長期休暇 その7! エレオノーレのご両親にご挨拶!?
グダグダの恥ずかしすぎて人には言えない告白をエレオノーレにした日の翌朝、いつも通り7時に起きて朝食を食べに行く準備をしてる時、
コンコンッ
「はーい。開いてますよ~」
「し、失礼します」
「ん!? エレオノーレ!? こんな時間にどうしたの?」
「あ、あの、おはようございます」
「う、うん。おはよう」
それから、エレオノーレはもじもじしていた……え? まさか、あいさつのためだけに早く起きて僕の部屋まで来たのかな? か、可愛すぎる!
「これから、食堂に向かうから、い、一緒に行く?」
ドキドキしながらそういうと、エレオノーレはコクコクとうなずいた。え? これ現実? この超絶可愛い女の子が僕の彼女? 幸せすぎて死にそうです。はい。
「じゃ、じゃあ行こうか」
そういって僕はエレオノーレに腕を差し出した。組んで歩こうという意思表示、貴族紳士がよく使うエスコート法だ。
まさかこの年で自分が使うことになるとは思わなかった。
エレオノーレははじめはびっくりしていたけど、素直に僕に腕を絡めてくれた。やばい。すごく心臓がドクドク言ってる。
このドクドクはエレオノーレに腕を組んでもらっているというのもあるだろうけど、それ以外もあると思う。
それはこれから待ち受ける試練だ。それは……父上と母上への報告だ。
多分却下されることはないだろう。だってエレオノーレはこんなにも素敵な女性なんだから。立ち居振る舞い、容姿、性格、すべてが完璧すぎるほどだ。
しかもこうして朝迎えに来てくれたりと、男性を立てるようなふるまいまでしてくれる。僕は頼んでないんだよ? つまり自分で考えついてここまでしてくれてるってことだ。
はっきり言って僕は前世でも今世でもこれほどの女性に出会ったことがない。僕にとっては最高の女性だ。
仮に却下されたとしても今回ばかりは僕は両親を立てる気はない。
それはなぜか、まず逆にこれ以上の女性がいますかって話なのよ? で、次に僕はすでに騎士爵として独立している。ぶっちゃけたことを言うともうすでに父上の権限の及ばない人間だ。
家族であろうと法律は絶対だ。それに僕にとってエレオノーレはこれ以上ないほどに理想の女性なのだ。
逆にエレオノーレ以外の女の子とお見合いして結婚しろと言われても、僕は絶対に首を縦には振らないだろう。
妾とかそういう貴族として半ば義務のような結婚ならあり得ても、それ以外の場合で、他の女性を僕の女性として扱うことはしないと決めている。
貴族としてはあまり好まれない方針かもしれないけど、僕にはまだ元日本人としての記憶が残っている。
なのでどうしても一夫多妻制には抵抗感があるのだ。
ただまあ、大丈夫だろう。今までの両親のエレオノーレに対する反応はすべて良好だった。
そうして、食堂に着くと、なんと既にみんないたのだ。そしてみんなニヤニヤしている。
すごく嫌な予感がする……
「さて、アレン一つ聞きたいのだが、その腕はどういうことなのかな?」
うわ~父上、楽しそうでございますね。まあ、今の反応を見て確信した。まず反対されるってことはあり得ない。反対するならこんな楽しそうにしてないだろうし。
「えっと、父上? これは、その……」
「それは、私が知るところでは、男性と女性が恋人同士になった時、男性側が女性を丁重に扱う時の礼儀作法だ。つまりは、そういうことなのかな? いったい昨日の夜に何があったのでしょう」
「本当に気になるわ~。わたくしの可愛いアレンがこんなに可愛い女の子に腕を貸しているなんて」
「兄さま、ついに男になったのか……うんうん。俺も負けていられない!」
「お兄様のような最高の男性なら当然です!」
「え、えっと、その……」
もうみんな確信してるじゃん。それにこんな時に限ってみんな僕より早く起きてるって、すごく作為的なものを感じるんだけど、
そうやって周りを見渡すと、ディルクとアンナが笑いをこらえていた。
ああ、この子たち昨日の告白の場を見てたんだな。
「なるほど、どうしてみんながこのことを知っていて、しかもいつも僕より起きるのがゆっくりな人たちがめちゃくちゃ早く起きて席にまで座ってるかの察しはついた」
「まあ、そういうことだ。アレン、私たちは歓迎するよ」
「ありがとうございます。父上」
「逆にエレオノーレ嬢以上の女性など、そういないと私は思っている。私にとってのアンネのように。むしろそれ以上を望む親がいるとしたらそれははっきり言ってずうずうしいとさえ私は思うよ。だから私たちとしては何も問題はないと思っている」
ほら、やっぱり結婚を承認する側の父上たちでさえ、これ以上望むのはおかしいと言っている。やっぱりエレオノーレは最高だよ! 本当にすごい女性だ! ちなみにすでに結婚の話題を出しているのは、基本的に貴族の交際というのはイコールお互いにその先も見据えているという解釈になるからだ。
基本的には別れるかもしれないという保険が付いている状態、つまりただのお付き合いの状態でくっつくことを承認されることはまずない。付き合うのなら結婚も視野に入れろ、それが貴族の交際というものだ。
