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長期休暇 その5! ディルクと対決!

 翌朝、僕はいつも通り7時に起床した。恒例の使用人さんが起こしに来てくれるけど、必要なかったというやり取りをし、ごめんねと心の中で謝罪しながら食堂に向かった。そこにはなんとすでにエレオノーレとディルクとアンナが! 

 なして? 特にディルク、なして? なにがあったのさ。明日は嵐か? と、失礼なことを心の中で考えつつ、普通に挨拶をした。


「おはようみんな。早かったんだね」

「ふふん! どうだ、兄さま悔しいだろ!」

「今日は私たちの方が早かったです!」

「ははは、そうだね。びっくりしたよ」


 そう返答をして、二人を満足させた後、エレオノーレが挨拶してきた。


「おはようございます。アレン様」

「おはよう、エレオノーレ。昨日はよく眠れた?」

「はい! お布団がとても気持ちよかったです。床に入ったらすぐに眠ってしまいました」

「それは良かった」


 そうやって話していると、ディルクとアンナが二人してにやにやしている。やめんさい。

 どこでそんな気色悪い笑い方を覚えたのやら……あの純粋でかわいかった二人が今は悪魔の笑みを浮かべているように見える……兄ちゃんショック。なんてふざけるのはここまでにして、本当にその笑い方気になるからやめてほしい。


「二人とも、何をそんなににやにやしてるのかな?」

「ええ、別に~? 二人の会話がやけに自然だな~とか思ってないよ~」

「そうです。なんかすごく夫婦みたいで素敵とか思ってないです~」

「ちょ、二人とも!?」

「ふ、夫婦……」


 いや、エレオノーレさんそこでフリーズしたらまたからかわれますよ? おーい、ちょっとぉ……だめだこりゃ。


「もう二人とも、そういうの良いから」

「ええ、別にいいじゃん!」

「そうですそうです!」

「わかった、わかった。とりあえず、父上たちが来る前に座って準備しとこう」

「はーい」

「はいです」

「……」


 エレオノーレさん、いつまでフリーズしてるんですか?


「エレオノーレ、ほらここに座りなよ」


 そういって、僕はエレオノーレに声をかけて、椅子を引いてそこに座るよう促した。そうでもしないと絶対帰ってこないから。

 でも前から思ってたけど、エレオノーレはこういうからかわれ方してもぜんぜん否定しないよね? それってまんざらでもないってこと? どうなんだろう……マジで前世では女性経験がゼロなので分からん。なんか仲良くしてくれる女の子は何人かいたけど、結局友達どまりだったし……

 やっぱり女性とのかかわりってすごく難しい。まあ今はとりあえず座らせよう。


「あ、ありがとうございます」

「うん」


 そうして座ってもらい、その後は3人で10分ほど会話をしていた。すると、父上と母上が来た。


「おはよう! うむ、皆集まっているようだな。今日も元気そうで何よりだ」

「おはようございます。エレオノーレさんもよく眠れた?」

「はい、おかげさまでとてもゆっくりすることができましたし、お布団もとても気持ちが良くてぐっすりでした。ありがとうございます」

「それは良かったわ。数日ほどうちにいるって聞いたからその間はどうぞゆっくりしていってね」

「本当に何から何まで感謝いたします」

「ふふ、いいのよ。アレンの側にこんなに素敵なお嬢さんがいてくれて私としてもとてもうれしいの」

「は、はあ」


 ん? 母上、今のはどういう意味ですか? これだから母上も油断できない。すぐに意味深なことを言って僕とエレオノーレを困らせてくる。もともと天然気質なところもあるから、もしかしたら本気で無意識なのかもしれないけど……。


「よし、まずは朝食をいただこうか」

「そうですわね」


 そうしてみんなで朝食を食べて、少しゆっくりしているタイミングで、父上が話しかけてきた。


「そういえばアレン、お前が開発した新しい魔法具、正式に軍事採用されることとなった。今後は発案料と使用料含め、莫大な資金がお前の懐に入ってくる。この間のアーベントロート卿を救った時の報酬金でも大概だったが、まだお前自身の金庫で何とかなる規模だった。だが……」

「もうそれができる次元ではないほどの金額が入ってくると?」

「そういうことだ。なのでもうすでにお前の国立金庫の口座も作ってある。なので資金が必要になった時は各地に存在する国立金庫に行って、自分の口座番号を提示して引き出してもらいなさい。この間の報酬金もまだ8割以上余っているのだろう? お前なら無駄遣いなどとは無縁だろうからな。資金の運用は自分でやりなさい」

「承知しました。父上」


 そこまで、考えてくれていたのか。しかもあの魔法具、国家で正式採用か。王国の軍事力の底上げになればいいが。

 ただ難点が……あれなんだよな。


「父上、僕の魔法具が正式採用になったのは喜ばしいことなのでしょうが、一つ懸念があるのです……」

「威力の問題か」

「はい。あれは魔法具なのでたとえ魔法が使えなくても魔力さえ込めれば使えます。魔法を使えるほどの魔力はなくても使用できるのが魔法具の強みですから。ただ、あの魔法具の場合は強化魔法などを施さなくても素の威力だけで人間の腕が逝ってしまうほどの威力です。身体強化が使えるのが前提になってきます」

