生誕!(主人公目線)
ん? あれ? 周りが真っ暗だ。確かあれから転生を決意して、女神さまからなんかいろいろ特別な力を授かったんだよな? 自覚はあんまないけど。いったいどういった力なんだろう。
というかここどこ? 暗いな。と、いろいろ思案しているとき。ブワッと周りがまぶしくなったような気がした。
ん? なんか目がかすんでよく見えないな。と思って目をこすろうとしたらあんまり手に力が入らない。え? ていうかよく見たら手ちっちゃ!? あ、そうか。転生なんだから当然人生そのもののやり直しか。
ん? ていうか今さっきからナチュラルに昔のこと思い出してるけど、俺前世の記憶持ったまま転生してるの!? それって結構反則なんじゃ……。誰だって前世での記憶持ってるなら、多少世界の勝手が違っても大人まで生きた記憶があるんだから、効率よく生きるすべとか持ってるでしょ……。
ま、いっか! もらえる権利はもらっとこう! 多分女神さまの言っていた特権やら特別な力っていうのにこの前世の記憶も入ってるんだろう。これをうまく活用できるようにしないと。
それはともかく、パッと見た感じ赤ちゃんになってるようなので全然体の自由が利かない。思考はものすごく明瞭なのに、体の自由が利かないってある意味苦痛だな……。
と、そんなことを考えていると、
「あなた、アレンが目を覚ましたみたいですよ」
ん? アレンって? ああ、僕のことね。それにしてもなかなかカッコいい名前じゃないか。漫画の主人公とかに出てきそうなイかす名前じゃん。
そっか僕生まれてからすぐに眠っちゃったのか。全くのんきなもんだよ……。まあ、自分のことなんすけどね。それで、この人が僕のお母さんなのかな?
「おお! 本当だな! なかなかはっきりと力強い面構えをしているな!」
おお、多分、このお父さんかなりの親バカです。はい。っていうか今気づいたけど僕、普通にこの世界の言葉理解してるんですけど!? 怖! あ、でもこの世界の言葉理解できないと、やっていけないだろうから女神さまが手助けしてくれたってこと? うーん、だとしてもどうせ赤ちゃんに戻るなら言葉くらいそのうち覚えそうだけどな。
でもまあ、文句言う必要ないか! だってその方が便利だし、多分読み書きは勉強しないとだろうけどそれでも会話だけでもすぐにできるならありがたい。有効活用しよう。
「ふふ。なんだかとても聡明な子に見えますわね。それにしても可愛らしいわ~」
「ああ、そうだな。全くだ。賢く強い子に育って、我がベッケラート男爵家を継いでもらわないとな!」
「もう、貴方、そればかりではありませんか……。しょうがありませんね」
「仕方なかろう。うれしいものはうれしいのだ!」
え?今聞き捨てならないこと聞いた気がするんですけど!? 男爵家!? ってことはつまり僕、貴族家に生まれたってこと? ああ、なんか女神さまが生まれる場所も多少なら手伝える的なこと言ってたっけ。それが今のこの状況ってことね。
でもそれなら、もっと位の高いとこはダメだったのかな? 確か男爵家って貴族家ではかなり下でしょ? あ、でも待てよ、多少って言ってたな。
手伝える範囲が男爵家への転生までってことか。そう考えると、むしろ位は低いけれど地位ある家に生まれることができたのにはむしろ感謝すべきか。
ありがとう。女神様。贅沢言ってごめんなさい。
「まあ確かにそうですわね。ただあまり甘やかしたりはしないでくださいませ?」
「心配無用だ! むしろ厳しくいく!」
「まあ、確かにあなたは自分にも他人にも厳しい人ですものね。そういわれてみれば余計な心配でしたわ」
「そうであるが、もしかしたら私も子育ての道を誤るかもしれん。その時はしっかりと言ってくれ」
「そうですわね。承知しましたわ」
うわー、なんか僕すでに厳しく育てられる前提みたいですけど……。怖いな~。できればお手柔らかに……って無理そうだな。この雰囲気。
仕方ない。ここは異世界で、しかも貴族システムも残ってる世界だ。現代日本のように何もかも法に触れない限りは権利が認められてきた時とはもう違うんだ! それを再認識できただけでもありがたいと思おう。
僕が知る限り、昔の中世ヨーロッパの貴族社会では、平民の人権? なにそれおいしいの? っていう世界だったからな。イギリスはこの限りではなかったようだけど。
ただ、これはあくまで机上の勉強での話だ。おそらく事実であっただろうけど、確実な情報かは分からないわけだし、鵜呑みにしすぎるのも良くないだろう。
よく歴史の教科書は改変があったみたいだし。僕が勉強した後にも変更があったかもしれない。それとこの知識はあくまで僕らの世界の話だ。この世界の王侯貴族がそうだとも限らないしね。
ちゃんと自分の目でしっかり見て学ぼう! 百聞は一見に如かず! これ大事。
「とりあえずアレンにはやりたいことはとにかくやらせようと思う。勉強もそうだしほかの日常生活でもな。何事も親が出しゃばりすぎるのは良くない」
「確かにあなたの言う通りかもしれませんわね。ただ危ないことや、犯罪まがいなことは当然ながら……」
「みなまで言わずとも理解している。その時は我々が道を正してやろう」
なにこの両親……。すごすぎる! 感動で今泣きそうになったよ! こんなに若いのにここまで素晴らしい親って、いるにはいるだろうけどなかなかいないよね。二人ともまだ二十代前半くらいだよ! 僕の日本での親も優しくてとてもいい親だったから大好きだったけど、こっちの親も大好きになりそうだよ早速。
よし、とにかくこの二人を失望させないように立派な貴族を目指すぞ!
「とりあえず、アレンがどのような才能を持っているのか今から楽しみで仕方ないぞ! 頭がいい子なら幾らでも文官職に着けるだろうし、魔法の才がある、もしくは運動神経がいいなら、魔法関連の仕事も、騎士もいろいろあるからな!」
「あなた、気が早いですわよ。ただそうですね、私たちの子なので、極端に魔法の才がないということはないと思いますわ」
「やはりそう思うか。私も同意見だ。ただ今の時点ではわからないから、様子見しかないのだろうがな」
「そうですわね」
「まあなんにせよ、この子の将来が楽しみだ!」
すごく期待されてるね。うん。頑張るよお父さん。絶対努力して周りが驚くような素晴らしい貴族になって見せるから!
前の世界の親や、友人たちとはもう会えないのが今ようやく痛烈に実感できてすごくつらい気持ちもあるけど、もう戻れないからな……。くよくよしていたって仕方ない。
今はこの世界で頑張って生き抜いていくことを考えよう!
世界を救う云々もまずは大きくなってからだ!
頑張るぞ!
ここまで少し長かったかもしれませんが、次回からいよいよ主人公が貴族として頑張っていく内容に入っていきます。読んでいただけるととてもうれしいです。ブックマーク登録していただいた方、誠にありがとうございます。とても励みになります。これからも頑張っていきます!