なので日本でいうところの僕と付き合ってくれますか? という質問にイエスと返事した時点で婚約成立なのだ。難しい世界だよね~
「ベッケラート男爵様、アンネ様、ありがとうございます」
「いいのよ、アレンをよろしくね? この子は何でも完璧にこなしてしまうからスキがないように思うかもしれないけど、意外と可愛いところもあるから、お世話は頼むわね?」
「ちょ、母上!」
「はいはい。ごめんなさい」
「それから、ディルクとアンナは後で僕の部屋に来なさい。お説教だ」
「「ええ!!」」
「ははは。では、さっそく朝食をいただこうか」
そうして朝食は終わり、父上たちにさっそくエレオノーレに聞かされた事情を話した。するとあっさりOKをもらえたので行くことにした。
また、兄妹たちが駄々をこねたが、数日で戻ってくると話すと、納得してくれた。頑張ってさみしくなさそうにいろいろ理由を付けて反対していたけど、要約するとずっと家にいてほしい、だそうだ。
全く、だんだんマセてきたと思ったら可愛い子たちめ。
その日の昼間、さっそく出発の準備を済ませて玄関に立っていた。
「では、父上、母上、行ってまいります」
「うむ。先方に失礼の無いようにな。これはお前たちの結婚が認められるかどうかの試練でもあるのだぞ」
「肝に銘じておきます」
「よろしい。では行ってこい!」
「ベッケラート男爵様、アンネ様、本当にお世話になりました」
「いいのだ。私も賛成していたのだから訪問のことについては何も気にしなくていい」
「そうよ? それに今回、わたくしの人生の中でもとっておきといってもいいぐらいの素敵なお知らせが聞けたのだから、むしろわたくしたちを喜ばせてくれてありがとね」
「そういっていただけるととてもうれしいです! これからもアレン様のお隣にいても恥ずかしくない女性を目指します!」
そういうと両親はすごく温かいまなざしを向けてくれた。僕にとってはすでにエレオノーレは最高の女性なんだけどな……逆にこれ以上何をどうやって目指すのさ……でも、より僕のために頑張ってくれるっていうんだから感謝こそすれど、文句なんて一切ないよ。
「それでは、改めて、行ってまいります」
そういって馬車に乗り、ブラームス準男爵領を目指した。
半日ほど馬車を走らせたところで、ブラームス領に着いた。意外と近かった。
「ふぅ~。すごく緊張するね」
「はい、ただ何も問題はないと思うのですが」
「認めてもらえるといいんだけど……」
「絶対に認められると思います! というより認めてくれなかったら父上なんかひっぱたきます!」
「いやいやいや! 絶対にそんなことしちゃだめだからね? ちゃんと僕の実力で認めてもらえるように努力するから。エレオノーレはどしっと構えておいて? ね?」
「アレン様……」
「まずは、ブラームス準男爵様が治めるこの土地でいくつかお土産を買っていこう。ベッケラート領のものはすでに用意してあるからね」
「そうですわね」
そうして、30分ほどお土産を探して、良さげなものを買った後、ブラームス邸に向かった。
1時間ほどだ。いくつかの小さな村を通り越して、本領に到着した。
「つきましたわ」
「ゴクッ、いよいよだね。礼儀正しく、丁寧に、落ち着いて、紳士に対応。これ重要だね」
「ですわね。でもアレン様なら大丈夫ですよ。アレン様がとっても素敵なお人だというのはわたくしが一番知ってますし。初めて出会った時のこともお手紙で送ってあります。邪険にされることはないと思います」
「そっか、でも油断はしないでおこう。しっかりとやり切ってみせるよ!」
「はい!」
本当にエレオノーレは可愛くて素敵な女の子だな。この大好きな笑顔を絶やさないように日々努力するまでだ。でもまずはご両親に認めていただかなくては話にもなってない。まずはこの状況を乗り切ろう!
そしてエレオノーレがノックをした後、扉を開けた。
「ただいま戻りました!」
「お、お邪魔いたします!」
「おお! エレオノーレ、戻ったか! よく帰ってきたな!」
「おかえりなさい、エレオノーレ。待ってたわよ」
「姉さまおかえりなさい!」
「はい、ただいま戻りました」
一通り挨拶が終わったみたいだな。
「ん? そちらの男前な男の子は?」
「あら、ほんと! エレオノーレ、あなたこんなカッコいい男の子と知り合いに!」
「申し遅れました。私はアレン・ベッケラートと申します」
「な!? ベッケラート男爵様のご子息!?」
「つまりこの間の件、許可が下りたのかい!? エレオノーレ!」
そっかすでに手紙は送ってあったんだったな。
「はい、父上。一緒に来てもらうことができました」
「そうかそうか。それはめでたい! ではアレン君、我々も自己紹介をしないとね」
「そうねえ」
「姉さまのお友達にご挨拶しないといけませんね!」
そうして自己紹介が始まった。その後はなんの問題もなくことが進み、僕は夕食に招待されることとなった。
よし、ここからが本番だ! 頑張るぞ!
こうして新たに、そしてある意味戦闘よりも厄介な戦いが始まるのだった……
怖い戦いが始まりそうです笑




