覇気は感じられても、訓練や戦闘経験の場数を踏んだことによる自力での覇気を全く感じられない。武人の気配というのかな? そういうものを感じられないんだ。剣術はなかなかのものかもしれないけど、師団員を目指すならそれくらいの使い手はごろごろいるさ」

「おのれ……言わせておけば!」

「悪いけど、僕は本気で上を目指してる。守るべきものを守る力を身に着けるために。平気で人の大切なものに手を出そうとする君になんか負けていられない」


 そういうと僕は即行動に移した。ポセイドンに好きに動いていいと指示を出し、僕は手ごろな魔法を使って彼を攻め倒していく。

 ポセイドンは地面からいくつもの土槍(どそう)と呼ばれる攻撃を放ち、僕は剣に大地属性の魔力をまとい、より剣の硬度を堅牢なものにした。これで終わらす。今回は派手な魔法は無しだ。完全に戦闘技術だけで彼の上を行き、さっき言ったことを証明する。


「俺だって適当にここまで来たわけじゃない! 俺は負けない! お前なんかに!」

「残念だけど終わりだ」

「え?……」


 彼が叫びながらポセイドンの攻撃を華麗にさばききり、こちらに向かってきている間に僕は間合いを詰めた。そしてみぞおちに思いっきり剣の刃の反対でみねうちを放った。

 勝負ありだ。今回はポセイドンの攻撃で相手の気が散っていたことも勝利の大きな要因だ。こういった連携を徹底的に利用するという姿勢も彼からは見受けられなかった。やはり経験が足りなかったのだろう。ツェーザルたちならあんなひどい負け方はしていなかっただろうな。

 そんなことを考えていると、実況役がようやくフリーズ状態から戻ってきたようで。


「しょ、勝負あり! 決着です! アレン・ベッケラート、中盤にはヒヤッとする場面も見受けられましたが、見事に華麗なる勝利を収めました! この後は次の組の予選です! それでは選手の皆さんは控室へ。お疲れさまでした!」


 という感じで試合は終わりを迎えた。次は明日の試合なのでこれ以降は暇なのだ。少しゆっくりできるな。

 僕はさっそく疲れたので控室に戻った。

 

初めての光属性! ようやく出番です(笑)。

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