「そこがやはり難点か……改良などはできそうか?」

「まだ僕は魔法具学の基礎知識を付けただけの半人前なので、少しお時間をいただかないと難しいです。今は基礎的な実践ができるようになっただけで、ここからさらに応用知識を付けていくことになります」


 やはり結局のところ僕らのクラスが全員免許皆伝をいただいたといってもそれは基本的な魔法具の構造などに関して、そしてそれらを実践で作っていく知識。それらについて合格をもらっただけだ。今度は応用知識だ。ここで本当の意味で免許皆伝をいただかないと上級技術を用いた魔法具や、魔法具の性能を上げる改良などはできない。

 まずはそこにたどり着く必要がある。もちろん今の知識だけでもなるべく頑張るつもりでいるし、国家試験に合格している研究者の方の知識も合わさるので、研究が滞るといったことはないだろう。

 ただドンドン研究が進むかはわからない。それはなぜか……答えは単純で銃の魔法具の構造がこの世界には存在しないからだ。



 いくらプロの研究者たちでも、まずはこの銃の構造を理解してもらうところから始めないといけないのだ。

 そのうえ僕自身も別に銃の生産業者とかで働いていたわけではない。普通の一般人だった。それに日本人だったので銃とはほぼ無縁の生活だったしね。

 なので僕も完ぺきに銃のことを理解してるとは言えない。なのでこれからの銃の魔法具の改良については暗中模索の状態なのだ。


「やはり魔法具を学び始めた初期段階では難しいか」

「はい、まだまだ精進の余地がありますので、今の段階でもできる限り頑張っていきますが、かなり難易度は高いと思われます」

「そうか。まあそれは仕方のないことだ。これからも勉強に励み、より知識を付けていってくれ」

「はい、父上」


 そこまで、話していて一つ思い出したことがある。昨日にもその話題を出そうかと思ったんだけど、ディルクとアンナのあまりの勢いに押されて忘れてしまったんだよね。


「そういえば、母上、もうディルクの適性判断の儀式にはいかれたのですか?」

「ええ、そうだったわ! 昨日はいろいろ舞い上がりすぎて皆ですっかり忘れていたわ」

「俺自身が忘れてたよ……」

「おいおい……」


 そういうと、ディルクが真剣な眼差しで僕を見てきた。なんだろう?


「兄さま、俺、炎と風と大地が適正だったんだ」

「ええ!? ほんとに!? 3つも適性属性があったなんて、それはすごいことだよ!」

「でも、兄さまはもっとすごいでしょ? うれしいけどそれが気になって……」

「ディルク、適性属性っていうのはそもそも複数あること自体がすごいんだよ? 僕の友人にも優秀な人たちはいるけど、大体が適性は1つだけだもん」

「そうなの?」

「うん。だから自信もっていい」

「そっか……」


 よしディルクの表情が少し和らいだな。そして今の話は本当なのだ。そもそも適性が複数あること自体がすごいのだ。多分ディルクの周りにはあまりにも複数の適性を持つ人が多すぎて、それが異常だと気付いてなかったんだ。

 父上も雷、水そして風だし、母上は氷と大地だ。ツェーザルも水と大地だし、割とディルクの周りには適性複数持ちしかいなかったんだ。


「そ、それからね、竜のことなんだけど……」

「うんうん。どうだった?」

「炎が超位竜? で、風が上位竜だって」


 え? 待って、普通にすごくない? 君ツェーザルよりも竜魔導師の才能あるってことじゃん! すごいよ! ディルク!


「え? すごいじゃん! ディルク! 君も竜魔導士になれる可能性があるってことだよ!」

「ほ、ほんとに?」

「うん、ただ認められただけで竜魔導師にはなれない。しっかり修行しないといけない。兄さんも毎日修行してるからね」

「そっか、そうだよね! 俺頑張る!」


 本当にすごいなあディルクは。


「ねえ兄さま、一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「ん? なんだい?」

「俺、兄さまと戦ってみたい! 兄さまがとても強いのは知ってる。でもそれはみただけだから。自分で兄さまの強さを体感してみたい!」


 聞いた瞬間はびっくりしたけど、そう言うことか……

 なら何も迷うことはないよね! と言うか僕もディルクと戦ってみたいし、まだ卵が孵ってないから竜の力は扱えないだろうけど、それでも魔法で戦うことはできるからね。

 よし! やろう!


「よし! わかった! やろう!」

「ほんとに!? やった!」



 というわけでこれから僕たちは戦うことになったので、かつて使っていた訓練場にきた。


「じゃあ、勝負は一本。相手に有効な魔法攻撃か剣撃が当たった時点で即終了。これでいいね?」

「うん! 兄さま、手抜いたりしないでよ!」

「僕がそんなことするとでも?」


 はい。しましたね? 先日、それで父上にこっぴど〜く、お仕置きされたばかりだね。

 だからこそ、絶対に手は抜かない。もちろん竜の力は使えないけど、それ以外では手は抜かない。

 出せる範囲で全力を出す!


「もちろん兄さまならしないと思うけど、一応だよ」

「うん、わかった。じゃあ準備はいい?」

「うん! いつでも大丈夫!」

「なら私が審判を務めよう」


 おお! 父上が審判か。気合が入るな! 頑張ろう!


「ありがとうございます。父上」

「うむ。では、初め!」




 そうして、模擬戦は始まった。

ディルクは常に兄の背中を負っていたので、是非とも頑張ってほしいです!

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